〈はりねずみのパジャマ〉の面白さについて
vol. 13 2020-03-22 0
みなさま、毎日の閲覧、ご拡散、誠にありがとうございます。
先日より、演劇祭参加団体で上演がかなわなかった劇団を一つ一つご紹介しております。紹介は特に思い入れのある委員が担当します。
このテーマは本日でラスト!最後に、ポップでキャッチー、たくさん笑えて誰でも楽しい、はりねずみのパジャマをご紹介します!
はりねずみのパジャマ
《概要》
2017年2月結成。本公演やフェスティバルなどへの参加などハイペースな活動を行う演劇企画団体。多数出演するいらないことをする者と余計なことを言う者たちによる、1日が25時間だったとしても必要の余地を迫られる時間を製作する。
(公式HPより)https://haripaja.com/
この団体のことを担当はとても好きですが、おそらく、これはみんながすきなやつだと思います。そして、やろうと思って真似出来るものではありません。
例えて言うならその良さは、「高級な懐石とか、おしゃれなバーとか行ったけど、結局キャンプで食うカレーって最高だよな」みたいな良さです。本来「キャンプで食うカレーの旨さ」はキャンプでしか成立しないのに、いつでもどこでもその味を再現できてるみたいな凄さが、はりねずみのパジャマの魅力の根幹なのです。作品が面白いことがもちろんなのですが、「作品をすごく面白いと感じる」事のできる、こちらのメンタルごと作り出してくれるのです!
ちょっと、王子小劇場にてこの前の秋(2019年9月19日〜22日)に上演された第6回公演のあらすじ(担当の私が勝手に書いたもの)をご覧ください!
『カーボーイ』
婚活ハロウィンパーティーにて集まった男女、なぜか全員カーボーイの格好で来てしまう。まさかの仮装どんかぶりに戸惑う参加者および主催者(20人位います)。しかしそれは「時空を超える男」の陰謀だった!男は、150年前に悪いカーボーイにおそわれる女の子を救うために、この場にカーボーイを集め、タイムスリップを起こそうとしていたのだ!(このあたりからカーボーイメーターという電子掲示板が現れてこの場のカーボーイの力が可視化されます)
男に協力し、カーボーイっぽいものを舞台上に集める参加者たち。ついに時空を超え、無事に女の子は救われる。しかし、時空を超えた代償は大きく、地球は隕石で滅びることに…!参加者はカーボーイの力を合わせて、投げ縄で隕石を投げ返す。こうして地球の平和は守られたのだった…!
どうですか、最高じゃないですか?
私はこれを観て感動しました。こんなにナンセンスな展開なのに、一つの疑問も抱かず、「カーボーイがんばれ。カーボーイメーターあがれ。地球守れてよかった」みたいな単純な気持ちで見守ることが出来ました。ずっと笑ってたので、観終わったら100分たっててびっくりしました。
全ての面白さが、楽しさに裏打ちされている、そんな人たちだと思いました。
それではいきましょう、はりねずみのパジャマのすごいところ3つ!
1愛しやすい
とにかく全てが愛しやすいです。人もギャグも作品も、少しも嫌な感じがしないのです。とりあえず、今回演劇祭への意気込みを語った主宰並木さんとパイロン久我さんを御覧ください。
「なんか性格よさそう」な感じが伝わるかと思います。(そしてパイロン久我さんのパイロンぶりも)。
演劇というのは、疑いを持とうとすればいくらでも疑えます。だって役者さんは本当は別の人生があるし、舞台セットは作り物だし、もちろん隕石とかは落ちてきません。舞台上の出来事を、信じて観る気持ちを産むのは実はとても工夫のいることです。そのために演出の、役者の、美術の、衣装の、こだわりが必要なのです。
だがしかしそれも、愛があれば簡単です!だって誰でも愛する人のすることは信じるから!
愛すべき人々が言ったりやったりすることならば、カーボーイはいるしタイムスリップは出来るし、隕石だって落ちるのです。そう信じることの出来る時間はとても尊いものです。
2「演劇みたいなことをする」集団が新しい
私がはりねずみのパジャマの作品を知ったときの感想は「面白い。好き」でしたが、集団としてのはりねずみのパジャマを知ったときの感想は「うわ、怖!めちゃくちゃ令和の集団じゃん…」でした。
一人の主宰が脚本演出をして、その世界をみんなで体現する、というのが今までも、今も、劇団の一般的な姿です。
しかしはりねずみのパジャマの形は違います。並木雅浩さん、蓮見翔さん、そしてパイロン久我さんと、脚本を書ける人がたくさんいます。(ちなみに演出も複数います)
これによって何が出来るかというと、めちゃくちゃ回転率があがります。今の作品を作るひと、次の作品を作るひとにわかれれば、単純計算で二倍、三倍のペースで作品を生み出せるからです(もちろんそんな単純な問題ではありませんが)。
事実、はりねずみのパジャマは2019年9月9日までの王子小劇場で行われた東京学生演劇祭2019にパイロン久我さん作演出『楽しみましょう』という作品で参加して大賞をとっておきながら、9月19日には再び王子に戻ってきて、並木さん蓮見さん脚本、並木さん演出の新作『カーボーイ』を上演しました。このペース感覚は、ちょっと考えられないほどすごいです。(そして、『楽しみましょう』は東京選抜として全国学生演劇祭に出場しています・・・!)
更に、たくさんいる劇団員の皆さまが色んな劇団に客演し、劇団内にコントグループまであります。2019年12月にははりねずみのパジャマの蓮見さんが参加しているヌープリッキーが学生芸人日本一決定戦こと『お笑いG-1グランプリ 2019』で優勝、並木さんの組んでいる回黙天というコンビが『大学生M-1グランプリ 2019』にて準優勝という結果を残しています。
まさに昇り龍の勢いのはりねずみのパジャマ。その原動力は、「才能ある人がたさんいてみんなでいろんな事をやっている」ことにあります。
劇団運営としても非常に多角的で、「劇場でやる演劇」には囚われません。
第5回公演はARAKAWA dust bunnyというところで上演されたのですが、それはこういうところです。
半野外!ほぼ廃墟!こういうところで演劇をやるなんて超ワクワクしますね!そういった冒険心を発揮できるのも、劇団内マンパワーあってこそだと思います。
また、主宰の並木さんは日本大学芸術学部の映画学科(演劇学科ではなく)とのことで、それもあってか、並木さんや蓮見さんが書いたコント動画が、YouTubeにめちゃくちゃたくさん上がっています。短くてすぐ観られて楽しい!
3俯瞰の視点がちゃんとある
現時点ではりねずみのパジャマは学生劇団です。去年も一昨年も東京学生演劇祭に参加されていましたが、その時の作品はこんな感じでした。
2018年東京演劇祭参加作品『全然気づいてなかった』
あらすじ→男がひたすらドッキリを仕掛けられる
2019年東京演劇祭参加作品『楽しみましょう』
あらすじ→古い洋館を訪ねた男女のグループ。彼らは一人ずつ消えていき…
他の作品でもそうなんですが、はりねずみのパジャマの作品設定は「みんな観たことある」下敷きに斬新なアレンジがのっていたりします。これはかなりバランス感覚が求められる構成です。
一つ一つコントとして成立しそうな楽しいシーン、数々の奇抜なアイディアを、おおきなストーリーとしてまとめる力量、これは作る側にきちんと俯瞰の視点が入っていないと出来ないと私は思います。
はりねずみのパジャマの作品は、観るのももちろん楽しいし、演者も楽しんで出演できるものですが、私は作品づくりの姿勢には「熱中しすぎない冷静さ」のようなものを感じました。それは彼らが大人数で、常にたくさんの視点が入るからできることなのかもしれません。どう見えているか、どう感じられるのか、一歩引いて判断しながらまとめていくその感覚は本当に彼らの持っている宝物のようなものだと思いますし、彼らの集合知としてのセンスとでも言いたいものです。
最後に、3つには入り切りませんでしたが、はりねずみのパジャマはビジュアルも最高です。
これは今回王子スタジオ1で上演予定だった作品のチラシです。かっこよく可愛く、何よりワクワクします。非常に観劇意欲の掻き立てられる秀逸なビジュアルイメージだと思います。
この作品を実際に観ることが出来る日を、私も、また多くのお客様も心から待っています。
最後に、今回出演予定だった俳優さんも出演されるライブが、3月27日にあるそうです!
こちらも要チェックお願いいたします。
『今こそ殺人事件を解決しよう!』
全20本のネタ+最後に全員コント!
出演:
はりねずみのパジャマ
(蓮見翔、前田知礼、上原佑太、忽那、中島百依子、吉行翼、シゲタサヤ)
おせんべいビスケット
ペパロニ
石丸怪奇
会場:新宿バティオス
日時:3/27 18:45開場 19:15開演
料金:予約1000円 当日1200円
予約:https://tiget.net/events/89436
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