【プロセスレポート4】まだまだ続く、視聴環境づくりのこれから
vol. 20 2021-05-17 0
(はじまりの美術館の外をみんなでZoomで見ています。手前には畑や芝生が、遠くに夕暮れの山が見えます)
【本日オープンミーティングを最後に開催します!】https://www.facebook.com/events/517549649420054
いよいよいよクラウドファンディング最終日です。ここまで応援してくださった皆さん、気にしてくださった皆さんも、どうもありがとうございます。
たんぽぽの家でのトライアルをお届けしてきたゲストレポートはいかがでしたか?プロセスレポートの最後は、「劇場をつくるラボ」の今後の展開に向けて、ぬか つくるとこ、やまなみ工房、愛成会、はじまりの美術館との合同ミーティングの様子をお届けします。
レポート担当は、THEATRE for ALL事務局の山川陸です!
たんぽぽの家でのトライアルは、短い時間の中で多くの発見と課題の見えてくるものでした。
(トライアルのレポートはこちらから。当日現地を見学してレビューしてくださった編集者・山をおりるの春口滉平さんのレポートhttps://motion-gallery.net/projects/tfa_movingtheatre/updates/35197
ゲストクリエイターの三人からのレポートはこちら
渡辺瑞帆 https://motion-gallery.net/projects/tfa_movingtheatre/updates/35408
板坂留五 https://motion-gallery.net/projects/tfa_movingtheatre/updates/35427
梅原徹 https://motion-gallery.net/projects/tfa_movingtheatre/updates/35462 )
トライアルの終了後、議論を重ねる中で機材から立ち上がる環境や関係があたらしい「劇場」を立ち上げられる、そしてそれを届けていける手ごたえを十分に感じられる機会になりました。
立ち上がった「劇場」の姿とは?
整理してみると、
①機材とその環境がどのようにやってくるか…元々の環境への入り込み方
②機材とその環境がどのように馴染むか…気軽に関われるようになっているか
③機材とその環境がどのような関わりを生むか…視聴からあたらしいコミュニケーションが生まれるか
「劇場」の前、最中、後の三段階の関わり方を意識していくことになるのではないでしょうか。
今回オリジナルで開発してみた機材は「丸太スピーカー」のみです。ゲストの板坂さんの言うところの「使い方は分からんけど、ほっといても『ストレッチポール』という安心感」というあり方は、機材だけでなくできあがった環境に対しても言いたい塩梅ではないでしょうか。
(多目的スペースの隅に設置された半透明のテントで囲われた視聴ブース。明るく中が透けていて、設置されたタブレットで一人で視聴ができるようになっています)
今回、半透明の個人ブースではタブレット視聴のためのセッティングを行っていました。機材の種類の多さやブース自体の寸法など、付きっ切りのサポートなしに多くの人に使ってもらうのは難しい「劇場」でしたが、タブレットを使わずともそのブースの中でじっと過ごす方はいたそうで、「ほっといても~」の考え方はここにも導入できる可能性があります。
なにより、機材の使い方を教え合ったり、ここではこういうことができるといった発見がシェアされたり、小さな「劇場」ならではの体験共有のあり方は大切にしたいものです。
(上映会の様子。小屋の下で座布団に座る人、車いすや椅子で外から観る人、色々な場所からみんなでスクリーンを観ています)
みんなで集まって観た「僕がうまれた日」の上映会は印象的な時間でした。ふだんここまでみんな集中して観ることはないんだよ、とスタッフの方がおっしゃっていましたが、それ以上に「一緒に観る」ということの力強さも再認識したのでした。
(床へのプロジェクションの様子。ショップスペースの手前、メンバーが集まるテーブルのすぐ近くに映像が映っています。白い床には、通り抜けた人の足跡が残っています)
床へのプロジェクションは、「一緒に観る」を少しだけ取っつきやすくしたものかもしれません。アートセンターHANAのように大きな吹き抜けがある施設ばかりではありませんが、距離感さまざまに自由に居られる状況は、今後のトライアルでも考えてきたいです。そうした状況があって初めて、「一緒に観る」ことの意味が出てくるのではないでしょうか。
それぞれの状況、これからどうなる視聴環境?
―ぬか つくるとこ、やまなみ工房、愛成会、はじまりの美術館
どこから取り組むか課題を明らかにすることから始まったたんぽぽの家でのトライアル。見えて来たポイントを踏まえて、これからのトライアルでは何ができるのでしょうか。
たんぽぽの家の皆さんと各施設の皆さんで行った合同ミーティングの様子を最後にお伝えします。全国各地、施設のつくりはもちろん、そこで起きるコミュニケーションも全く異なります。それぞれの違いを共有し、そこからヒントを探る時間は、「劇場」づくりの今後がより楽しみになるものでした。
ぬか つくるとこ
ぬか つくるとこの特徴は、なんといっても古い蔵を改修した活動スペースです。小さな空間に活動が詰め込まれ、部屋同士はオープンにつながっている。名前の由来通り、ぬかびとさんによる活動の発酵がありありと想像できます。
(ぬか つくるとこの手書きスケッチを観ながら様子を教えてもらいました。スケッチは上から室内を見下ろした絵になっています。どこで何が起きているか、スケッチの上に手書きでメモを書き足しながら意見交換をしました)
壁に所せましと飾られたぬかびとさんの作品や活動の跡の中に、映像をそっと埋もれさせても面白いのでは?と盛り上がりました。楽器もよく演奏するそうで、音についても探求する機会になりそうです、
車で5分ほどの距離には古い日本住宅を改修した放課後等デイサービスの施設もあり、子どもたちと作品を一緒に観られる環境づくりをいよいよ考えることに!
やまなみ工房
やまなみ工房は、滋賀の山の中に小さな平屋のアトリエから4階建てのカフェ・ギャラリー・スタジオの建物、プロのミュージシャンも演奏するライブハウスと、機能の特化した空間がたくさんあります。
(アトリエ棟の階段室の様子です。ショッキングピンクに塗られた壁に、さまざまな作品が飾られています)
通われている方の中には行動障害のある方も多く、一人一人にとっての心地よさとじっくり向き合い、それぞれが各棟に分かれて過ごしているそう。場所を行き来するというより、自分のいる場所でゆっくり過ごす印象の強いやまなみ工房、それぞれの場所ごとに提案する「劇場」の姿が変わってきそうです。
使い方を試せていないお部屋もあるそうで、施設の空間利用の可能性も試せそうです!
社会福祉法人愛成会
建物がリニューアルされたばかりのメープルガーデンは、都内の住宅地とは思えない、のびのびとした緑のスペース、庭を備えています。施設に直結した住居棟に暮らす方が毎日やってくるここは、今度のトライアルでは唯一通所型ではない場所になります。(板張りの外観が印象的な建物には、大きな木が生えていたり、中庭があってイベントができたり、伸び伸びとした活動ができる空間になっています)
さまざまな活動を行うみなさんには、ここは生活の場ではなく仕事の場という意識もあります。住居棟からメープルガーデンへやってくる途中の廊下やちょっとしたスペースが、「劇場」の立ち上がる場所かもしれません。
「劇場」はいきなり視聴する体験だけがあるのではなく、どのようにやってきてどのように去っていくのか、一連の体験の中にあるものです。より普遍的に、「劇場」がわたしたちの暮らしの中にどのように存在できるのか考えられるのではないでしょうか?
社会福祉法人安積愛育園 はじまりの美術館
ぬか つくるとこと同じく蔵を改修したはじまりの美術館、こちらは点在する安積愛育園の施設に通う皆さんの作品が、キュレーションされた展示と一緒に展示されています。地域の人が敷地内で散歩されたり、カフェを訪れて集まりに使ったり、美術館という名前から想像されるより広い使われ方がされています。(蔵の中はギャラリーになっていて、様々な部屋が並びます。静止画ではブレてしまっていますが、暗めの照明の落ち着いた空間です。はじまりの美術館以外も、カメラで室内を中継して紹介しあいました)
事務室がなくスタッフの方がカフェの客席でお仕事をされていたり、多くの人とのやり取りが自ずと起きるこの場所では、「劇場」に「通う」ということを考えるのかもしれません。
すぐ近くの放課後等デイサービスとの連携や、逆にここからほかの施設に何かを届けたり、より軽やかに展開する方法も考えられそうです!
***
長時間、それぞれの場所を中継しながら意見交換を行った合同ミーティング、その面白さのすべてをお伝えすることは叶いません。しかしオンラインだからこそできるこうした機会も大事にしながら、それぞれの場所にある課題と、そこから見つかる可能性を今後もお伝えしていけたらと思っています。
「劇場をつくるラボ」はまだ始まったばかりです。
まずはこれから始まるトライアルが実り多いものになり、また皆さんの暮らす街にもお伺いできるよう、活動を続けられるよう頑張っていきます。
あと数時間で終わるこのクラウドファンディングが、多くの人へ「劇場」を届ける一歩になりますように。
最後まで、どうぞ応援よろしくお願い致します!
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