「日本とアジアの森林を持続可能に」メールニュース vol.3
vol. 3 2020-05-11 0
「日本とアジアの森林を持続可能に―2つの映像作品の制作プロジェクト」ご支援者のみなさまへ
クラウドファンディング・キャンペーンの終了まで残り1ヵ月を切りました。
おかげさまで支援額が目標の50%に到達いたしましたが、まだまだ多くの方のご支援を必要としております。
新型コロナウイルス感染症をめぐる事態の終息がまだ見えない中ではありますが、感染症が世界にもたらした影響は、持続可能な社会のありかたを考えさせられるきっかけともなっている、と考えます。
ご支援者のみなさまとともに引き続き呼びかけを行い、森林についての議論を深めることに貢献できればと願っております。
ご協力・ご支援のほど、よろしくお願いいたします。
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1、 知っていますか?「森林環境税」と「森林環境贈与税」
~私たちの税金が日本の森林を支える~
内田聖子(PARC共同代表)
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森林に関連する法律や制度が、昨年からいくつか審議・可決されています。
その中の一つが、地球温暖化防止や国土保全のために、森林を整備・管理する財源として創設される「森林環境税」です。国民1人あたり1000円が、一律で住民税に上乗せされて徴収され、私有林の免責や林業従事者の数などに応じて、全国各地の都道府県・市町村に配分されるという仕組みです。当初、2020年4月からの導入とされていましたが、東日本大震災復興のための増税が終わる2023年度の翌年の2024年度からということになりました。住民税を支払っているのは6200万人(年収 約100万円以上)ですから、年間620億円もの財源になると見込まれています。
もう一つ、2019年度から始まったのが「森林環境贈与税」です。目的は森林環境税と同じですが、こちらは国の交付税と譲与税配付金特別会計の借入金を原資に、市町村や都道府県に対して、私有林人工林の面積や林業就業者の数に応じて配分されています。
すでに2019年度に1回目の配分が行われましたが、実はこの配分額をめぐって、地方自治体から異論の声が続いています。というのも、最も多く配分された市町村は横浜市(約7104万円)、次に浜松市(約6067万円)、大阪市(約5480万円)で、上位の市町村は人口も多い大都市ばかりだからです。逆に実際に森林の多い大都市以外の県や市町村への配分額は低いものとなっています。これは、実際の森林の分布から見てもおかしな結果となっていると言わざるを得ません。
なぜ大都市圏に多額の給付がなされるのでしょうか? その理由は、配分にあたっての基準にあります。総務省は給付金の割合を森林面積や人口などに応じて分け、内訳は5割を「私有の人工林面積」、3割を「人口」、2割を「林業就業者数」とする基準にしています。
横浜市に多額の支給が配分されたのは、私有の森林が多いことに加え、人口の多さ、市を挙げてのSDGs事業の取り組みで林業就業者も集まったことが考えられます。
このような基準のままでいけば、私有林と人口が多い自治体に配分が集中してしまい、本当に支援が必要である、多くの森林面積(国有林、県有林など)を抱える一方で人口が少ない地方には十分な資金が回らないということになります。
秋田県や山形県などの過疎地域を抱える自治体から批判の声も上がっている他、宮城県栗原市議会は、「人口が多い大都市への配分額が著しく高額。早急に大都市優位の譲与基準を見直すよう求める」という意見書を採択しました。
現在制作中のDVDでも取り上げているように、日本の森林は大規模化・集約化され、補助金に頼らざるを得ないという構造になっています。その結果、利益をあげるため大量の伐採が行われ、持続可能でない状態とは言えません。その対案として、自伐型林業が広がっているわけですが、自伐型林業家が補助金に頼らず自立できるまでには10年ほどかかるといわれています。こうした自伐型林業者も含め、地域で林業に真剣に取り組む人たちを支えるような税金の使い方ができるよう、今後始まる森林環境税を含めて、市民目線でチェックと提言をしていく必要があります。
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2、絶賛無料公開中! PARC映像作品『バイオ燃料』ほか
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前回のメールニュースでもお伝えしております通り、PARCでは現在、新型コロナウイルス感染症をめぐる事態を受けて、過去の映像作品の期間限定無料公開を行っております。
http://www.parc-jp.org/video/sakuhin/free_edu.html
現在公開中の『バイオ燃料 畑でつくるエネルギー』では、制作中の『ボルネオ事件―熱帯林を破壊するダークマネー』の主題となっているマレーシア・ボルネオ島サラワク州での木材輸出のための森林伐採とパーム油プランテーション開発の問題も取材。
「地球にやさしい」エネルギーとされるバイオ燃料が、先住民族の権利を踏みにじり、熱帯林を破壊しながら生産されてしまっている現実について問いかけています。ぜひこの機会にご覧ください。
【現在公開中 5/20(水)まで】
『コンビニの秘密 便利で快適な暮らしの裏で』(2017年)
『バイオ燃料 畑でつくるエネルギー』(2007年)
【現在公開中 5/13(水)まで まもなく終了】
『お米が食べられなくなる日』(2012年)
『世界をめぐる電子ごみ』(2011年)
『スマホの真実 紛争鉱物と環境破壊とのつながり』(2016年)
【5/13(水)から公開予定】
『もっと!フェアトレード 世界につながる私たちの暮らし』(2014年)
『水は誰のものか』(2005年)
期間限定無料公開は当初、5月6日までの取り組みとして告知しておりましたが、ご好評を受けて、5月中も作品公開を継続しております。
この機会にぜひ多くの作品をみなさまにもご覧いただければ幸いです。
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特定非営利活動法人 アジア太平洋資料センター(PARC)
共同代表:内田聖子
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