チョップナー道、深し
vol. 18 2015-04-05 0
チョップナーというのをご存じだろうか。
日本人で、チョップナーを知っているのは、この記事を読んでいる皆さんと、ワルリの人々と一緒に、チョップナーを振るった人たちだけでしょう。今回は、知られざるチョップナーの世界にご案内します。
家、建築も半ば。トン単位の土と砂利を手運びで盛り終わり、9本の主柱の間にサブの柱を立て。いよいよ、チョップナーの出番がやって来ました。
家の土間=たたきを作るための道具がチョップナーです。長さ45㎝、厚み4.5㎝、幅18㎝、重さ4㎏。持ち手以外は木の板そのもののそれを振り上げて、おろし、振り上げて、おろし、振り上げて、おろし、を繰り返す。バシーン、バシーン、とラジェーシュさんや、シータさんたちは実に爽快な音を立てながら地道にたたきを進めていきます。しかし、僕たち日本人チームの音は、冴えない。どうも、違う。チョップナーは重いし、雲にさえぎられることなく降り注ぐ日光は暑いし、頑張って叩いた部分はうまくいかず変な跡が残ってしまう・・・。
でも、めげずにやっているとほんの少しずつコツが分かってくる。見様見真似で、よくよくラジェーシュさんたちの動きを観察し、自分の体の使い方を会得したのはTさんでした。「彼は、いいね」とラジェーシュさんも太鼓判。右手は握っているだけで、あくまで持ち上げるために力を入れるのは空の手の方。たたきつける時に剣道の面の要領で、握り手をギュっとするとバシーンという会心の一発になる、というのを見つけたのは、剣道部だったakkoさん。闇雲に叩くのではなくて、均一にするために横一列になってたたき進んでいきます。
さて、気になるのは、何をたたいているのか、ということでしょう。土と砂利を盛ったんだから、それだろう?いいえ、違います。
地面の上に土、土の上に砂利を盛り、それらで水平を整えたあと、最後の層があります。
これです。朝とれたてのゴーバル=牛ふんを水で溶き、ジュース状にします。それをゆっくりと床にまき、極細い木の枝で作ったホウキで少しずつ、まんべんなく伸ばしていきます。ちょうど良いくらいに乾いたら、チョップナー再開。またバシーンという音を目指してたたいていきます。僕たちが叩いている脇で、変に叩いて、へこんでしまった部分をokazu塾のTusharが丁寧な力加減で整えてくれ、フォロー。そういう地味な部分をコツコツとやってくれる彼らがいるからこそこのプロジェクトがうまく回ります。
「叩けば叩くほど良くなる」
これはある意味魔法の言葉。いくらでもこの作業が出来てしまう。終わらないんですね。
同じガンジャード村で開催したWall Art Festivalの参加アーティスト・淺井裕介さんも、制作期間というおしりがなければ、ずっと絵を描いている、ということを思い出しました。
家に愛情がこもっていきます。
チョップナーに熱中しすぎて、ゴーバルが飛んできても構わなくなってきました。
牛ふんが、牛ふんであることをやめて、“素材”へと変貌した瞬間でした。
でも目と口には入らないように気を付けていました(笑)
次回のアップデート辺りで、完成した床をお見せします。
Text and photo by okazu