ルート2:湿った樹木:”森に食べられる”
vol. 4 2015-11-02 0
昨日からの続き。
ルート2:湿った樹木
ラダックから帰ってきて、打って変わって日本。この国を潤すじっとりした湿度が肌でひたひたに纏わりついてきます。
こうした湿度を懐かしく思っていると、屋久島の原生林のなかでひとり歩き回った時のことを思い出してきました。毎日大量の降水量に育まれ、死んだ木を苗床に新たな木が発芽し、その屍を栄養として何10mもの巨木に成長して行く樹々達。
夕方になっても原生林のなかをウロついていて、出口がどうにもわからなくなってしまった時間帯がありました。縄文杉などには人がたくさん向かっていたと思うのですが、私は人混みを避けてルートを辿っていたので、人にもすれ違わず、森で方角を失い、あたりは暗くなるばかり。
変なじとっとした汗が出て、森のざわめき一つにゾワッとさせられます。
視野が360度に広がって、全方向から見られているような。
あの時、人はこういう場所で簡単に飲み込まれて死ぬことができちゃう存在なんだなって思いながら、心臓の高鳴りが聞こえるくらい緊張しながら歩きました。
”森に食べられる”
しばらくウロついて、森のなかの所々に結んであるピンクのリボンを発見してそれを辿って下りました。
小さなピンクだけが外へ繋がる線のようでした。
幼少時の夏は、母の実家がある大分の山の上にいつも帰っていた私です。
大きくてこんもりした樹木たちに囲まれて、森たちをモンスターのような存在に思っていたことを思い出します。日本で育った私の身体には、”森は獣だ。”、と刻み込まれているような。
写真真ん中は、森の中で見つけた目印のピンクのリボン