有志の会代表 矢田部吉彦の上映レポート 〈Day2〉
vol. 10 2022-03-31 0
矢田部から2日目のレポートが届きましたので是非ご一読ください。
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ウクライナ映画上映会2日目は、会場をユーロライブに移し、18時の『アトランティス』と21時の『リフレクション』の2本の上映でした。スタッフは16時には会場入りし、準備映写のチェックや受付段取りの確認などの準備にとりかかりました。
今回の上映でいささか心配だったのが、入場方法でした。クラウドファンディングに関連付けた上映チケットの販売だったので、劇場の通常のチケッティングシステムが使えず、現在の我々が慣れてしまっている指定席での運営は出来ないだろうということは分かっていました。となると、整理番号順入場しかない。検討した結果、クラウドファンディング申込順に整理番号付きのメールをお送りすることにしました。
クラファン申込時にメアドを記入してもらう手間が発生してしまうことが気がかりであったり、こちらからのメールの送り漏れがないか心配であったり、懸念事項にはスタッフたちがひとつひとつ対応して、何とか問題なく当日にたどりつけたのでした。
そして、今度はロビーで整理番号順にお呼びして、入場してもらうというオペレーションがありますが、ユーロライブはロビーが狭く細長いので、入場扉から階段下まで、番号を読み上げる声のリレーをしなくてはならない。
僕は複数のスタッフが大声を出している現場というのが好きでないので、なるべく静かな進行をしたいと思っていたのですが、なにせ僕自身の地声が大きいので随分と騒がしいことになってしまったなあと、反省しきりです。ということで、お客さんのご協力を頂いて、なんとかスムーズに入場できた、かな?
『アトランティス』の上映が無事にスタート。そして上映後には筑波大学の梶山祐治先生をお迎えしてのトーク。専門が露文学の梶山さんは、ロシアや中央アジアの映画を日本に紹介されており、しかも『アトランティス』を2019年の東京国際映画祭でご覧になっているとのことで、これほどトークゲストにふさわしい方はいないだろうと思います。同僚スタッフを通じてご出演を打診したところ、ご快諾のお返事を速攻で頂き、またもや本企画に関わって下さる方々の熱い思いに触れ、感激したのでした。
梶山先生はスライドを用意して下さって、まずはウクライナ映画の歴代ベストランキングを参照しながら同国の映画の状況を俯瞰で見せてくれる。ヴァシャノヴィチ監督がプロデューサーと撮影を務めた『ザ・トライブ』(2014)が、ドヴジェンコやジガ・ヴェルトフなどの神話上の作品に混じって上位に入っていたり、『アトランティス』も15位以内にランキングされていたり、古今のウクライナ映画の状況が一目で分かる素晴らしい導入。
そして現在に至るウクライナの政治状況を的確に説明し、『アトランティス』が撮影されたドンバス地方の特徴について解説を頂く。さらに、ロシア側のアーティストたちの声明を紹介し、ロシアのアーティストを排除しようとする動きに反発してウクライナ側で物議を醸してしまったセルゲイ・ロズニッツァ監督の言動も紹介して下さる。簡潔にして的確。本当に今の状況の理解の助けになる、素晴らしい30分でした。これは、1時間用意すべきだった!
上映が終わり、幾人かの観客が声をかけて下さる。映画がすごかったという感想と同じくらい、上映後の解説があってとても理解が深まって良かったとの声も頂く。同じ内容がLineでも届く。梶山先生にトークをお願いして本当に良かった!(※梶山先生と矢田部によるトークの内容は近日中にYouTubeにて公開します。)
そして、すぐに『リフレクション』の上映が開始。なんといっても、今回が日本初上映。昨年本作を見ていた僕は、今回の事態に直面し、真っ先に『リフレクション』を日本で紹介したいとの思いに駆られてしまったのですが、それが1ヶ月も経たないうちに実現するなんて、信じられない気持ちです。上映前に登壇して、前説でそんな想いを語り、満席を前にして感激するとともに、あらためて身が引き締まる思いでした。
『リフレクション』の評判もすこぶるよく、『アトランティス』と一緒に見られてよかったという声や、一日にこの2本は良い意味でヘヴィー過ぎるという意見や、『アトランティス』の方が好み、いや、『リフレクション』の方がリアルで怖い、など本当に様々な意見を頂きました。すべてが好意的で、予想以上の好反応に心の底から安堵する思いです。
まずは素晴らしいウクライナの才能による傑作映画を発見してほしいというのが今回の上映企画の核だったので、作品が観客の胸に刺さったことが、何よりも嬉しいです。そして、残念ながら上映を見ることが叶わなかった方々からお預かりした募金も、次なるウクライナ映画の傑作の製作に繋がるように、責任を持って届けることの重要性を改めて噛みしめています。
気を引き締めて、3日目に臨みます!