目に見えないもの
vol. 22 2017-03-13 0
ワルリ画には、しばしば、おばけ=ブートが描かれます。
髪が長く、ちょっと変わったいでたちをしているのですぐにわかります。
画面中央にブート。ワルリアーティスト3人の村の学校で開催した「ウォールアートフェスティバル with ノコ 2016」でのラジェーシュ・ヴァンガードさんの作品より。
村を歩き回ると、普通に見える岩に、マークが付けられているのを見つけます。
それは、バガットと呼ばれるシャーマンが「ここに神様がいる」と印すものです。
それらは、人智を超えた、何か。
ワルリの人々の間には、「目には見えないけれど、そこに確かにあるもの」として認識されるものがあります。自然への畏れ、敬いが文化の中で表出しているのかもしれません。
「人間だけが、自分の作り出したもので自分を傷つける」と、あるワルリの村の長老が言いました。
人間、とかく、分かったつもりになり、「これはこういうものでしょう」「あれはああいうものでしょう」と決めつけがちになるけれど、そうならないように気をつけること。まず、動物としての自分の感覚を信じること。ワルリの人々と暮らす中で、そういうことを感じます。
猪苗代のワルリ画には、2体の怪物(妖怪)が描かれています。
足長手長と言います。
磐梯山と隣の明神山をまたにかけ、雲を集め、太陽を隠し村人を困らせていた足長。
猪苗代湖の水を集め、村に降らし、村人を困らせていた手長。赤い円の中に体があり、そこから長い手が伸びています。
今は民話として語り継がれていますが、もともとはこの地域に暮らす人たちの目に見えないものに対する畏れや敬いの象徴だったのかもしれないなぁ、と想像しました。
絵本を手に取る子どもたちにも、ワルリ画を通じて、目に見えないものへ想像を膨らまし、感じ取るアンテナを携えてほしいな、と思います。人間が特別な存在なのではなくて、自然の一部として地球にいるということも。
おかず