本公演「カナリヤ」公演中止、
およびオンライン配信作品「ロマンランタン」支援プロジェクト

前回の地中篇に引き続き、団体について振り返っています。

2010年までは鳴かず飛ばずだったんですが、2011年に「ガチゲキ」というイベントにお呼ばれしました。

「ガチゲキ」はシェイクスピア作品をモチーフに複数の劇団が参加、2団体ずつ総当たりの上演で観客投票で都度勝敗を決し、最終的には審査員投票も加えて総合優勝を決める、という企画でした。最初はヤシロ個人の演出（脚本は他の人）としての参加を打診されて、その頃は演出だけやることにあんまり興味なかったので断ったんですけど、じゃあ団体としての参加で、となりました。

この時の出演者は横手さんの他に、オクムラ宅の奥村拓さん、現シンクロ少女の中田麦平さん、現アマヤドリの宮崎雄真さん、元きのこ牛乳のはるまきたわしさんで、いまでは結構みんな長い付き合いです。

特に奥村さんにはヤシロが大学1年の演劇サークルでの初舞台で共演してから、今までずっとお世話になっています。ご自身素敵な俳優なのですが、演出家としても逸材を探してくるのがやたらうまく、この時期の日本のラジオは、奥村さんが主宰するオクムラ宅の公演を観て、その出演者に自分とこの出演もお願いするという、ほぼ奥村さんのコネのフリーライドでした。日本のラジオへの出演回数が多い横手さんや雄真さん、吉岡そんれいさんなどは、もともとはオクムラ宅の出演者です。

ちなみにイベントの戦績は可もなく不可もなくみたいなもんでしたが、最終戦の相手が当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった「ぬいぐるみハンター」で、まあ当然日本のラジオの惨敗が予想されたんですけど、先攻で「店員が全員ゲイのイタリアンレストランを舞台に、痴情のもつれの挙句、赤ちゃんをパイにして食べる（原作は『タイタス・アンドロ二カス』）」という内容の芝居をやったら、見事に会場が冷え切り、後攻のぬいぐるみハンターを楽しく観るような空気でなくなって、観客投票で引き分けに持ち込みました。

「ガチゲキ」は本番中に台風が直撃したりとかいろいろありましたが、固有の思い出としては、各団体、出番の前に舞台上で練習をする時間を配分されていたんですけど、他の団体が調整に余念がないのに対して、うちの出演者は時間を持て余し舞台上で「モンスターハンター」をはじめ、さすがに「声出しくらいしたらどうか」と提案したら、ゲームしながら大声出し始めたので、スタッフが失笑したのを覚えています。

「ガチゲキ」への参加がきっかけで世界が広がった感があり、最初の転機だったなと思っています。同じく参加団体だった劇団どろんこプロレスと妙に仲良くなって（座組全員誰もその近くに住んでないのに、上野でやってたどろんこプロレスの打ち上げにみんなで合流した）、後に合同公演を実施したりしました。ガチゲキに誘っていただいたプロデューサーさんからその後、改めて別の企画でもお誘いを受け、その際にデザイナーの郡司さんと写真家の須田さんを紹介いただいています。

これが初めて一緒に公演やった際のロゴです。

郡司さんにチラシのデザインをお願いするようになったのは2012年の劇団どろんこプロレスとの合同公演、本公演は2013年の第8回「ラクエンノミチ」からで、その際にチラシのコンセプトをお伝えして、以降ずっとこの調子で続けております。

チラシのコンセプトについては、のちの「ツヤマジケン」でチラシの賞をいただいた時のインタビューでいろいろ話してます。余談ですが、人生で初めてパーマをかけていた時期で、かぶっている帽子はもう失くしました。

「ラクエンノミチ」と、劇団どろんこプロレスとの合同公演で上演した「ボディ」という作品が、このあとの日本のラジオの作風を決定づけたところがあります。ヤクザ、猟奇事件をやる、というイメージは、この２作の印象が大きく、個人としても思い入れの強い作品です。当時の王子小劇場（現：花まる学習会王子小劇場）の芸術監督だった玉山悟さんが「ラクエンノミチ」を観ており、後に佐藤佐吉演劇祭に誘われるきっかけになっています。

あと、「ラクエンノミチ」は初めてワークショップオーディションを利用してキャストを探した公演でもあり、いや、違うか？……その前の公演の出演者でも出会いを思い出せない人がいる……いつの間にか仲良くなっってて、どうやって知り合ったか覚えてない人っていません？

まあいいか、現在構成員の安東信助さんを初めて拝見したのが、「ラクエンノミチ」の後、2014年に参加した「ガチゲキ2」です。たぶん。

先述した「ガチゲキ」の第2弾で、シェイクスピア縛り、観客投票の総当たり戦、審査員投票で総合優勝を決める、という企画趣旨はほぼ同じ、ヤシロはプロデューサーとしても参加しました。

プロデューサーの技能、理念がほぼないまま、かつ上演団体としての準備も並行してしまったので、メチャメチャ調整に苦労して迷惑かけて、演劇人生で3番目に辛かったです（1番は旗揚げ、2番は今）。またやりたい気持ちはあるんですが、やるならプロデューサーの方に専念したいかなと思っています。

安東さんはこゆび侍に出演されていて、脇役だったのですが、強い個性を放っておりました。確か、AVのラベル貼ってる人の役で、逆にそれ以外どういう役割だったか覚えてないのですが、でも、観たひとみんな印象深かったと思います。この頃からうちにも出てほしいなーと思っていたんですけど、この時の交流としては帰りの電車で一緒になってちょっと話したくらいだった気がします。

前回同様、2団体ずつの組み合わせで上演して、都度観客投票していたのですが、今回の日本のラジオの戦績は1勝5敗のダントツ最下位でした。ただ、唯一の勝ち星の相手が5勝1敗、審査員票も圧倒的で総合優勝したMrs.fictionsという、大富豪の2みたいな役割だったのでまったく悔しい気持ちなかったです。ちなみに演目は「アラッテモオチナイ」というタイトルで、「マクベス」と「死の棘」を悪魔合体させた作品です。

このあたりから演出に興味をもちだし、照明、音響、入退場を使わずにシーンを転換したりとか、「経済的」をコンセプトにスタイルを模索し始めています。2014年の年始には王子小劇場が主催した演出家のためのワークショップにも参加しています。

※今書いてて思ったのですが、団体のあゆみというか、ヤシロ個人の足跡なんですが、メンバーいつつも当時からずっとほぼワンマン団体なのでご寛恕ください。

他の思い出としては、各団体、出番の前に舞台上で練習をする時間を配分されていたんですけど、他の団体が調整に余念がないのに対して、うちの出演者は時間を持て余し舞台上で「今回はパルコ劇場のつもりでやっていい？（実際は王子小劇場）」「今回はメタルマクベスをやっちゃうかもしれない」などと言い出したり、存在しないライオンキングみたいなシーンを大声で練習し始めて、スタッフが失笑したのを覚えています。

ここまでで一旦切ります。地上に這い出したもののまだミミズみたいなので蠢動篇です。