有志の会代表 矢田部吉彦の上映レポート 〈Day3〉
vol. 11 2022-04-01 0
矢田部から上映最終日のレポートが届きましたので是非ご一読ください。
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ウクライナ映画上映会3日目、早くも最終日です。『リフレクション』の上映が最後を飾ります。どこか寂しさを覚えながら、ユーロスペースにスタッフ集結となりました。
チケットがソールドアウトであったので分かってはいたことではありますが、観客でいっぱいの客席に檀上から接した時の感激はやはり格別なものがあります。単純にとても嬉しいという気持ちに加えて、感謝の念と責任の重さが全身を駆け巡る感覚に包まれます。やはり今回は特別な上映であり、客席の空気もどこか張り詰めているし、僕は東京国際映画祭で数えきれないほど登壇していますが、なかなか今まで体験したことのない雰囲気だったと感じています
映画業界の方、作品を期待するコアなファンに加え、普段はコメディーしか見ないという方や、TVドラマは見るけど映画はあまり見ないという方もいらっしゃいました。まさに老若男女と言える幅広い層の方々に来て頂きました。驚くべきは、僕が言葉を交わした方々、そしてその後にメールなどのメッセージを受け取った方も含め、全ての方が「見てよかった」と言ってくれたことです。
ドキュメンタリー出身であるヴァシャノヴィチ監督のリアリズムが、現在のウクライナ戦争への理解を深め、フィクションの物語を通じることで戦時下の個人の心に近寄ることが出来るのだと思います。そして、あの驚愕の映像は、あらゆる方に刺激を与えたに違いありません。さらに、映画が全てを語らないことで、見る者の想像力と知的好奇心を果てしなく刺激し、特別な体験であったことが深いレベルで自覚されたはずです。
アート、芸術の力は強力だと心底思います。今回の上映会の反応で、改めてその思いを強くしています。
上映が無事に終了し、ロビーでお客さんに挨拶をしていると、先ほど言葉を交して帰ったと思った知人が慌てて戻ってきたのでどうしたのかと尋ねると、「下にレオス・カラックスがいる!」と興奮していて爆笑。階下のユーロライブで新作『アネット』の試写会が行われており、来日中のレオス・カラックス監督が登壇していたのですね。ウクライナ映画上映を訪れた観客に対しても、映画の神様がくれた素敵なプレゼントだったのかもしれません!
スタッフと集まって、上映がトラブルなく無事に終わったことの安堵と、よくぞ1ヶ月に満たない準備でやり切ったなと信じられない気持ちを分かち合いました。思い付いたのが3月2日で、本日が31日。怒涛の1ヶ月でした。しかしウクライナの状況を思うと、上映会の「成功」を喜んではいられません。厳粛な気持ちを維持しつつ、成果をきちんとウクライナの映画人に届けるべく、引き続き真摯に取り組んでいきたいと思っています。
クラウドファンディングの募金は4月12日まで続きます。上映は終わりましたが、さらなる情報の拡散に尽力して参ります。
改めまして、上映に足を運んで下さった皆様、そして上映には参加できなかったけれども思いを届けて下さった全ての皆様に、心の底から深く感謝申し上げます。本当にありがとうございます。
どうぞ、引き続きよろしくお願い申し上げます!