猪苗代のワルリ画に込められたストーリー「マタギの話」
vol. 3 2017-01-18 0
この写真は、猪苗代のワルリ画の一部を切り取ったものです。注意深く見てみてください。
何の場面に見えますか?
丸と三角と線で描かれているのが、人々。
彼らが歩いているのは森の中。
木の上や川の中、岩の間にさまざまな動植物がいます。
ひとびとが担いでいるのは、クマです。
猪苗代には、マタギの家系のひとたちが住んでいます。
「僕が子どもの頃、ナイフ一本持たされて、森で生活してみなさいと育てられたんです。山の中で遊んでいました。そんな風に育ってきたのは、おそらく自分が最後の世代でしょうね。むしろ、最後の一人かも」
猪苗代で自分とあまり年の変わらない、30代半ばのSさんにこの話を聞いた時、すごい人に出会ってしまった、と僕の目はきっとキラキラしていたことだと思う。マタギの家系で、そんな経験を持っている人がいるなんて・・・。
ワルリアーティストの3人が猪苗代にやってきて二日目の夜。そのSさんの親類の方の家で鍋を囲みながら、猪苗代の山の暮らしを教えてもらいました。
人間と山で暮らす動物たちの関係性の昔と今。
生活の糧として必要な量の動物を狩って恵みに感謝していた話。
山の奥にある大きな木々が切り倒されてしまって山で暮らす動物たちの生活範囲が変化し、人里にやってくるようになった話。
今でも50代から60代の人は銃を片手に山へ入り、狩りをすることがあるそうです。
ワルリ族の村では子ども時代からジャングルでパチンコや罠で獲物を狩ることが糧を得るための生活の一部です。「気配を殺すこと。待つこと。風を読むこと。鳥の動きを見定め石の軌道と合わせること。」ワルリアーティストの3人は狩りをするために必要なものは何か、と尋ねられてこう答えました。そして、必要以上の獲物は狩らないです、とも。
ワルリ族のパチンコ。イムリーという木に登り、手頃なY字の枝を見つけ、皮を剥いで加工。石を乗せる部分は竹の枝を使って編みます。
狙い、よーし!
今回作ろうとしているのは、Sさんたちや他の方々に聞いた猪苗代の話から生まれたワルリ画と文が合わさった、小さな子どもたちもわかりやすく読める本です。
この本を通じて、猪苗代で培われてきた独自の文化を子どもたちに伝えていきたいと思っています。身近にあるからこそあまり見えていないものが見えたらいいな。自分の住んでいる土地の新しい扉が開いたら、と願って。
okazu