皆さまから寄せられた感想 その3/記憶を呼び起こし 未来へとつなぐ絵本の力
vol. 8 2021-06-01 0
「一読して なぜか父のことを思い出しました。」
〜叔父から届いた手紙など〜
トンレサップ湖 観光船の仕事を手伝う水上集落の男の子(写真:筆者撮影)
プロジェクトを応援してくださった皆様から、絵本『ぼくは ひとりで』の感想が続々と届いています。どうもありがとうございます!
「昔、メコン川を訪れたことを思い出しました」
「東南アジアでマングローブツアーに参加したことを思い出しました。」
というように、絵本を読んで自分の体験を思い出し、主人公の気持ちに寄り添うことができた、という感想が多く見られます。
私も絵本の舞台であるメコンデルタを15年以上前に一度だけ訪れたことがあります。
ホーチミン市からの日帰りツアーだったため、その土地の空気をほんの少し感じることができただけかもしれません。それでも、マングローブの森をボートで進んだことを思い出し、主人公のアンの目に映る世界を想像しました。
また、やはり絵本の舞台の近くにある、カンボジアのトンレサップ湖の水上集落で見かけた子どもたちの姿を思い出しました。
水上に建てられた家、お店、小学校。
生まれたときから水に囲まれ、水に親しみながら成長する子どもたち。
家族でこの水上集落を訪れた時、まだ3歳半だった息子がボートから落ちたら大変!とドキドキしながら、自分たちの暮らしとの違いにびっくりし、見るものすべてに目を見張ったものです。
トンレサップ湖を思い出した、という感想は読者の方からもいただきました。
前回の感想特集でご紹介しています。
湖上の小学校 カンボジアでは少数民族にあたるベトナム系住民がこの水上集落に多く暮らしていると聞きました (写真:筆者撮影)
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また、こんな感想を送ってくれた方もいます。
田畑も道も水の中、という衝撃的なスタート。
ベトナムに5年住んでいた私でも想像し難かったけれど、子どもたちには案外そんなことないのかもしれません。
「あぁ、学校に行くんだね!」と、自分たちと同じところを見つけてホッとしていました。
でも、親としてはもう少し通いやすいと安心ですね。
私のベトナム語の先生が、「若い頃は小舟で学校に教えに行っていたの」と言っていたので、きっとこの絵本の世界だったんだろうなあと思いました。
ベトナム在住時、船(といっても100人乗りくらいのハイドロフォイル)でサイゴン川を遡って、長男がお腹の中にいたときの妊婦検診に通ったことを懐かしく思い出しました。
可愛いのに奥行きと広がりがあり、美しい絵が素晴らしい!
水中に大蛇の潜む絵がお気に入りです。アンくんの不安な気持ち、ホッとする気持ちが擬似体験できました。
これから子どもたちと何度も何度も読むのが楽しみです。
(東京都 F.N.様)
ベトナム語の先生はサイゴン(ホーチミン市の旧称)生まれ。ベトナム戦争後にメコンデルタで教師の仕事をし、Fさん一家が暮らしていたブンタウという町で地元の子どもたちに英語を教えながら、外国人にはベトナム語を教えていたそうです。
私は、Fさんが「船に乗ってサイゴン川を遡り妊婦検診に通っていた」というところが一番おもしろく感じました。
この絵本を読みながら、当時お腹の中にいた息子さんや下のお子さんたちがお母さんからそんな話を聞くことができたら、ご家族にとって大切な一冊になるのだろう、と嬉しくなりました。
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また、現在80代の叔父(父の兄)が『ぼくは ひとりで』を読み、こんな手紙をくれました。
そこには、叔父の父、つまり私の祖父が15歳頃のエピソードが書かれていました。
次男だった祖父は、中学を卒業後、地元を離れて自立しなければならなかったそうです。
生まれ育った石川県・能登半島の小さな村から一人で船に乗って川を下り、湾をめぐって町に出て、そこから汽車を乗り継いで上京し、新しい生活を始めたのだそうです。
これまでに聞いたことのない話で、30年以上前に亡くなった祖父の印象が変わりました。というよりも、10代の頃のおじいちゃんを想像したことがなかったかもしれません。
父に尋ねると「そういえば能登の従兄から一度だけ聞いたことがあった」と話してくれました。
今度『ぼくは ひとりで』を息子と読む時には、ひいおじいちゃんの話もしてあげたいと思います。
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このようにして、ベトナムで生まれた絵本が海を超えて私たちに語りかけ、大切な記憶を呼び起こし、次の世代へと語り継ぐきっかけをくれています。
あらためて、ひとつの物語が持つ力を実感したのでした。
ほかにも、たくさんの感想が届いています。
続きはまた次のアップデート記事で!