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ドキュメンタリー映画『最後の一滴まで―ヨーロッパの隠された水戦争』日本語版制作をクラウドファンディングで実現!
水道民営化が推進される日本。しかしパリやベルリン等の大都市では2000年以降に水道の再公営化が進む。民営化は住民のニーズを満たさず料金も上がったためだ。水道サービスのあり方を問うドキュメンタリー映画の翻訳プロジェクト
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アジア太平洋資料センター(PARC)は、すべての人が対等・平等に暮らすことのできる社会をめざして、調査研究、政策提言、市民講座「PARC自由学校」、雑誌「オルタ」の発行、フェアトレード・ブラック企業・TPPといった世界や日本社会の問題をわかりやすく伝える教材ビデオの制作などの活動を行ってきました。このたび、日本とアジアの森林をテーマにした映像制作のクラウドファンディングを行います。オリジナル・翻訳の2つの映像作品を通して、生態系を守りつつ人々の生計を成り立たせる「持続可能な森林」のあり方を提案するプロジェクトです。ぜひご支援をお願いいたします!
水道民営化が推進される日本。しかしパリやベルリン等の大都市では2000年以降に水道の再公営化が進む。民営化は住民のニーズを満たさず料金も上がったためだ。水道サービスのあり方を問うドキュメンタリー映画の翻訳プロジェクト
8月上旬から始めた本プロジェクトのクラウドファンディングは、9月上旬をもって目標額100万円を達成いたしました!ご支援くださった皆様に改めて御礼申し上げます。本プロジェクトをさらに発展させるため、ストレッチゴール(追加目標)の150万円を設定し、合計で250万円の金額を最終目標といたしました。引き続き多くの皆様のご支援を募ってまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。
◆目標:オリジナルDVD『どうなる?日本の水道事業 民営化・広域化・公共サービスを考える』(仮)制作
◆目標額:250万円
◆内容:ドキュメンタリー映画『最後の一滴まで』は、2000年以降に水道再公営化がなされた都市について、また債務危機後に民営化を強制されるヨーロッパの自治体の状況を描いた作品です。これらの経験は今まさに水道民営化の方向に進む日本に大きな示唆を与えてくれます。この映画の問題提起を、より具体的に日本の課題とつないで考えられるよう、ストレッチゴールとして日本の状況を取材したオリジナルDVD作品の制作を設定しました。この作品では、日本各地での水道事業の実態(料金値上げ、水道管の老朽化、職員不足等)の事例を取材するほか、専門家・自治体の声をご紹介します。また「PFI法改正」や「水道法改正」などを通じて水道民営化の方針をとる日本政府の政策も検証します。翻訳作品『最後の一滴まで』と併せてご覧いただければ、水道民営化をめぐる世界と日本の状況がより深くご理解いただけます。
◆完成時期:2019年3月
私たちが生きていく上で必須である「水」。2010年、国連総会は安全な飲料水へのアクセスを人権の一つとする(The Human Right to Water)原則を承認しました。しかし1990年以降、世界の多くの国・自治体において水道サービスの民営化が進み、途上国での水へのアクセスもまだ多くの課題が残っています。
日本でも2000年以降、水道事業への民間参入の道が開かれてきました。2018年6月、国会で水道法の改正案が審議され、今まで以上に民間企業が水道事業に参入しやすくなる「コンセッション契約」の推進を含む改正が検討されました(この国会では成立せず秋以降に見送り)。水道事業は民間企業が担えばうまくいくか? 公共サービスとは何かーー? 日本の私たちに突き付けられている喫緊の課題です。
こうした中、ヨーロッパをはじめ多くの国・地域における注目すべきトレンドがあります。それは、民間企業が担ってきた水道サービスを公営に戻す動き、すなわち「水道の再公営化」です。2000年以降、世界では835件以上の水道再公営化が行われてきました。それを牽引するのがヨーロッパの大都市の事例です。住民の運動や地方議員からの提起によって水道事業が公共の手に取り戻されているのです。再公営化を果たしたパリ市やベルリン市などの行政当局の担当者や議員は、「民営化という幻想」を強く批判しています。
一方、2008年の欧州債務危機によって深刻な打撃を受けたギリシャやポルトガル、アイルランドなどの国々には、欧州連合による財政再建計画の一環として水道事業の民営化が押し付けられています。背後には、これらの国々を新たな投資先として狙う水道企業と、その企業と密接につながるフランス政府などの存在があるのです。再公営化によって水道サービスを公共に取り戻した自治体と、いままさに民営化を強いられている自治体ーー。同じヨーロッパにおいても、両者の姿は明確に異なります。
「水道サービスは誰が担うべきなのか?」
「水は商品か、人権か?」
「民主主義・自治は機能しているのか?」
ヨーロッパにおける人々のこれらの問いは、日本の課題と直結しています。私たちはその経験から何を学ぶべきなのでしょうか?
近年のヨーロッパにおける水道民営化・再公営化の実態を描いたドキュメンタリー作品が、『最後の一滴まで―ヨーロッパの隠された水戦争』(原題:UP TO THE LAST DROP-THE SECRET WATER WAR IN EUROPE)です。作品は4年間に及ぶ取材・制作期間を経て2018年にギリシャで公開されました。フランス、ドイツ、ギリシャ、ポルトガル、イタリア、アイルランドの6か国・13都市を綿密に取材し、自治体議員や市長、研究者、NGO、アクティビスト、そして民営化を推進する企業へのインタビューまで、多様な登場人物が発言していきます。
本プロジェクトは、この本作品を翻訳し日本の皆様に広くご紹介することをめざします。水道民営化の問題は、日本でも非常に重要な課題であるにも関わらず、これらヨーロッパの新しい動きについて国内で報道されることはほとんどありませんでした。その意味でも、今回この作品を日本でご紹介する意味はとても大きいと言えます。特に、2018年9月からの臨時国会で再び水道法の改正法案が審議される見込みである中、全国各地の市民や自治体議員・国会議員が水道民営化と水道サービスのあり方について議論を始めるきっかけを提供してくれるでしょう。
●2010年に水道再公営化を果たしたフランス・パリ市
パリ市の水道サービスは過去25年もの間、民間企業によって担われてきました。パリ市の前副市長アンヌ・ル・ストラ氏(写真)は、「この長年の民営化の結果、私たちは技術面の管理権限を失ってきたことに気づいたのです。さらに財政的な透明性も欠如していました。だから私たちは水道サービスの管理権を取り戻すことを決定したのです」と語ります。実際、民営化時代のパリ市の水道料金は1985年から2008年までで174%も増加し、水道サービスについての正確な情報が行政や市民に開示されることもなかったといいます。パリ市の水道は2010年に再公営化され、世界の水道サービス再公営化の流れを大きく牽引していく象徴的なケースとなりました。
●多大なコストを支払って再公営したドイツ・ベルリン市
1990年代に新自由主義がもたらされたドイツでは、「民営化されればすべてがうまくいく」とされ「債務削減」「効率化」という名のもと、多くの自治体で水道民営化が行なわれました。しかし350億ユーロだったベルリン市の債務は、その後650億ユーロにまで拡大。民営化によって債務が減るどころか、増えたのです。しかもベルリン市と水道企業が交わした契約内容は「秘密」。市議ですら簡単に契約書の閲覧ができない状態でした。ベルリン市議たちは契約内容の開示を求めます。その契約は、30年間のPPP(Public-Private Partnership)契約であり、企業が利益を得ることを前提とした内容でした。「公共の水協会」のクリスタ・ヘクト氏は、「企業は公共サービスと違いリスクを負っている、と言われます。しかしリスクとコストは、すべて住民に転嫁されるのです」と語ります。2011年2月、情報開示を求める住民投票を経て、2014年ベルリン市はついに水道サービスを再公営化します。しかし企業側から経営権を買い戻すために13憶ユーロ(約1700億円)がか必要でした。一度民営化したら再公営化にいかに大きなコストと労力がかかるのかが浮き彫りにされます。
●民営化の「失敗」のツケが住民にーポルトガル・パソス・デ・フェレイラ
ポルトガルの人口5万人の自治体パソス・デ・フェレイラ。ここも他の自治体と同様に企業と契約を交わし水道を民営化しましたが、その結果は悲惨なものでした。水道料金は400%も値上げされ、ある日突然、ポルトガルで最も水道料金が高い自治体となったのです。人々は町に出て抗議を始めます(写真)。
町長のウンベルト・ブリト氏(写真)は、自身の選挙選中から水道民営化の問題は深刻だと感じていましたが、就任後、予想をはるかに超える最悪の事態を迎えます。企業との契約を破棄しようとすると、逆に企業は自治体に、未来の利益の賠償を含む損害賠償を請求したのです。「企業が1億ユーロ(約130億円)もの賠償金を要求することなど知りませんでした。もちろん受け入れられません。企業が予測していた利益を得られなかったら、その金額を住民が払わせられるなんて・・・・」(ウンベルト・ブリト氏)
●債務危機からの再建プログラムで水道民営化を強いられるギリシャ・アテネ
再公営化を選択する都市がある一方、いままさに民営化が強いられているヨーロッパの国々もあます。2013年2月、ギリシャ政府は欧州債務危機からの再建計画の一環としての民営化プログラムを進めています。その推進役の国の一つ、フランスのオランド大統領(当時)は、「民営化はギリシャの人々の選択であり、ヨーロッパが推奨したことでもある。いかなるセクターでも、フランス企業は出資する準備がある」と演説。これら再建計画には、ギリシャの全地方政府に対して水道サービスを含む公共サービスの民営化を強いる内容が含まれていました。2017年9月、フランスのマクロン大統領(写真)は、ギリシャの民営化プログラムに関心を示す40人ものフランス企業人を連れてギリシャを訪問。中には水道メジャーのスエズ社のCEOの姿もありました。ギリシャ首脳は「債務を減らすため第3次財政再建プログラムを受け入れます。他の道はありません」とマクロン大統領の前で必死のアピールを行います。
「欧州連合もギリシャ政府も、私たちの水道を売り物にしている」と、ギリシャ・テッサロニキの住民たちは立ち上がり抵抗します。住民はベルリン市等の例にならって、水道民営化の是非を問う住民投票を計画しますが、そこには様々な妨害や問題が起こります。果たして住民投票の行方と結果はーー?
●”水道メーターなんかいらない!” アイルランドの住民たちの抵抗
債務危機で打撃を受けたもう一つの国、アイルランド。債務を抱え返済しなければならないアイルランドに突き付けられた条件は水道民営化でした。各自治体にわかれ、37あった水道事業体は一つに統合するよう指示され、政府は「アイルランド・ウォーター・カンパニー」を設立。同社は住民の家の敷地外に水道メーターを設置し始めました。しかし、アイルランドにはもともと水道メーターはなく、水道料金は一般税を通じて徴収されていました。そのおかげでアイルランドはOECD諸国で唯一、「水の貧困(水の欠乏状態)」の人がゼロという実績を誇る国でした。そこにメーターが設置されるということは、住民にとっては一大事です。ある日、一人の若い女性が路上でメーター設置に抵抗するスタンディングを始めました。その輪は次第に広がり全国規模に発展します。
こうした動きは、2009年の緊縮政策と財政再建計画が持ち込まれて以降初めての人々の抵抗運動でした。2014年11月には20万人もが全国各地からダブリンに集結し、水道料金のメーター制チャージに反対するデモが行われました。
2018年7月、国会で水道法の改正が審議されました。改正案には、水道事業に民間企業が今まで以上に参入しやすくなる、企業と自治体との「コンセッション契約」が促進される内容が含まれています。民営化された水道を、再び自治体のものへと戻していくヨーロッパや世界の動きと、今から民営化を推進しようとしている日本は、まるで逆の方向です。なぜなのでしょうか?
水道民営化の歴史が古いイギリスや、1990年代に民営化がなされたベルリンなどの都市では、「民営化こそが解決策」と長く言われてきました。しかし映画でも数々の経験が紹介されているように、民営化で決して自治体の債務は減らず、水道料金も下がるどころかむしろ値上がりしたケースが多くありました。さらには企業の所有に移ったことで、議会や住民への情報開示・説明責任も十分でなく、まさに民主主義の根幹に関わる問題として、多くの人が水道サービスの問題をとらえるようになっていったのです。
日本での水道サービスを考える上で、2つの観点が必要でしょう。まずは、あらゆるサービスを市場原理の中に入れていこうとする、いわゆる「新自由主義」の導入です。国内的には、規制改革会議をはじめとする審議会などが、農業、金融、交通、食の安全・安心など多くの分野で、「規制緩和」「規制の撤廃」を進めています。公共的な政策のスペースは縮小し、私たちの命や暮らしを守ってきた法令などは後退していっています。この文脈の中で、今回の水道法の改正が提起されているのです。誰にとっても必要であり、人権でもある水を、簡単に企業の手に渡せるようにしてしまってもいいでしょうか?
すでに日本では2018年5月、上下水道事業について民間が運営する「コンセッション制度」を自治体が導入した際に、自治体の財政負担を軽減する措置などを盛り込んだ「PFI改正法」が可決されました。これによって今後、地方自治体は正念場を迎えます。コンセッション契約を企業と行うことが強く推奨され、他に選択肢があってもPFIを優先的に検討せねばならなくなるからです。水道事業のコンセッションに対応できる日本企業は非常に少ないため、経験のあるグローバル・オペレーターたちが優位となり、世界各地で数十年前に起きた悲劇が日本でも繰り返される可能性があります。
もう一つは、各自治体が運営する水道事業が抱える問題があります。大都市では水道事業は黒字運営ですが、人口が減少している自治体では水道事業の維持が困難であり、料金の値上げをせざるを得ないケースも多くあります。また戦後の日本の水道を支えてきたインフラとしての水道設備は老朽化し、改修が不可欠となっています。しかし財源もなく人口も減る中で改修は進んでいません。こうした中で、「広域化」「民営化」というプランが提案され、かつてヨーロッパで言われたように「民営化こそが解決策だ」と多くの人たちが錯覚させられていると言えるでしょう。「広域化」「民営化」からも取りこぼされてしまう小さな自治体で、今後水道はどのように提供されるべきか、また老朽化したインフラ改修という避けられない課題をどうするのか。民営化の是非だけの問題でなく、持続可能な地域、公共サービスのあり方、住民自治の実践という観点から、私たちは対案を出していく必要があるでしょう。この映画がその議論の一助となることを願っています。
原題:UP TO THE LAST DROP―THE SECRET WATER WAR IN EUROPE
邦題:最後の一滴まで―ヨーロッパの隠された水戦争
2018年/ギリシャ/59分
監督:Yorgos Avgeropoulos
配給:Small Planet Productions
※翻訳DVDには「字幕版」と「吹替版」の2種類が含まれており、メニュー画面で鑑賞したい方をお選びいただくことができます。
8月 翻訳開始、 クラウドファンディング開始
9月中旬 翻訳完成→編集作業
10月下旬 字幕編集・吹替え制作、クラウドファンディング終了
11月下旬 完成、完成記念上映会の開催
完成したDVDは、ウェブサイトまたはお電話、FAXでアジア太平洋資料センター(PARC)にお申込みいただければ直接お送りいたします。また一般書店や一般・大学生協などからも注文販売が可能です。
上映会を開催されたい場合は、DVD1本を購入いただいた上で、上映1回につき1万円+税の上映料がかかります。事前にPARCまでお申込み・お問合せください。
金額 | 特典 |
3,000円 | 完成記念上映会へ1名様をご招待 |
10,000円 | 完成記念上映会へ2名様をご招待 完成DVD作品を1枚謹呈 |
30,000円 | 完成記念上映会へ2名様をご招待 完成DVD作品を1枚謹呈 PARC制作の水道民営化に関するDVD作品「水は誰のものか」を1枚謹呈 |
50,000円 | 完成記念上映会へ3名様をご招待 完成DVD作品1枚謹呈 PARC制作の水道民営化に関するDVD作品「水は誰のものか」を1枚謹呈 本作品の上映会での上映料1回分が無料に 本作品のDVDパッケージ、フライヤーにお名前を記載(ご希望者のみ) |
※完成記念上映会は、2018年11月~12月、東京都内で予定しています。
※PARCの関連DVDは『水は誰のものか』(2005年)となります
本作品の日本語版制作には、版権料、翻訳、字幕編集、広報(デザイン・印刷費)、商品化(DVD化)などに約100万円の費用がかかります。この制作費用をクラウド・ファンディングを通じて多くの方にご支援いただきたいと考えております。仮に資金が目標に達成しない場合にも、作品は予定通りに必ず完成させる所存です。その場合は、引き続き様々な場で多くの方にご支援を呼びかけると同時に、一定程度の製作費は自己資金で賄うことも念頭にいれています。国会の審議に際しても、ぜひこの作品が国会議員はもちろん多くの皆様の参考となるよう、積極的に発信をしていきたいと考えています。
監修:岸本聡子(トランスナショナル研究所 パブリックオルタナティブ プログラムコーディネーター)
ギリシャの社会派ジャーナリストによる「最後の一滴まで―ヨーロッパの隠された水戦争」を日本の皆さんと鑑賞できることをうれしく思います。ここには水道民営化が世界各地で失敗し、自治体や市民が水を公的な管理に取り戻す運動が成功している一方で、経済危機下の債務返済のために民営化が強制されたり、緊縮財政で自治体が民営化選択を余儀なくされる姿が浮き彫りにされます。かつて1980年代に世界銀行やIFMが途上国に押し付けた構造調整プログラムがヨーロッパ内で起こっています。水道料金の支払いが当たり前だと思いこむ現代、OEDC諸国で唯一直接税金で公営水道を運営するアイルランド。市民は水道メーター、料金の導入に対抗します。民営化や民間資金活用が効率化やイノベーションをもたらすと妄信的に繰り返すメディアと政治家。生活の大部分を市場経済に委ねようとする抗しがたい圧力にさらされる私たちの生活と社会。水の権利と公共性を考えることを出発点に、市民視点の議論を広げていきましょう。
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橋本淳司(水ジャーナリスト、アクアスフィア・水教育研究所代表)
水道法改正法案に突如飛び込んできた民間への運営権売却。前回国会ではわずか7時間の審議で衆議院を通過。「長期間民間に運営を任せることで、事業や金の流れが不透明にならないか」、「サービス低下、不適切な料金値上げが起きないか」、「最終的な責任は民間がもつのか、公がもつのか」などの質問が出たが、明確な回答は得られなかった。その答えがこの映画にある。次期国会では映画の先例を検証しつつ、まっとうな公共政策についての議論が行われることを望む。
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奈須りえ(大田区議)
安くなる、サービスが良くなると始まった「民営化」が、私たちの命の水にまで及ぼうとしています。世界では、水道料金があがり水質が悪化したうえ、経営内容も不透明になるなど、民営化の失敗から、水道を再公営化する動きが広がっています。一方の日本では、PFI法が変わり、水道はじめとした公共インフラ整備が、地方自治体の議会をとおさず、内閣総理大臣主導で民営化できるようになっています。これで、水道法が改正されれば、日本の水道事業は、世界の投資家にとってより利益を上げやすい、しかもリスクの低い投資の対象になるでしょう。誰もが生きていくうえで必要なことや物は、みんなで決めて非営利で運営する「公」で行われてきました。民営化とは、これを、投資家の利益のために運営できるようにすることです。自然の恵み命の水は、自治により守られてきましたが、民営化によりこれが私たちの手から遠く離れようとしているのです。この映画をみて、民営化の本質について知っていただくとともに、貪欲な投資家から命の水を守るため、いま、私たちが何をすべきか一緒に考えていただければと思います。
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三雲崇正(新宿区議・弁護士)
「公共サービスを維持するにはお金がかかる。これ以上公債を発行することはできないから、民間に委ねるしかない」。英国(イングランド)で水道事業が民営化された際、決定的だったのは「お金」の話でした。それから約25年後、イングランドの水道事業では、年間約2720億円の配当金が投資家に支払われ、約2200億円の利息が金融機関に支払われています。このため、イングランドの家庭は、公営水道だった場合と比較して、年間約1万7000円も高い水道料金を支払わされています。「お金」の節約を考えて決定したつもりが、むしろ恐ろしく高くついたのです。また、民間企業に委ねられたイングランドの水道は、その漏水率の高さ(日本の約5倍)でも有名になってしまいました。「PFI・コンセッションは『より高く、より質の低い』公共サービスにつながる恐れがある」。フィナンシャル・タイムスも英国会計検査院も、30年近く続いたPFI推進政策をこのように総括し、国を挙げて方向転換を模索しています。
日本では、公共サービスをPFI・コンセッション等の手法で民間に委ねることによって、業務の効率化、サービスの質の向上や公的支出の節約が実現できると喧伝されていますが、それが世界中の国々の経験と矛盾するものであることは、もはや誰の目にも明らかです。先の国会でのPFI法の改正と、これから予定される水道法の改正により、日本でもPFI・コンセッションによる水道事業の民営化が可能になります。ただ、それぞれの自治体が公営水道を維持し続けることも可能です。水の未来は、自治体に、そして住民の意思にかかっています。この映画をご覧になって、水のことを、そして私たちの暮らしをささえる公共サービスのことを、もう一度考えていただければと思います。
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辻谷貴文(一般財団法人全水道会館水情報センター事務局)
持続可能な地域の水道を展望し、事業の基盤強化に向けた法改正を検討してきた水道法は、官邸圧力によって突如「民営化法」のような様相に。官民連携した水道事業の運営は必要であるが、外資を含む民間企業にその運営を「丸投げ」することを促進する24条「運営権(コンセッション)」は非常に危険です。海外の事例が物語る未来の日本の水道の姿は、市民ひとり一人が考えなければならない問題です。この映画がその端緒になることを期待します。
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国谷武志(全水道東京水道労働組合 中央執行委員)
自然災害が相次ぐ中で、全国の水道・下水道で働く仲間は、真っ先に被災地に駆け付けて復旧・復興に取り組んできました。災害時に何よりも力になるのは日常業務で培った技術とノウハウです。政府が進める運営権の民間譲渡は、災害時の迅速・適切な対応を脅かしかねません。この映画には、料金値上げや水質悪化など、民営化が招いた世界の失敗例が列挙されています。同時に、水を自分たちの手に取り戻すために、体を張って立ち向かう人々が描かれています。この映画を見ていただき、水道・下水道、さらには公共事業のあり方について、一緒に考えてみてください。
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制作統括:内田聖子(NPO法人アジア太平洋資料センター〈PARC〉 共同代表)
1990年代、多くの途上国で水道の民営化が強いられてきました。ボリビアでは高騰した水道料金に対し大規模な抗議デモが起こり、警察との衝突で死者まで出る大惨事となりました。また南アフリカやフィリピン、インドネシアでも、料金を払えず水を止められた人びとは困り果て、やむを得ずメーターやパイプを壊したり細工をして水を得ていました。時代や国の状況は違えど、いまギリシャなどが強いられている水道民営化は、自治体や自国政府の政策判断を越えた外側からの圧力によってもたらされているという点で途上国と共通します。住民の意思が考慮されていないという点もーー。この映画は、人びとが水道の管理・運営に無関心・無関与になってしまったらどうなるのか、一度民営化したら公共の手に取り戻すためにどれほどのコストとエネルギーがかかるのか、そして「民営化という神話」のまやかし、グローバル企業の意図を私たちに伝えてくれます。水道法改正案が秋の国会で再び審議される予定の日本。ヨーロッパの人々の運動から多くの事実と経験を学ぶ必要があります。さらに、命や生活に必要な領域を市場化させてはならないという大前提を確認しつつ、「では水道を維持・運営することが難しくなっている自治体の状況をどうすればいいのか?」ということも含めて、ぜひ一緒に考えましょう。
水がなければ人は生きていけません。安全な水へのアクセスは人権であり、またそのためには支払い可能な低価格であることが重要です。ヨーロッパの事例から学び、日本における水道サービスのあり方を改めて皆様と考えていくことを主催者一同願っております。この作品を利用してぜひ多くの方に議論を広げていただきたいと思います。どうぞご支援をよろしくお願いいたします。
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