〈劇団 短距離男道ミサイル〉の面白さについて
vol. 11 2020-03-20 0
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さて先日より、演劇祭参加団体で上演がかなわなかった劇団を一つ一つご紹介しております。紹介は特に思い入れのある委員が担当します。
本日は、仙台に拠点を置き、今回演劇祭のために東京に来ていただく予定だった、劇団 短距離男道ミサイルです!
劇団 短距離男道ミサイル
《概要》
M-1グランプリ2018において、審査員のナイツ塙は、霜降り明星の漫才を評して、「強弱で言えば強いんで、二人とも。これはもう圧倒的に強い人間がやってる」と言いました。それと同じ感想を私は彼らに抱いています。
言葉で説明するのは本当に難しく、観ればわかるのでみんな観てねと言いたいですが、いったんHPの紹介を長めに引用いたします。
2011年4月、東日本大震災の直後に「仙台、東北、そして日本を笑顔にしたい」「なにか自分たちにできることはないだろうか」という想いの元、仙台の若手男性俳優(当時)によって結成された劇団。東北の風土に磨かれた作品性を軸におき、ストーリー性よりも各シーンの爆発力・瞬発力で勝負していく。その特異なスタイルによって生み出される作品群は、“テンションとエモーションにおいて世界レベル”と評される。 全国規模で活動を展開するとともに、地域へのアウトリーチ事業にも積極的に取り組んでおり、幼稚園・保育所や小中学校・高校への芸術家派遣事業、文化施設とのコラボパフォーマンス、様々なジャンルのフェスティバルや地元のお祭りへの出演、結婚式の余興など、その活動は多岐に渡る。 2017年6月「CoRich舞台芸術まつり!2017春」にて、『母さん、たぶん俺ら、人間失格だわ』がグランプリを受賞。2018年3月には、「若手演出家コンクール2017」にて『走れタカシ~僕が福島まで走った理由(わけ)~』が、最優秀賞・観客賞をW受賞。「 仙台、東北、日本、そして世界に活力を注入するために。我々は、服を脱ぎ続けます!!! 」(HPより引用)
https://srmissile.com/
さらに長くなっちゃいますが、もう少しだけ引用します。
震災発生直後、私たちは何もできなかった。仕事もなく、使える劇場も稽古場もない。そんな状況下、“演劇なんてやってる場合か” “演劇は無力だ” という声が聞こえる最中、劇団 短距離男道ミサイルは産声をあげる。記念すべき1作目は、有志団体で集まってバレエスタジオを借り、収入の一部を寄附するチャリティ公演企画の演目のひとつだった。各団体がそれぞれ震災へ向き合う作品を上演するなか、我々が選んだのは「裸」であった。いやむしろ、「裸」しかできなかった。男6人が汗だくになってとにかく叫び続ける姿を見て、観客は戸惑い、笑った。
この出自だけでも、劇団 短距離男道ミサイルのすごさが伝わるかと思います。さらにすごいところを担当の私見で三点ご紹介します!
1躍動する人間がすごい!
2017年に実行されて話題となった、
「母さん、たぶん俺ら、人間失格だわ~キャンピングカーで巡る真冬の東北二十都市挨拶回りツアー いいか、お前ら事故るなよ、ぜったい事故るなよ!!編~」
を記憶にとどめている人もいるかと思います。その名の通り、 全出演陣と美術をキャンピングカーに詰め込み東北を駆け抜けた超人的なツアー公演です(ちなみに無事故だったそうです)。
多くの人に勇気を与えたこのツアー、その実行力機動力は誰にもまねできないといえましょう。また、 「走れタカシ~僕が福島まで走った理由(わけ)~」では、役者が開場時点で会場からそこそこ離れた場所にいて、開演時間までに走ってくる、その様子がずっとWEBカメラで中継されるという演出がありました。もはやこれを演出と呼ぶのかもよくわかりませんが、これ客席にいると非常にハラハラします。(おい、大丈夫か…?間に合わなかったらどうするつもりなの…?)と観客に思わせておいて、役者が無事走り込んできたときには、まだ芝居はこれからだというのにすでに拍手喝采です。
しかもえぐいことに、上演中もルームランナーを使って役者が走り続け、観る側の心に謎の感動をよびます。もはや「なぜそこまでして走るのか」という点に誰も疑問を抱かず、汗をかき、息を切らし、裸で走る男を心から応援してしまうのです。これだけ聞くと「どんな演劇だ?!」と疑問を抱くかもしれませんがこの作品でミサイルは、「若手演出者コンクール2017」にて最優秀賞と観客賞をW受賞しました。
2作品構成がすごい!
劇団 短距離弾道ミサイルの芝居は実質前説からはじまります。すごい話しかけてきます。ギャグをします。そして歌います。気が付けば作品の中にいます。その出し惜しみないパフォーマンスは客席に上演の前から一体感を与えます。
作中では一人の役者が何役もこなし、次から次へ別のシーンがでてきて、飽きるということがありません。また、しばしば、古典作品を下敷きとしています。演劇祭で王子に持ってきてくれるはずだった演目『春とシュララライッ!!』は宮沢賢治の『春と修羅』にインスパイアされています。
チラシには
「"男道"的大誤読でお届けする あの日から108箇月の心象スケッチ」
とあります。このあおり文自体、『春と修羅』の冒頭部分「これらは二十二箇月の 過去とかんずる方角から(中略)そのとほりの心象スケツチです」のオマージュだと思われます。劇団 短距離男道ミサイルの作品が原作を完全に踏襲しているかと言われれば、全くの別物であると言いますが、その作品の数々は原作の本質が形を変えて再生産されていると思います。その繊細なアプローチと構成力には感服します。
そして今言ったこととやや矛盾するのですが、 元の作品を知らなくてもまったく問題ありません。それどころか、演劇を観たことがなくても、100%で楽しめます。劇団 短距離男道ミサイルは、観る側になんらかの素養とか、知識とか、そういうものは全く求めてきません。求められるのは「劇場で一緒に体験すること」。それだけです。
3希望がすごい!
パンドラの箱を開けると数多くの災厄が出てきたあと、最後には希望が残った……ではないですが、劇団 短距離男道ミサイルの公演を見た後、観客に残るのは希望です。
劇団発足経緯からも察せられるように、公演の中には、胸が苦しくなるようなつらいシーンも出てきます。どうしようもないことが起こり、無力な自分たちがいて、やるせない思いを登場人物と観客が共有します。でもそんなどうしようもないときに、彼らは服を脱ぐと決めたのです。
その脱ぎっぷりの良さは ちょっと目を離すともう脱いでるレベルで、微塵ももったいぶらないのです。人を笑わせること、元気にすること、それだけのことがどんなに難しいことで、尊いことか、彼らをみると改めて思い知ります。彼らは、ヒーローが夢を与えてくれるように、私たちに希望を与えてくれます。
劇団 短距離男道ミサイル34発目『春とシュララライッ!!』は、今回王子に持ってきてもらう予定ではありましたが、3月20日現在、そのあとに続く仙台公演は実施予定で準備をしているようです。お近くの方はぜひチェックしてください! 詳細はコチラです。
劇団には、その日その時劇場に行かないと会うことができません。特に劇団 短距離男道ミサイルのように劇団自体がツアーで動き回る場合はなおのこと、一期一会の機会を逃さず会いに行ってほしいのです。
余談ですが、劇団 短距離男道ミサイルは今年の5月、 「ストリートシアターフェス ストレンジシード静岡2020」に『おれとおまえのストレンジオリンピア2020』の演目で参加されます。たくさんの劇団が集まり、静岡のまちを劇場にする!という企画です。
劇団 短距離男道ミサイルでは現在これに出演する 市民参加俳優応募受付中です!(詳細はリンクより)
選手枠と観衆枠があり、募集要項だけでも心躍ります。アスリートの方、ギリシャ人の方、裸になりたい方、そして彼らに関わりたい方、是非チェックしてみてください!
劇団 短距離男道ミサイル、彼らの人間的魅力と、組織としての活動すべてに深い敬意を持っています。今回王子からのお声がけを快く受けてくださったにも関わらず、王子での公演がかなわなかったこと、非常に申し訳なく、心から残念に思っています。
また、王子に呼べる日が来るように、どうぞ皆様引き続きお力添えいただければと思います。
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