プロジェクト始動、イギリスへ作品発送:その②
vol. 7 2019-01-03 0
【作品発送のための梱包について】
作品を寺田倉庫さんを通してではなく、知人の飯村祐子さんを通して発送することになったので、
梱包は自動的に自分で、ということになりました。
【私の梱包知識や技術について】
◎大学時代から、担当教官が梱包の仕方について丁寧な指導をしてくれていた。
◎作家さんの展示の搬入出の手伝いの中で美術梱包さんの梱包方法をみる機会が多かった。
◎これまでに3回、美術梱包さんに梱包をしてもらった経験がある。
◎修了後も公募展や自身の展示のために梱包から搬入まで自分でやってきた。
◎アメリカへEMSで輸送した際にも、作品の破損はなかった。
経験はありました。ただ、今回の作品の大きさを、海外へ輸送するというのは初めての経験で、どうすれば安全というのがはっきりとわからなかったのです。
【寺田倉庫の担当さんからの助言】
その①の最後にも触れましたが、寺田倉庫さんにキャンセルの旨の連絡を入れた際、担当してくださった加古直幸さんから、作品の輸送に関してわからないことがあれば相談にのってくださるというお返事を頂きました。
最初、申し訳ないからと思っていたのですが、いざ梱包を始めようと設計図を書きはじめてみると、自分ではやはり自信が持てない箇所が何か所も出てきました。
そこで、再度加古さんに連絡をとって、自分の梱包プランを話し、
それに対して加古さんからアドバイスをいただきました。
以下がそのやりとりです。
※「・」から始まる文章が私のプラン
「>」のマークが加古さんのアドバイス
・・・・・・
梱包仕様についてハンドキャリーでしょうか。それともFedExかDHLなどクーリエでしょうか。
作品は陶磁器とのことですが、もちろんデリケートな作品ですので梱包は仰るとおり木箱で作成するのが確実でありますが、前者の場合には作品に重量がよほど重くない限りダンボールの二重箱でも対応可能かと存じます。ご想定いただいております梱包作業の流れに補足いたします。
・作品の骨組みになっているような構造の隙間を固めのスポンジで埋める
>弊社では薄紙(中性紙)をその隙間の大きさに合わせ緩衝材とし詰めますが、
あまりきっちり詰めてしまうと作品に圧がかかるので程よく緩めに詰めるようにしてください。
・そのあと作品が一つの塊になるように、(凹凸がない状態)にスポンジでまく。
>作品外装の凹凸はなるべく少なくして巻いてください。巻く資材としては、スポンジでも問題ないですが、白薄用紙で囲み、真綿などで作品外装に沿った包み方が理想です。
・分厚い合板をつかって木枠をつくる
>木枠はそれなりに技術が必要ですので、 緩衝材で周りを包む場合、作品に合わせたダンボール(ダブル)でも問題ございません。ただし、2重箱にしてください。外部からの衝撃により貫通しないためです。
・作品が直接枠にふれないように、6方向から晒でテンションをかけて吊る。(彫塑の塑像梱包の要領で)
>吊り下げる作品の場合には晒でも結構ですが、作品に触る部分のみ晒を使用、その他の輸送中に木枠などの中で揺れるのを防ぐため、何箇所か紐かスーパーで固定してください。
・隙間に緩衝材をつめる。
>過多な緩衝材にはご注意ください。
・合板の木箱(全て面で出来ている)に入れる。
>合板は航空便輸送では必須ですので、問題ございません。輸送時用に手持ちを両方につけるか、フォークリフトなど空港内で使用する場合を加味し木箱底にゲタ(10センチほど)を装着することをお勧めします。
※底に発泡スチロールをひく。箱と木枠の隙間にも発泡スチロールをいれる。
>木箱内に木枠で内箱作成される場合は木箱使用は横にスライドして作品を取り出すタイプの使用のほうが取り出しやすいです。また、ウレタンか、マットを緩衝材として装着する以外に、防水のためバリヤメタルなどで木箱内部6方向に貼るのもお勧めです。
・上から蓋をする。
・各角を金具で固定する。
>木箱はプラスドライバーなどで留める仕様で問題ないかと存じます。
・・・・・・・
寺田倉庫さんでの輸送はしないにも関わらず、ここまで丁寧な回答をいただけて、
わたしは感動しました。
そしてプランを変更して、
二重段ボールを二重にした箱に作品を詰め、それをコンパネで作った木箱(コンパネは防水加工がされているもの)の中に入れる作戦でいくことにしました。二重段ボールも、木箱も、箱の上面と前面(側面)が開く構造にしました。
ちなみに、
【梱包にかかった費用】
コンパネ5枚 8000円
カット 500円
カットはホームセンターでしたもらいました。
(が、その後サイズ変更をしたくて、主人が丸のこでカットしなおしました。)
クッション材
薄めの柔らかいクッション 1700円
敷きマット 2800円
塩ビパイプのカバー 1500円
晒 1200円
木工用ボンドなど 4500円
二重段ボールの板 11000円
梱包にかかったお金 31,200円
でした。
【梱包】
以下、梱包の写真を添付します。(作品を包んでいる過程と、梱包箱を作っている過程を記録し忘れたので、梱包箱に詰めるところから。)
梱包箱の前面をあけた状態。真ん中の白くてラップでぐるぐる巻きにされているのが作品。凸凹や、穴の開いているところに合わせて薄めのクッションスポンジを当て、凹凸をなくしてから再度スポンジで全体を覆い、晒とラップで固定した。段ボール箱の底面には作品底面が直接底に触れないように、三点(三角形の頂点になる位置)にスポンジを設置して、その上に作品を載せた。まわりには、スタイロフォームを細かく削いだものをポリ袋に詰めて軽く口を閉じ(空気が行き来できるように)作品の周りに詰めた。
前扉を閉める前の状態。わかりにくいけれど、作品を包んだスポンジと、前扉の間には若干隙間ができている。
各側面も同様。
前扉をしめて上から見た図。みっちりなように見えて、ゆするとゆるく動ける程度の余裕がある。
前扉を閉めて蓋をした状態。
段ボール箱を木箱に入れた状態。段ボールの箱の下には塩ビパイプを保護するためのチューブ状のクッションが敷かれています。また、上蓋が木箱側面に触れているので、側面と木箱の間は隙間が出来ています。
段ボール箱は固定されているけれど、全面がぴったりとくっついていないので、外からの衝撃が直に段ボールまでいくことはありません。(上蓋部分はクッションと緩衝材があるのみ。)
発泡スチロールの板を段ボール箱の上面に載せる。発泡スチロールから天面までは5mmほどの余裕がある。
写真の木箱を閉じて、完成。
下駄もはかせました。
完成です。
このあと、「FRAGILE」の文字と、「↑TOP」の文字を朱書きしました。
加古さんのアドバイスを活かしつつ、自分たちの予算でなんとかできる範囲で梱包ができました。
加古さんは寺田倉庫に勤められる前には日通の美術で働いていたそうで、
美術梱包に関してとても経験値の高い方なのです。
加えて、加古さん自身が過去に10年パリで画家として生活されていたのだとか。
問い合わせ時点から、どうしてこんなにも親身になって優しく対応してくださるのだろうと不思議に感じていたことが、そのお話を聞いてなるほどと腑に落ちました。
(他の業者さんは、業務としてやっています、というかんじで固くて冷たい印象。加古さんは「以前から友人だったかしら」と感じてしまうような寄り添いかたをしてくださっていたので。)
作家活動をされていた/いる方でコンサルやマネージメントの仕事をされている方というのは、作家の気持ちを理解しながらも、作家とは違う立場で冷静に客観的に物事を捉え、建設的な考えでもって最善策を提案してくれます。そうして、作家を守ってくれます。
飯村さんも、加古さんもそういう方たちです。
わたしはメール越しにも、相手の気持ちの温度を感じ取ってしまうので、
飯村さん、加古さんのような方が担当で本当によかったと感謝しています。
【しかし重すぎた】
梱包は完成したのですが、実はこの全体で、80kg。
作品は25kg。梱包材料で55kgもあったのです。
各段階で主人と持ちあげ、「なんとかなる気がする」と思って居たのですが、最終的に完成した状態で持ちあげたら、私と主人とで持ちあげてその場にたっているだけで精一杯。
どうやって車まで運びこむのか
どうやって飯村さんの家で降ろすのか
どうやってFedExの車に積み込むのか
そこを解決してくれたのが、他でもない、いつも素晴らしい頭脳プレーで助けてくれる私の主人でした。
それについては「その③」にて、お話したいと思います。