【応援コメント16】ライターの佐藤友美さんからコメントをいただきました!
vol. 18 2024-07-15 0
ライター/エッセイストの佐藤友美さんからコメントをいただきました!
実は「応援コメントをいただけたらとっても嬉しい」と前々から伝えていたのですが、先日、東京在住の彼女が店にひょっこり現れ、翌日、ご自身が編集長を務めるサイト「CORECOLER」の「編集長さとゆみの今日もコレカラ」で、そのことを書いてくださったのです!(しかも24時間で消えてしまう)。その文章自体が応援コメント以外の何物でもなく、ぜひ転載させてほしいとお願いし、快くOKをいただきました。ありがたや……涙。
というわけで、私の文章のあとに、さとゆみさんの応援コメントが続きます!
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昨日、営業中にびっくりなサプライズゲストが現れた。
さとゆみさんこと、佐藤友美さん。ライター/著者で、ライター育成のゼミをもち、書籍も出版し、さらに近年は素敵なエッセイやコラムも綴られている。
私はnoteで書かれていた彼女のblogを偶然発見して読み漁り、その後親友が彼女と知り合ったと聞いて、「逢いたいから紹介して」と迫り、2018年に初めてお会いした。以来、私の人生に大きな刺激をくれる、かけがえのない人となった。
小説家の寒竹泉美さんに以前、「さとゆみさんから『野心』を引くと、堀さんになる」との名言をいただいたのだけど、畏れ多いけど確かに似ているところは結構あるなあと思うのです。
そのうちのひとつが、人を家に呼んでご飯をするのが好き。
さとゆみさんは料理が上手で、私がご自宅に初めてお呼ばれしたときは一対一だったけど(そしてなんならお泊まりして翌日は原稿書きを一緒にしたけど)、普段は友人やらゼミ生やらを大勢呼んで、大きなダイニングテーブルに座らせ、自分は対面式キッチンで忙しく立ち働くという。
でも、もちろん彼らの会話に耳を澄ませていて、「ときどきキッチンから質問したり意見したりするのが好き」とのこと。その絶妙な混ぜ返しに、またもや会話が盛り上がる。言葉が言葉を呼び、思考がさらに冴えていく。そんな場づくりを、さとゆみさんは家飲みや執筆合宿などで体現している。
私の「家飲み」→「ホーリーナイト」→「日本酒サロン粋」も、まさに場づくり好きが高じた結果。とはいえ、さとゆみさんと違って時々聞き手ではなく喋り手として激しく暴走するので(笑)、そこは意識して気をつけたい。
昨日、さとゆみさんは、店が満席となってワタワタしている私にさりげない調子で「なんか手伝おうか〜」と声をかけてくれて、飛び込み客におしぼりや箸を出したり注文を聞いたり、食器をたくさん洗って拭いてくれた。色っぽくて気の利くママ状態。ああ、この人はどこに行ってもこういう感じでキッチンとテーブルを行ったり来たりするんだろう。失礼ながら前に本人にも伝えたのだが、「食堂の美人のおばちゃん」みたいだ。かしこまらないあたたかな場で、運んでくる料理はおいしく、客との距離は絶妙で、ときどき放つ言葉にウィットが効いていて、また来たい、また食べたい、また逢いたいと思わせる。早くさとゆみさんも酒場をやってください。
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【ナチュラルボーンライター】
もうすぐ大崎に到着する夜行バスの中で書いている。昨日突然思い立って、ライターの堀香織さんが始めた京都の日本酒サロン「粋 sui」に行ってきた。今はその帰り道である。
堀さんは、雑誌『SWITCH』の編集者でありライターでもあった人で、独立してからも、Coccoさんや是枝裕和監督、小山薫堂さんなどから絶大な信頼を寄せられている書き手である。
私が出会ったときは、堀さんはまだ鎌倉に住んでいた。コロナ禍に『書く仕事がしたい』を京都の古民家エアビーで書いていた時のこと。一人でお籠もり執筆するには広くてもったいないから遊びに来ない? と聞いたら、鎌倉から原稿を抱えて来てくれた。滞在中、私は1階で、堀さんは2階で原稿を書いた。ときどき小さな歌声のようなものが聞こえてくる。堀さん、歌っているのかなと思ったら、原稿を音読していた。この人の音楽のような原稿は、こうやってできているのかと思った。
学生時代は油絵をやっていたという。デザイン科に行きたかったけれど、先生にお前は1センチ角をはみ出さずに塗れるタイプではない。やるなら油絵か彫刻。足して削るをくり返すほうが向いていると言われたそうだ。
堀さんは原稿をたくさん書く。いろんな仕事を受注するという意味ではなく、文字通り、文字数よりも多く書く。3000字の原稿でも、まずは書きたいと思ったパートをいくつも書く。書いているうちに構成が見えてくる。構成ができたら、使わないパートを削る。
初めてこの話を聞いた時、すごく非効率だなと思った。時間もかかるし、捨てる文章が多くなる。だけど、堀さんが油絵をやっていたと聞いて合点がいった。近づいて精密に描き、引きで見て全体を確かめる。文章も同じように書いているのだろう。使わないかもしれない原稿をたくさん書くのだから、本当に書くことが好きなのだと思う。ナチュラルボーンライターだ。書かずにおけない人である。
堀さんは、書きたいことがあったらすぐに書く。SNSで無料で公開するような話じゃない。ちゃんと値段をつけて読んでもらった方がいい、媒体に持ち込んで掲載してもらった方がいいと何度も伝えたけれど、堀さんは書くのを待てない。いま書かないと消えていく気持ちを、押し止められなくて書くのだろう。私の何倍もの強度で、「書く」と「生きる」がくっついてしまっている人なのだと思う。
京都で執筆合宿をした1年後、堀さんは京都に移住した。
そしてさらに数年後、日本酒サロンをオープンした。
昨夜、店にはいろんな人が入れ替わり立ち替わりやってきていた。この日は編集者さんとライターさんが多かった。堀さんが、次々と客同士を繋いでくれるから、楽しく飲みながらの交流会みたいな感じだ。そうか。ここは、日本酒バーではなく、日本酒サロンであると思い出す。
台形に近い五角形の大きなテーブル。座る場所を規定しない空間で、みんな好き好きに席を移動する。店全体が、しっとりとしている。そしてちょうどよく親密な感じがする。こだわり抜かれている食器や調理道具。おしゃれだけれど、よそよそしくない。温度も湿度もある堀さんの文章みたいだ。
以前、店の空気は店主がつくると堀さんから聞いていたけれど、こういうことか。
面倒見は良いけどおせっかいはしない。
情に熱くてすぐ泣くけれど、ひとしきり泣いたらまた笑う。
そんな堀さんの人柄がそのままお店の空気になっている。
新しい発見がある。人と人がつながる。
堀さんが今までやってきたことの延長線上にこのお店がある、と思った。
堀さんからもらった名刺には、「店主/文筆家」と書かれている。堀さん、新しい道を踏み出されたのだなと、思わずその厚みのある名刺をなでなでしてしまった。
最高に気持ちよかったです。常連になろうと思います。
ライターの皆さん、京都に行ったら是非、仁王門通りの「粋 sui」に行ってみてね。きっと素敵な出会いがあると思います。ほかにお客さんがいなくて一人きりならもっとラッキー。堀さんを独り占めしていろんな話を聞いてみてください。
ライター/エッセイスト
佐藤友美