本のかたちをさぐる:その2──「戦争を題材にした本」を手がかりに。
vol. 7 2019-09-28 0
1981(昭和56)年発行の『戦争の記録 第三集』
クラウドファンディングを応援いただいた方々全員に、「選書リスト:戦争に関する1000の本」をお届けします。「選書リスト:戦争に関する1000の本」とは、親子文庫が毎年8月15日に発行していた冊子『戦争の記録』の巻末に掲載されていた「戦争を題材にした本」の目録です。
昭和54年から平成29年の約40年のあいだに作成された目録の総数は、約1000タイトルにおよびます。たとえば、一番はじめに載っているのは、絵本『かあさんが生まれたころに』(大川悦生著、1978)。そして選書の最後は『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著、2016)で終わります。
約40年間の選書リストを見ていると、各年ごとの出版状況や文庫の分類(幼児向け、少年少女向け、大人向け)の変化に気づきます。文庫のメンバーは、『戦争の記録』のあとがきのなかで次のようなことに書いていました。
子供向きの本は発行されたのかどうか、目にふれるような本は見当たりませんでした。だんだん書かれなくなるのでしょうか。(第22集、2000)
『戦争の記録』を作り始めて、30年の歳月がたちました。(中略)その間、文庫の中の「戦争に関する本のコーナー」の本は増え続け、これだけの本を全部読んだら、「戦争」というものが、おぼろげながら、わかってくるのではないかと思っています。(第29集、2007)
時々刻々と変化する時代のなか、文庫の母親たちは本を通じて、戦争を知らない子どもたちになにを伝えようとしたのでしょうか。毎年少しずつ増えていった「戦争を題材にした本」の選書から、文庫のメンバーの思いをうかがい知ることができます。
1985(昭和60)年発行の『戦争の記録 第七集』
伊深便り:現地取材近況その2
先日9月21-24日の4日間、岐阜県美濃加茂市伊深町に滞在しました。ところどころに刈り込まれた田んぼが、秋の訪れを教えてくれます。80年前の村も、同じ風景が広がっていたのではないかと想像します。
今回の取材では、慰問文を80年前に書いた村井義明さん、戦没者遺族の井上武彦さん、福田範和さんをはじめ、多くの関係者の方々とお会いすることができました。93歳の女性からは、戦艦大和の乗組員だった兄が、呉を出港する前に一時帰省した際のエピソードを語っていただきました。
私たちが出会ったのは、子どもたちの言葉に託された、言葉にならなかった様々な人々の思いでした。約40篇の手紙に込められた思いをできるだけ一篇ずつなぞり、記録に残していきます。
慰問文をなぞりませんか
『慰問文集』再々発行プロジェクトでは、慰問文を一緒になぞる方を募っています。80年前に子どもたちが綴り、40年前に母親たちがなぞった約40篇の鉄筆の跡を、パソコンで入力していきます。一文字ずつ言葉を「なぞる」ことで、読むだけでは見えない風景が浮かび上がってくるかもしれません。
兵隊さん元氣ですか。
僕たちは相かわらず元氣で學校に通つてゐますからどうぞ御安心下さい。家の方の人達も皆おたつしやです。だんだん暑くなつて來ます、兵隊さんの方も暑いでせう。家の方は今麥刈の最中です。出征軍人家族の家へは役場からリヤカーをかして下さいます。
日支事變も大そう長びいて早満二ヶ年にもなります。この村でも後から後からと出て行かれました。
もうそろそろ田植も始るので一寸いそがしくなつて來ました。
新聞や雜誌等を見ると其の後戰死しなさつた方もたくさんあります。
では兵隊さんお體を大切にして元氣で戰つて下さい。
小林典昭(伊深尋常小学校5年生[当時]) 『慰問文集』より引用
一篇につき、200-800字程度のボリュームですので、お気軽にご参加できます。なぞる作業を少しずつ分かち合いながら、進めていきたいと思います。ご関心のある方は、10月4日(金)までに下記のメールアドレスに、件名を〈なぞり書き体験希望〉としてご連絡ください。みなさまのご参加お待ちしています!
aha.archive.2005{at}gmail.com