vol.16 園田新監督インタビュー
vol. 16 2018-06-14 0
いよいよ都内公開は6/15(金)まで!!
公開終了直前!園田新監督にインタビューを行いました!
※ネタバレの内容を含みます。
■本作のアイデアについて
――沙紀の理人への行動はとても残酷で衝撃を受けました。少し狂気染みたものも感じましたが、このアイデアは日常のどんな瞬間に生まれたのでしょうか?
園田監督:人は何かに夢中になったり、激しく失望した時などに、常識では説明のつかない行動に出ることがあると思います。
どうしようもない感情に突き動かされて、直感的に行動してしまった経験から生まれたのだと思います。
――日頃のアイデアにおけるアウトプット・インプットの方法があればお教えください。
園田監督:アウトプット方法は、移動中にスマホに無数のアイデアを入力して保存しています。
それがいつの間にかプロットになったり、大きなストーリーに発展して映画になります。
インプットは洋画や海外ドラマはもちろんですが、絵画や写真、音楽、現実の風景などから得たインスピレーションから物語を作ることも多い気がします。
――特に影響を受けた作品やフェイバリットフィルムがあればお教えください。
園田監督:最も影響を受けたのはウォン・カーウァイ監督です。独自の映像スタイル、ストーリーの語り口に衝撃を受けました。
彼の作品は中毒性があり、どれも映像でしか表現できない、言葉を越えた感覚を得られます。
僕はいつも「言葉にできない感覚」を映像にしたいと思っています。
ほかに好きで影響を受けた監督は、ポール・トーマス・アンダーソン、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、パク・チャヌクなどです。
独自の映像スタイルと、人間の心の奥底にある感情を露わにするところに惹かれます。
■本作の結末について
――反転後の結末は始めから決まっていたものでしょうか?それとも、物語が進むうちに導き出されたものでしょうか?もし、別の結末があるのであれば、それはどんな内容でしょうか?
園田監督:本作は7〜8年間に渡って十数回に及ぶ改訂を繰り返したので、あまり覚えていないのですが、初期のプロットでは、反転後の展開はなかったと思います。
主人公は小説家ではなくて、長距離の陸上選手で、もっと陰鬱な話でした。
「悲劇的なことを暗く描きたくない」と考えた結果、ラブストーリーテイストにしたことと、ヒロインの行動にもある種の共感を呼びたかったので、ヒロインの戸惑いや罪悪感という要素を追加しました。
今回映画化するにあたり、新たにヒロインの妹の話を追加しました。
これが結果的に本作の面白さを増幅させることに繋がりました。
■多様な登場人物たち
――中盤の衝撃の展開から、主人公、ヒロイン、ヒロインの妹と、一人一人の思惑が複雑に絡み合い、一人一人の感情が刺すような感覚で襲ってきます。しかしながら、結末はどの登場人物も肯定するようなとても穏やかな結末を迎えます。一番描きたかった、伝えたかった思いを表現した登場人物は誰でしょうか?
園田監督:主人公が小説家の白石なので、多分彼に自分自身の境遇などを投影したかったのだと思うのですが、結果的にどのキャラクターも愛おしく感じていて、一人に限定できません。
出来上がった映画を観て、誰にでも「新しい日」が来るのだということを言いたいのだと思いました。
■作品に出てくるアイテム
――監督の作品には、鏡やテレビ画面など現実世界と反転するアイテムがポイントとなって出てきます。こちらが意味することをお教えください。また、これらは無意識に出てきてしまう(作品を作ると必然とついてきてしまう)ものですか?それとも毎回意図的に配置しているものでしょうか。
園田監督:意識的に描いているわけではないのですが、結果的にそうなってしまいます。
多分、それらは「境界線」を象徴しているのだと思います。
現実と虚構、生と死、恋愛と友情、成功と失敗、善と悪、幸と不幸、愛情と憎しみ、家族と他人、黒と白……境界線はあらゆるところに存在します。
その境界線を越えようとする時、誰もが人間性が試されると思うのです。
そんなキャラクターや感情を描きたいから、劇中にも登場させるのだと思います。
■画面作りへのこだわり
――邦画はシネスコの浸透がそれほどしていないと感じますが、本作で4k画質やシネスコに拘った理由はありますか?その他、画面作りへのこだわりがあればお教えください。
園田監督:日本映画にありがちな、狭い世界のこじんまりした物語を描くのではなく、スケール感や広がりがあって、観ている人にも繋がっているような映画を作りたいと思っています。
シネスコサイズは、広がりを強調することができるので採用しました。
4Kについては、その時点で最高のものを目指したいという想いから採用しました。
本作は、インディペンデント映画にありがちな、低予算を逆手に取ったアイデア勝負の映画という範疇ではない、商業映画と遜色のない、場合によってはそれを凌ぐクオリティーを目指しています。
自主映画のマイナス面やエクスキューズをなくしたところで勝負した映画にしたかったのです。
■映画を撮るということ
――映画監督を志したきっかけは何かございますか?
園田監督:さきほど挙げた、ウォン・カーウァイ監督作品「欲望の翼」を偶然、深夜のテレビで観たことがきっかけです。
それまではハリウッド映画ばかり観ていたので、とても衝撃を受けました。
自由なスタイルのみならず、非常にパーソナルなことを映画にしていると感じました。
こういうことが映画でもできるのかと驚き、ミニシアター系作品を観るようになりました。
そうしたら、映画を作っている人たちがいるらしいということを知りました。
それまで映画はスピルバーグやジョージ・ルーカスなど特別な人たちが作っている、
とてつもない規模のエンターテインメントだという印象しかなかったのですが、もっと小規模で個人的な衝動を描いた映画もあるのだと知って、映画づくりにも興味を持ちました。
映画の歴史はまだ100年ちょっとということで、絵画や音楽などほかの芸術と比べてまだ歴史が浅く、一生かけて取り組めば、自分にも何か新しいことがやれるのではないかと考えました。
「リバースダイアリー」は渋谷・ユーロスペースにてレイトショー公開中!
6月15日(金)まで、毎日21時上映開始となります。劇場でお待ちしております!!!