制作日誌05:秋風役・Q本かよさんより
vol. 7 2025-07-13 0
こんにちは、Q本かよです。
この度は「バカンスは始まったばかり」を応援くださりありがとうございます。
まず、ENBUシネマプロジェクトは毎回たくさんの俳優が応募するオーディションなので、わたしはこの映画のオーディションに受かったことが本当にうれしくて、クランクインまでの数ヶ月間ずっとワクワクしていました。
一方で、わたしはずっと舞台での活動に主軸を置いてきたので、長編映画に関わるのもまだ二作目で、「現場に行って、分からない業界用語とかがいっぱい飛び交っていたらどうしよう…」などと不安も抱えつつ、とにかくベストを尽くすぞ、みたいな気持ちで撮影現場に臨んだのでした。
そしてクランクイン。わたしは先発隊より一日遅れてのイン(前夜前乗り)でしたが、現場に着くと、ちょうどその日のラストシーンを撮り始めるところでした。そして、何となくモニター周りで現場を眺めていると、スタッフさんたちの会話が聞こえてきたのです。
「つぎ魂?」
「うん、最後、魂」
わたしは心の中で「たましい…?たましいって、魂…?どういう意味?業界用語??」と困惑しつつ、まだ出会ったばかりのスタッフさんに尋ねるのも憚られ、胸にざわつきを抱えたまま翌日の撮影を迎えたわけです。
結論から言うと、「魂」というのは「1カット長回し」の意味でした。木村聡志監督の作品を観たことある方はわかると思いますが、木村作品には、カットを割らない長回しのシーンがけっこう多くあります。そして木村組ではその撮り方のことを「魂の1カット」どころか、今や略され「魂」とだけ呼ばれているのでした。業界用語ではなく、木村組用語でした。しかも撮影初日の現場で生まれた用語らしい。(どういう流れだったのか誰か教えてほしい)
「ここ魂?」
「魂でいきましょう」
みたいな。
わたしは、それがすごくいいなと思いました。木村組のスタッフさんは気心の知れたメンバーも多く、特有のグルーヴ感がもう既にあって、映画をつくることがすごく好きで楽しい、という明確な熱量を感じました。そういう中に参加出来るんだな、ということがすごくうれしかった。
『バカンスは始まったばかり』について、(クラファンの最初のページで)木村監督が社会的なことを色々語った最後に「※映画本編は本当にただ若者がバカンスを楽しむだけです。」と書かれているけれども、本当にそうです。
そしてこの映画を撮りながらわたしは、「バカンス」というのは「属性を脱ぐこと」なのだな、と思いました。たとえば「妻」とか「恋人」とか「友達」とか。普段は固定されがちな関係値からちょっと外れたところに「バカンス」は在るものなのだなと。
この物語には、人と人の、名前のない関係がたくさん発生します。わたしはそこが好きだし、「バカンスだなぁ」と思います。この文章を読んでくださっている方はぜひ、映画館で、この始まったばかりのバカンスを眺めながら、ご自身の属性を脱ぎ捨てる準備をしてほしいです。
「属性」を失うと、生活にゆらぎが生まれて、そのゆらぎの中に出る人生の雑味。ってけっこう味わい深いよね……!という、そんな映画になる気がします!
400字くらいって言われていたのに、長くなってしまった。ぜんぶ載せてもらえるかな。ぜんぶ読んでくださった方ありがとうございますすきです。映画の公開は少し先になりますが、引き続き気にかけてくださるとうれしいです。舞台挨拶などあるときは会いに来てくれたらもっとうれしいです。よろしくお願いします。
秋風役・Q本かよ
木村聡志監督『バカンスは始まったばかり』クラウドファンディング
https://motion-gallery.net/projects/vacances-begin...