制作日誌04:太宰役・足立 英さんより(後編)
vol. 6 2025-07-10 0
『ただの、バカンスダイアリー』(後編)
(前編はコチラ https://motion-gallery.net/projects/vacances-begins/updates/56388)
・6月3日
今日は僕は遅入りで、現場に行くと「師匠」、「魂」などの用語が生まれていた。何のことかわからず撮影に臨む。このシーンは「魂で」。え!?!? 。「カット!OK!」。どうやらワンカットでの撮影のことを「魂」と呼ぶことになっている様子。2日目だよ?これが木村聡志か。この日の最後は新帆さんとの2人のシーン。僕は任天堂Switch「ゼルダの伝説」をプレイしながら会話。自分で発案しておきながら、これがなかなか大変。途中で予期せぬゲームオーバーを迎え思わぬリアクションが出てしまう。これは良いリアル。1度撮り終えた後、カメラを通して見た時の顔の隠れ具合、角度などの調整をする(なにせSwitchの画面に目を落としているので顔が下向きになるわけです。こういうところは、「ただ、その場に生きる」では通用しません。総合芸術です)。その間に好きな(効果的な)タイミングでゲームオーバーできるように慣らす。測る。再度撮影、OK。別途、オンリー(音声のみの収録作業)でゼルダをプレイしている音だけ録ることに。ゲームオーバー音も活かしてくれるらしく、「2分半でゲームオーバーしてください」と録音部の堀内萌絵子さんからの指示。オンリー中は物音を立てないようにと、その場にいるみんなが僕のプレイ音だけを聞いている。地獄のプレッシャー。思ったより長い!きつい!動揺を敵に察知されたのか後方死角から突然攻撃され1発KO。ゲームオーバー音。沈黙。
「カット!」
笑いが起こる。わざとゲームオーバーすることを知らなかった人も何人かいてイジられる。違うんですよ!!!
結果2分半に少し足りず。でも大丈夫だそう。場も和んだし、よしとする。
そしてQ本かよさんが前泊のため現場入り。この夜はQ本さん歓迎会(?)として、スタッフ含めみんなでボードゲーム会を開催。翌日はQ本さんとのシーンが大多数を占めるので、前日にこうして空間を共にできるのは、芝居にも好影響。ちなみにボードゲームは「ito」をやりました。
↑Qさんと(Q本かよ)
・6月4日
今日は太宰デー。太宰役だけで16シーン。映画でこれはなかなか無い。香盤表には役名から1文字取って、登場しているシーンに太宰なら「太」の文字が記されるのですが、この日は「太」が上から下までびっしり16個。この日から太宰は「ふとし」と呼ばれることになります。9時30分から22時30分までの撮影。これをオンタイムで終える。謎の達成感。「ととのい」に近いもの感じた。いいぞ、ふとし!この日から戸塚くんと白石さんも合流。僕と山口くんだけだった宿に戸塚くんも加わる。歓迎会(?)として花火をする。さあ、明日は山場のシーンだ。
↑ゆうきと(戸塚有輝 ※「とづか」ではなく「とつか」です)
・6月5日
今日は物語のクライマックスシーンの撮影。ついに皆集まります。台本12ページ分。ナイトシーンなのもあり、昼過ぎから日が落ちるまでリハーサルを重ねつつカット割りを探る。12ページもあるので1回やるだけでかなりの時間です。7回くらいやったかなぁ。疲れた。でもむしろ役として活かせるリアルな疲労感。これまで「魂」で撮るシーンも多かった中で、このシーンは全26カットで撮ることに。スタッフ総出でカット割りを思案している姿、カッコいい。時折「ここはふとしを〜」などと聞こえて来て心が和む。
日が落ちて撮影スタート。コツコツとカットを重ねていく。26カットもあると都度切れて大変そうだが、このメンバーにその心配はなし。もはや皆、役が本人で本人が役で、WSオーディションを経て集まる意味が、醍醐味が詰まったシーンだったように思う。このシーンの撮影がいまだに忘れられない。細かく語りたいが、ネタバレになるので自粛。五十嵐さんもメンズ宿に合流し皆で浴場へ。合宿か!明日は別荘地でのロケ最終日だ。
・6月6日
古堅元貴くん演じるかき氷屋さん登場。笑いを持っていく。C組仲間に嫉妬。あまり多くを語れないので皆様ぜひ劇場で。
↑げんげん(古堅元貴 ※ふるげんげんきと読みます)
僕はこの日は新帆さんとの1シーンのみ。「魂」で締める。ところで「魂」ってナニ?「師匠」ってナニ?
帰京。あまりの人混み。東京が嫌になっていた。役を通してバカンスをしていたんだなと身に沁みる。皆で焼肉を食べ、解散。ここからは都内パートだ。
↑筆者。焼肉が美味しくて涙目。子供か。
・6月8日
この日は芋生さんと五十嵐さんのみの日。どんなシーンになっているのか観るのが楽しみ。
山口くんはアイスを持って現場を見学に行くが、撮影が巻いて芋生さんと五十嵐さんはもう現場におらずだったそう。代わりに(?)2人でサウナに赴く。仲良いな。
・6月9日
今週撮るダンスシーンに向けてペアごとのダンス練習。
その後、Q本さん宅に集まり、キャスト9名(烏森さんは地方のため来れず)、木村監督、撮影の中村元彦くんで、たこ焼き&ボードゲームパーティ。ちなみにボードゲームは「ことばのクローバー」、「タイムボム」、「ことば落とし」をやりました。本当に仲の良い座組だ。東京でもバカンスは続く。
・6月10日
ロケ撮影が順調に進んだため、予備日のこの日はオフに。皆何してたんでしょうね。僕は映画「国宝」へ。凄い。この「バカンスは始まったばかり」も「国宝」のようにたくさんの方の目に触れますように。
・6月11日
山口くん演じる詩人・天馬の詩会のシーン。今回の映画、詩が何作か登場するのですが、台本ではなく、キャストそれぞれが考えた詩です。この詩会で披露する詩も、山口くんは別荘ロケの時に日夜考えていました。
山口くん、リハーサル直前に、作って来た詩を劇用ノートに書き写す。皆それを待つ。事前に書いておいてよ!(笑)と皆思いつつ、先生がその場で詩を生み出すのを待つ時間のようで、良かった。こういうなんともない出来事でも役は深まる。とても素敵な詩だった。また聞きたい。撮影終了、またあさって。
↑天馬先生(山口雄大)が詩を生み出す(書き写す)のを待つ皆。
・6月13日
ついに最終日。クランクアップの日。先日練習のあったダンス大会のシーン。台本ではト書き4行のシーンですが、朝から晩まで時間をかけて撮ります。エキストラさんも大勢入ってくださり雰囲気が出る。改めてありがとうございました。果たしてどのペアが優勝したんでしょうね〜。このダンス大会後から物語は急展開します。この大会の優勝トロフィーがとても意味を持ってくるわけです。※ちなみに、劇中で実際に使われたこのトロフィーが、1名さま限定でクラファンのリターンになっています。サービスサービス!
(このシーン、木村監督もしれっと出演しています。みんなで探しましょう!)
そして、各ペア撮り終え、いや、踊り終え、無事全編クランクアップ。
こんなに居心地の良い現場はなかなか無い!
俳優部間で役のすり合わせ等しなくとも芝居を通じて分かり合えるというか。やり合えるというか。芝居が楽しい!
かと思うと、隙間時間ですぐバカンスして。
↑巨大トランポリンではしゃぐ、足立、山口、五十嵐
はしゃいでいるのだがダレるでもなく、柔らかい空気でも芝居は締まって。
メリハリがとても良かった。全ての現場がこの雰囲気になれば良いのに。この空気の良さはきっと画に現れていることだろうな。楽しみ。
↑左でカメラを構えているのが染ちゃんこと、染谷(そめや)かおりさん。今回のスチール担当。素敵な写真を沢山ありがとう。
さて、ここから公開に向けて、バカンスは始まったばかり!
ご鑑賞くださった皆様の心に、ひとときでもバカンスが訪れますように。
公開した後、また読んで頂けたら幸いです。
それでは皆さま、劇場で。 2025年7月7日 足立 英
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