住まいは誰しもに与えられた基本的人権である。私たちはそう宣言します。
vol. 3 2017-09-25 0
ⒸKazuo Koishi
みなさん、こんにちは。ハウジングファースト東京プロジェクトです。
今回はシンポジウム登壇者の一人である、NPO法人TENOHASI生活応援班ソーシャルワーカー、小川 芳範からのメッセージをお届けします。
「ここはあたしのお城だよ。」
20年間の長きにわたって野宿生活を続けた高齢女性がアパートに移って3か月後に呟いた言葉です。彼女の部屋の壁や柱は、数え切れないほどの折り鶴で色とりどりに飾り付けられています。
進行した肝臓がんと腰椎破裂骨折に苦しみながら、公園で野宿していた67歳の男性がアパートを得て4か月。「あんな礼儀正しい人は見たことないよ。」アパートの大家さんは彼を評してそう言いました。そしてその3か月後、彼はアパートで優しい看護師さんとヘルパーさんに看取られて静かに息を引き取りました。
74歳の元調理師さんは、いったん住まいを失って後、1年間の寮生活を強いられ、味気ない仕出し弁当を来る日も来る日も口に運びました。今では塵一つ落ちていない、ぴかぴかの部屋で、テレビを見ながら、炊きたてのご飯と出汁のきいたお味噌汁に納豆のあさげを楽しんでいます。
なぜ、彼らはもっと早くアパートで暮らすことができなかったのでしょうか。住まいを失うことは取り返しのつかない、一生かけて償わなくてはならない「罪」なのでしょうか。住まいは誰しもに与えられた基本的人権である。私たちはそう宣言します。そして、誰しもが安心して地域で生活するためには何が必要であるのかを、あなたとともに考えたい。そう願っています。
小川 芳範(オガワ ヨシノリ)
小川 芳範
NPO法人TENOHASI生活応援班ソーシャルワーカー・精神保健福祉士
1962年愛知県名古屋市生まれ。2002年ブリティッシュ・コロンビア大学哲学科博士号取得。カナダから帰国後、10年間ほど大学教員などを経て現職に就く。「ハウジングファーストの人間観と支援アプローチ」(『賃金と社会保障』2017年3/10号)