サウンドデザイン
vol. 16 2016-05-02 0
「リバースダイアリー」の制作は最終段階に入っています。
映画制作では、つい映像にばかりに目が行きがちですが、「音」に力を入れることで作品のクオリティは格段に高まります。
撮影機材が安価になったことで、素人の作品とプロの作品で一番差が出るのが音の部分です。
自主映画の上映会に行くと、セリフが聞き取りづらかったり、ノイズが大きすぎたりということがよくあります。
今回は音の作業全般を、周防正行監督の「Shall we dance?」で日本アカデミー賞の最優秀録音賞を受賞された米山靖さんにお願いしました。以前に映画のパイロット版を作る機会があり、その際に録音をやっていただいたのがきっかけです。
撮影時に収録した音を聞きやすくする「整音」だけでなく、シーンの臨場感を増すために様々な環境音や効果音をプラスする作業もしていただいています。
先日、音の仕上がりの確認をしたのですが、全編を通して自然に観られるだけでなく、映像に映っていない空間の広がりが感じられて、演出意図をより明確にすることができたと思いました。
「音楽」については、既存曲の選曲ではなく、新たにオリジナルの楽曲を作曲してもらうことにしました。
音楽がなくても飽きずに観られるように作ってありますが、音楽を使うことで時系列を明確にしたり、演出意図を補完することができます。
今回は、映画やTVドラマなどでご活躍されている末廣健一郎さんと、韓国のアーティストSarahFlyさん、KOKOSAさんという3名の作曲家の方に、音楽を依頼しました。
音楽制作においては、言葉では説明できない感覚を共有できないと、全くイメージとかけ離れたものになってしまいます。今回は、僕がその感覚が共有できると確信した3人に、それぞれの個性や得意分野を活かしながら取り組んでもらおうと思いました。
末廣さんは以前に映画でご一緒させていただいて、僕の求めているイメージを感覚的に理解して表現してくれる作曲家さんだという印象を受け、是非またご一緒したいと思っていました。
SarahFlyさん、KOKOSAさんは、2013年に釜山国際映画祭のAFAというプロジェクトに参加した際に、短編映画で共作し、とても才能のある音楽家さんだと感じていました。
末廣さんには半分以上の曲をお願いし、映画全体のトーンを音楽でしっかりと打ち出すことを期待し、SarahFlyさんには傑出したピアノのセンスを、KOKOSAには映画音楽のダイナミクスを感じられるような楽曲を期待しました。
僕は編集をしながら、どこでどんな音楽が入るのかを明確にイメージしているので、まずはそれを作曲する前に伝えた上で、それぞれの作曲家さんなりの解釈や提案をもらいながら、完成に近づけていきます。
3人からあがってきた曲を聴いて、とても大きな高揚感をおぼえました。
それぞれの作曲家さんに期待していた個性や強みがちゃんと活かされていて、時に大胆な解釈を加えながら、どの曲もキャラクター性や心情としっかり結びつき、映画の魅力を高めることに成功していると思いました。
あとはMA(Mastering Audio)という、セリフや現場音、効果音、音楽など全ての音のバランスをとって、最終的な音のデータを作成する作業を残すのみとなりました。
「リバースダイアリー」は、"音"も妥協なく追求しているので、是非期待してください!