【終了まであと9日】束見本について(津川エリコ)
vol. 17 2024-02-21 0
アイルランドの津川エリコさんより、束見本の投稿への感想が届きました。
下記にご紹介します。
束見本について 津川エリコ
11月に始まった「雨の合間」再版プロジェクトも残すところわずかになりました。このプロジェクトの進行を一緒に見守ってくださっている皆様に、心からお礼申し上げます。
出版は最終段階に入っていると、プロジェクターの中野さんより伺っています。中野さんが書かれた束(つか)見本についての記事を「アップディト」(vol.14)で読まれたと思いますが、見本を見ただけでもこれ以上は望むことが出来ないほどの大変ていねいな装丁だと感じられます。「仮フランス」ということを調べていて思い出したのですが、その昔、ペイパーナイフで本の天の部分をいちいち切って読むということがありました。読むごとに、次の、輪になっている部分を切るので、読み終えた時には、天の部分が機械で切断されたシャープな感じが無く、全く違った印象になります。これは、手作り本の都合に因ったことや、切断による紙の無駄を防ぐために起こったことではないかと想像します。古本屋でそのような本を見たこともあります。もう、そのような本は作られていないと思いますが、ペイパーナイフは、その目的の為に作られました。
文字通り、本を読むということは。開くということです。自分を開くということも入っています。開く前に、繋がっている部分を切るという、余分な作業が入る本の読み方がかつてあったということ、とても面白いです。ページを切るのは30秒もかからないと思いますが、それは人の意識にとって特別な時間ではなかったかと思います。
ドイツ人のグーテンベルクが15世紀に活版印刷術を発明したことで、たくさんの書物が出回り、人々は啓発され、そのことがヨーロッパの文芸復興(ルネッサンス)をもたらしました。新版「雨の合間」の「仮フランス装」は、その神秘的な名前から、ヨーロッパの本造りの伝統を背後に持っているものと信じます。
(写真は、色校正紙をカットして束見本に巻いた状態です)