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オードリロード著作集 コンバヒーリバーコレクティヴ関連書籍 翻訳出版をクラウドファンディングで実現!

オードリ・ロード著作集、コンバヒーリバー・コレクティヴ関連書籍、
翻訳出版支援プロジェクト!

1980年代に活躍したブラックフェミニストのオードリ・ロードの著作集とブラックフェミニスト集団コンバヒーリバーコレクティヴ関連書の翻訳出版!ブラック-クィア-フェミニスト関連書の翻訳出版集団として活動継続化を目指します!

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このプロジェクトは、2022年3月25日23:59に終了しました。

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私たちはさまざまな政治的感情を考察する団体です。現在、Audre Lorde『Cancer Journals+4 essays from Sister Outsider』と『How We Get Free: Black Feminism and the Combahee River Collective』を翻訳中。

Introduction to Audre Lorde

vol. 1 2021-12-29 0

クラウドファンディングの開始早々、多くの方にご支援いただき、温かい応援の言葉をいただきありがとうございます。今回の活動報告では私たちが続けてきたオードリ・ロード読書会での議論を踏まえ、ロードについて紹介したいと思います。

***

現在、日本語でロードの言葉をまとまった形で読める数少ないテキストとして、原著が1983年に刊行された、トニ・モリスン、アリス・ウォーカー、マヤ・アンジェロウら、同時代に活躍していた黒人女性作家たちへのインタビュー集『黒人として女として作家として』に収録されたインタビューがあります。そのなかでロードは、5歳の時までうまく喋れず、読んだり、書いたりするようになってから話すことができるようになったと語っています。誰かに気持ちを聞かれたときは、詩を暗唱することで答えていたといいます。そして12〜13歳のころ、自分の感情を表現できる詩がないと感じたことから、自分自身で詩を書き始めるようになりました。

自分自身を言葉によって名指し、定義することはロードにとっての重要な主題の一つと考えられます。

ロードのエッセイの多くはスピーチをもとにしています。その冒頭でたびたび述べられる「私は、黒人として、女性として、レズビアンとして、母親として、詩人として、闘士としてここに立っています」といった名乗りの言葉。ロードがいくつもの言葉を並べて自分自身を名指そうとするのは、単一のやり方ではとらえることのできない自身の存在を示すためであるように感じられます。それらのアイデンティティが一人の人間に同時に表れることを想定していない当時の社会において、ロードはそのすべてが十全に実現されることを望み、葛藤を抱えながら闘争を続けてきました。

60年代の経験を述懐した「60年代から学ぶ(Learning from the 60s)」(1982)では、公民権運動によって高揚する黒人共同体のなか、期待と興奮を感じる一方で、望ましいとされる黒人らしさに収まらない部分をいくつも持った自身の疎外された感覚について次のように語っています。

「異人種間の結婚をした黒人でレズビアンの母親として、人々を不快にさせない私のあるべき姿があり、それに背くことが決まりきっている私の一部がままあるのだった。このようにして私は学んだのだ。もし私が自分のことを自分自身で定義できなければ、誰かの幻想のなかに噛み砕かれ、生きたまま食われるだろうということを」(「60年代から学ぶ」)

こうした自身の経験を背景にロードは、差別と闘う人々のあいだにおいても生じてくる排除や対立について分析しました。たとえば「主人の道具で主人の家を壊すことはできない(The Master’s Tools Will Never Dismantle the Master’s House)」(1979)では米国の主流フェミニズム運動において、黒人女性やウィメン・オブ・カラー(有色女性たち)、レズビアンの女性、労働者階級の女性や貧困状態にある女性など、周縁におかれる女性たちの経験や感情が軽視されていることを鋭く批判しています。そして、互いの差異を無視したり恐れたりするのではなく、変革のための創造的な力の源とする可能性を示唆しました。

「沈黙を言葉と行動に変えること(The Transformation of Silence into Language and Action)」(1977)では、乳がんの疑いを知らされ、完全な沈黙である死を予感した経験をきっかけに、ロードは自分がそれまで何を恐れて沈黙していたのかを問うています。ジャッジされる恐れ、軽蔑される恐れ、挑まれる恐れ、無視される恐れ、、、様々な恐れの対象があるなか、最も恐ろしいのは他者の眼差しを受けることそのものではないかとロードは考え、その一方で可視の状態にならなければ人は真に生きることができない事態を指摘しています。沈黙していようと声を上げようといずれは痛みも死も訪れる、という認識に達したロードは、誤解され傷つけられるリスクを引き受け、言葉を発し自身の存在をあらわにすることを選び取ります。

このエッセイのなかに含まれる「沈黙はあなたを守らない(Your Silence Will Not Protect You)」という言葉にSNS上のミームやハッシュタグとして出合うこともあるかもしれません。しかしエッセイの原文にあたると、単に沈黙を破り声をあげることを推奨するというよりは、読者である私たちを沈黙に追いやる恐れについて熟考を迫るテキストであるように感じられます。

ロードは複数のエッセイのなかで読み手に対し、「あなたは自分自身のなすべきことをしているの?」と問いかけています。この問いに現れている通り、ロードの言葉は読み手の立つ位置を問いただしその位置によって異なる応答を求める、開かれた動的なテキストであると言えるでしょう。冒頭に挙げたインタビューのなかでロードはこう語ります。

「もし私の言うことが間違っていたら、立ち上がって、オードリ・ロードは間違っていると言ってくれる女性が必ずいると私は確信しています。でもまず私の言葉がそこにあるのです。その女性がとびかかる何かが、彼女の思考を、行動を刺激するものがあるのです。/私は自分の仲間のためだけに書くのではありません。私のあとから来る人たちのために書くのです。私はここにいて伝えた、あなたも伝えて、と言うために。」


引用文献
■ Audre Lorde, Sister Outsider(Crossing Press, 1984)から
・「60年代から学ぶ(Learning from the 60s)」(1982) *
・「主人の道具で主人の家を壊すことはできない(The Master’s Tools Will Never Dismantle the Master’s House)」(1979)
・「沈黙を言葉と行動に変えること(The Transformation of Silence into Language and Action)」(1977)

いずれも私たちのコレクティブで翻訳刊行予定のテキスト。ただし*に関してはクラウドファンディングによって活動の継続が可能になった場合に、また別の本として刊行を予定しているテキストです。個々のテキストに付したのは元のスピーチが行われた年。

■ クローディア・テイト編、高橋茅香子訳『黒人として女として作家として』(晶文社, 1986)
 = Black Women Writers at Work,  ed. by Claudia Tate(Continuum, 1983)

参考文献
■ Sara Ahmed, "Introduction" in Your Silence Will Not Protect You by Audre Lorde(Silver Press, 2018)


執筆:Yuki Ocho(Political Feelings Collective)
編集:Political Feelings Collective

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