建築を「使い継ぐ」まちへ——前橋で出会う、新しい風景と文化の「めぶき」
vol. 6 2025-04-24 0
昨日は、前橋特別見学会が行われました。
東京建築祭を愛するみなさんにも、ぜひ訪れてほしいまちです。
そこでは、建築もアートも「見るもの」から「暮らしに溶け込むもの」へと、確実に変わりつつあります。
見所は、日々変化している「まちなか」全部ですが、いくつかピックアップしてご紹介します。
たとえば、「まえばしガレリア」。 建築家・平田晃久さんが手がけたこの複合施設は、まるで木々の中にいるかのような感覚を都市の真ん中に生み出します。ギャラリーやカフェ、住居が一体となり、人の営みと緑が重なるこの場所では、“都市と自然の共生”という言葉が現実の風景として立ち上がっています。民泊で宿泊体験もできますので、是非体験いただきたいです。
そして、「T house」。 藤本壮介さんがキャリア初期に設計したこの住宅には、空間を緩やかに隔てながらもつなげるという、哲学の原点が宿っています。何よりも、20年前はまだ無名だった藤本さんを採用したアートコレクターであるオーナーさんの心意気です。ゆるやかな間仕切りで、家族の繋がりが保たれ、今ではご夫婦おふたりのお住まいになっていますが、こちらでお子さんを育てられました。誰かと空間を“共有”することの意味を、そっと問いかけてくるような場所です。
「白井屋ホテル」は、訪れた瞬間から物語が始まるような場所。 既存の構造を大胆に活かした藤本さんのリノベーションに、現代アートの巨匠たちの作品が呼応し、街に開かれた創造の場を形成しています。宿泊することでこそ体験できる、感性の空間。
前橋の建築がおもしろいのは、決して有名建築家の羅列の鑑賞だけが魅力ではないことです。 人がどう関わり、使い継ぎ、まちの時間をどう重ねていくのか——その「文化の成熟度」こそが、今の前橋をかたちづくっています。
さらに見逃せないのは、これらの取り組みが“民間主導”で進められてきたこと。 地域に根ざす人々が主役となり、建築やアートを通して前橋というまちをじっくり育てているのです。その柔らかい、ひとびとのつながりに、地方再生のヒントが詰まっています。
それは、東京建築祭のファンにこそ響くはずです。建築を「体験する」ことの次にくるのは、それを「育てる」側に回ること、だと感じました。
その第一歩として、前橋というまちに、ちょっと足を伸ばしてみませんか?
他にも、クラウドファウンディングならではの建築体験ができるツアーがまだまだ募集中です。
この貴重な機会をぜひ、お楽しみください!
- 前の記事へ
- 次の記事へ