原書 ”The First Journey” の作者はどんな人?
vol. 7 2021-05-27 0
『ぼくは ひとりで』原書の著者
フン・グエン・クアン&フイン・キム・リエンについて
©︎Planet Picture Book
『ぼくは ひとりで』の原書は、ベトナム人のフン・グエン・クアンさん(写真左)とフイン・キム・リエンさん(右)が共同制作した英語の絵本 ”The First Journey” です。
ベトナム人の作者が、なぜ英語で物語を書いたのでしょう?
それは、この作品がもともと、シンガポールの出版社が主催した「アジアの作家によるアジアをテーマにした絵本コンテスト(Scholastic Picture Book Award)」に出品するために制作されたからです。(*シンガポールでは英語が公用語のひとつとして使用されています。)
ホーチミン市で猫たちと共に暮らし、それぞれに物語やイラストの創作活動をしていた2人は、2015年に締め切り間近のコンテスト情報を知り、わずか14日間でアイデアをまとめて完成させたそうです。
その出品作が見事に「大賞」を受賞!
その後、 シンガポールの出版社から正式に出版するため、編集者ダフネ・リーさんと共にイラストレーションの構図や細部の描写、文章をより洗練させていき、2017年5月に初版が発行されました。2ヶ月後には母国でベトナム語版も発行されています。
2人にとって、これが初めての本格的な絵本となりました。
新人絵本作家の誕生!と注目を集めたフン・グエン・クアンさんとフイン・キム・リエンさんは、さまざまな児童書関連のメディアでインタビューを受けています。
その中から印象的なQ&Aを訳してご紹介します。
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ベトナム語版の表紙 ©︎Phung Nguyen Quang and Huynh Kim Lien
絵本 ”The First Journey"誕生のきっかけは?
「ベトナムの南西部には「水に浮かぶ季節(floating season)」があります。大雨で川の水があふれ、4ヶ月にわたり地面がすべて水におおわれてしまう現象です。
その時期になると、交通手段はボートしかありません。子どもたちもボートで学校に通います。
この季節について書こうと決め、男の子がボートをこぎ、水中にひそむものへの恐怖や不安、危険を乗り越えながら学校に向かう物語を思いつきました。」
©︎ぼくは ひとりで(冨山房インターナショナル )
共同作業はどのようにして進めたのですか?
「私たちは面白いイメージが思い浮かぶと、よく2人で話し合うんです。この作品に関しては、まず小さな男の子がたった一人で舟をこいでいる場面が思い浮かびました。水面下には、巨大なヘビが泳いでます。2人ともこのイメージが気に入り、そこから物語を発展させていきました。
これはファンタジーではなく現実です。
学校に行くことがなぜ重要なテーマになるのか?
ベトナムのような開発途上国に住んでいる私たちにとって、
より良い人生を歩める唯一の可能性を与えてくれるのが「教育」なのです。
主人公は「アン(An)」と名付けました。ベトナム語で「平和な」という意味です。
物語は2人で考え、おおまかなスケッチで全体の構成案を作っていきました。」
イラストレーションについて、もう少し詳しく教えてください
「まず私(クアン)が各ページごとにスケッチを描いてリエンに渡しました。彼女がそれに細部を描き加えていきました。私がキャラクターと背景を別々の紙にペンとインクで描き、リエンがそれをコンピューター上で組み合わせ、デジタルで色を加えていきました。
私たちはいつも隣に座って、あれこれと意見を交わしながら作業を進めます。
この絵本のイラストレーションが納得のいくものになるよう、試行錯誤を繰り返しました。
雄大な自然の中で、人間がどれほど小さな存在か。
小さな主人公が、勇気をふりしぼって力強く前に進んでいく姿を表現したかったのです。
場面の視野をできるだけ広くし、横長のページいっぱいに描きました。」
影響を受けた作家やイラストレーターはいますか?
「私たちが好きなベトナム人イラストレーターたちの影響は受けていると思います。
でも、最大のインスピレーション源となったのはベトナム南西部の本物の自然です。
メコン川流域のメラレウカの森は本当に素晴らしく、見たものをそのまま描きました。
母国ベトナムの美しさを世界に紹介したかったのです。」
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参照記事:https://planetpicturebook.com/2018/04/20/qa-with-p...
参考情報:ベトナム・アンザン省(アンジャン省)のメラレウカの森
https://www.vietnamimmigration.com/vietnamimmigrat...