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『慰問文集』再々発行プロジェクトをクラウドファンディングで実現!

戦時中の子どもたちが書いた"平和への願い"を再びなぞる。
『慰問文集』再々発行プロジェクト。

「慰問文」とは、戦地の兵士を励ますために書かれた手紙のことです。子どもたちは、戦場の父や兄にどんな言葉を送ったのか? 80年前に綴られた『慰問文集』をなぞり直す、手づくりのメディアづくりが、岐阜の小さな村から始まります。

FUNDED

このプロジェクトは、目標金額1,550,000円を達成し、2019年11月28日23:59に終了しました。

コレクター
205
現在までに集まった金額
2,248,501
残り日数
0

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このプロジェクトは、目標金額1,550,000円を達成し、2019年11月28日23:59に終了しました。

Presenter
AHA! [Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ] プロフィールを表示

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8ミリフィルム、写真、手紙といった、“市井の人びとの記録”。その潜在的で関係的な価値に着目したアーカイブづくりを企画・運営しています。「文房具としての映像」という考え方の普及を進めるremo[NPO法人記録と表現とメディアのための組織]を母体として、2005年より大阪で始まりました。目下、全国各地の市民団体、大学機関、美術館などとの協働をつうじた草の根のアーカイブづくりに尽力しています。時間的/空間的な隔たりを前に、イメージはどのように働くのかという問いを一貫して探求しています。近年の主な実績としては『はな子のいる風景』(武蔵野市立吉祥寺美術館、2017)など。

連続トーク・シリーズ「なぞるとずれる」第2回(尾中俊介さん)開催レポート

vol. 6 2019-09-19 0

クラウドファンディング期間中の連続トーク・シリーズ「なぞるとずれる|Trace and Slip」の第2回を、8月29日にNADiff a/p/a/r/tで開催しました。

グラフィックデザイナーで詩人の尾中俊介さん(Calamari Inc.)をゲストにお招きし、「レイヤーとレイアウト」をテーマにお話しいただきました。尾中さんは、これまでにAHA![Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ]が企画した制作物の多くをデザインされています。『あとを追う』や『はな子のいる風景 イメージを(ひっ)くりかえす』、そして現在進行中の書籍『なぞるとずれる』の編集とデザインを通して、〈なぞる〉と〈ずれる〉を考えます。

聞き書き集『あとを追う』

尾中さんとAHA!が最初に制作した本は、聞き書き集『あとを追う』です。高度経済成長期に一般家庭に広く普及した8ミリフィルム。その映像の「再生」をつうじて提供者が思い出し、語ったことを聞き書きとしてまとめた、文庫サイズの小さな書籍です。

『あとを追う』は、これまでに2冊が制作されています。ひとつは、2016年に武蔵野市立吉祥寺美術館で開催された企画展「カンバセーション_ピース」において制作されたもの。もうひとつは、2017年に清澄白河で開催された「MOTサテライト」の際に制作されたもの。8ミリフィルムに記録された、暮らしのあり様を見ながら提供者が語ったのは、家族のこと、地域のこと、そして戦争のことでした。

AHA!が一貫して探求しているテーマは、空間や時間の隔たりに対して、イメージはどのように働くのかということです。他者の経験は厳然として他者の経験ですが、他者の経験の記録を「読む」という経験は、読者の経験です。「経験」の<部分的分有>を促すために『あとを追う』は作られました。(松本)
フィルム提供者の語りは、本来ならその人の心の中だけで留まってしまうようなプライベートなものです。その言葉を記録して出版し(パブリッシュ)、それを読む経験とはどのようなものなのか。そこには、すでに「なぞるとずれる」というテーマが含まれていました。(尾中)

『あとを追う』にはフィルム提供者の聞き書きだけではなく、写真も掲載されています。提供されたフィルムの一場面だけでなく、人の後ろ姿や落ち葉など、聞き書きの内容とは脈略のない写真のようです。しかし、本全体を通して見ると不思議な既視感が生まれます。本の前と後ろにイメージがシンメトリーになるように写真が配されたり、フィルム提供者の聞き書きのあいだに、同じリズムのような間隔で写真が掲載されているのです。

グラフィックデザイナーの仕事は平面をつくることですが、紙の表と裏を一体として考えないと、平面を捉えることはできません。ページを捲ったらその下になにがあるか。それを意識させるために、ページネーションとレイアウトを同時に考えていきます。だから、つねに層(レイヤー)を意識していました。(尾中)
聞き書きをしていると、別のフィルム提供者の人の話どうしがつながってくることがあるんです。そのことを尾中さんに話したら、フェードインしたりフェードアウトするようなページをつくってみたらどうかと提案を受けました。(松本)

8ミリフィルムの上映をきっかけに語られた言葉が、活字となって本に綴じられる。『あとを追う』の読書体験は、映像と言葉の生み出すイメージが、重なったりぶつかり合いながなら、ひとつの時間を描いているようです。

本づくりに興味をもった尾中さんが10代の頃に出会った本が、絵本作家・長谷川集平の『絵本づくりサブミッション』(筑摩書房、1994)でした。絵本づくりの本でありながら、そこに紹介されていたのは、エイゼンシュテインやゴダールといった映画人たちの手法。モンタージュ(フィルムの断片をつなぐ映画技法)のように、本のページをつくるというデザイン/編集の発想は、より具体的なルールというかたちで『はな子のいる風景』につながっていきます。



『あとを追う』(武蔵野市立吉祥寺美術館、2016)


『あとを追う』pp.186,187(投影されている写真は編者撮影、被写体は編者の母)


『あとを追う』pp.6,7(投影されている写真は編者撮影、被写体は編者の父)

記録集『はな子のいる風景 イメージを(ひっ)くりかえす』

『あとを追う』の次に尾中さんとAHA!がつくった本が『はな子のいる風景 イメージを(ひっ)くりかえす』です。井の頭自然文化園(東京都武蔵野市)で飼育されていた象の「はな子」が、2016年5月に亡くなったことをきっかけに、はな子と一緒に撮った記念写真を集めます。3ヶ月のあいだに、一般の家庭から約550枚の写真が集まりました。

提供してもらった記録から戦後の歴史をかたちづくることができるのではないか、という企画を聞いて、とてもおもしろいなと思いました。でも、それは「はな子」の死を利用することにはならないか。そのことがずっと気になっていたのです。だから僕は、提供者個々人の思いをまるごと飲み込むべく、提供された写真すべてを貼り込むべきじゃないかと松本さんに提案しました。(尾中)

しかし、制作の予算上すべての写真を載せることはできません。提供された写真をどのように選んで載せるべきか、編集とデザインのやりとりは9ヶ月に及びました。

結果的に編集の観点から、写真を選ぶ3つのルールが設定されます。

(1)はな子のみのもの、はな子が不鮮明なもの、はな子ではないものは除外した。
(2)被写体が正面を向いているものを優先した。
(3)撮影日が判明するものを優先して選定した。

そして、デザインの観点から、使用する写真すべてをモノクロに加工し、サイズを揃えてトリミングを施すというルール設定に至ります。撮影日に記されたはな子の飼育日誌とともに、時系列に並べるすることで、本の構成がつくられました。

このようなシンプルな土台によって、イメージを「くりかえす」という一冊の本ができました。これに対して、プライベートな痕跡、つまり写真の貼り込みや投げ込まれた附録によって、最初に抱いたイメージを「ひっくりかえす」ような構造になっています。いま見ても、これがいわゆる“いいデザイン”かどうかは分かりません。でも、『はな子のいる風景』という本が、このかたちのほかにないと思うのは、一つひとつの平面のレイアウトが干渉し合いながら、本の束としてレイヤーになっているからです。(尾中)



『はな子のいる風景 イメージを(ひっ)くりかえす』(武蔵野市立吉祥寺美術館、2017)


『はな子のいる風景』p.1959.5.4に貼り込まれたアルバムの複写


『はな子のいる風景』pp.2011.6.7, 2011.7.6

編集とデザインの思考がそれぞれ干渉し合いながら、一冊の本がかたちづくられていきます。平面をきれいにレイアウトして「ととのえる」ことを優先せず、イメージがどのように運ばれるかを意識していると尾中さんは話します。

最初に思い描いてたあたりまえのイメージを変えること、核心をずらしていくことが、このデザインの醍醐味だと思っています。そのなかには必ず問いが含まれます。たとえば、ボードレールの詩が時代を経ていろんなかたちで翻訳されていても、それがボードレールの詩だと言えるのは、そこに詩の本質であるなにかしらが残っているからだと思うんです。なぞり、ずれていくことで露わになるなにか。その推移を垣間見せることがこれらの本づくりでは重要なことだと思っています。(尾中)

いま、AHA!が取り組んでいる『慰問文集』再々発行プロジェクトは、80年前の子どもたちが書いた文章を繰り返しなぞることでもあります。それは文字通り「線をなぞる」ことであり、「思いをなぞる」ことでもあります。そのときの「ずれ」に、私たちは何を見出すことができるでしょうか。

尾中さんはこのトークイベントに際して、デザイナーの鈴木一誌氏の著書を持参していました。その本の最後には、次のように書かれています。

見出すとは、面的な体系を破砕することに関わる。破砕した断片を平面に配置すること。面に対抗しようとする、挫折を宿命づけられた線的な運動がデザインだと思いたい。ゆえに、デザインは編集なのである。 ──鈴木一誌 『ページと力』(青土社、2002)p.360

連続トーク・シリーズ「なぞるとずれる」の第3回は、『どもる体』や近刊『記憶する体』の著者・伊藤亜紗さんをお招きして「なぞる体、ずれる体」をテーマにお話します。現在、参加申込みを受付中です。ぜひご参加ください!

連続トーク・シリーズ「なぞるとずれる」
vol.03 伊藤亜紗|なぞる体、ずれる体

日常の営みから、創作活動に至るまで、あらゆる場面に遍在する「なぞる」行為と、それに伴う「ずれる」現象。私たちの生活は、絶えずこのあいだを繰り返しているのかもしれません。『どもる体』や新著『記憶する体』の著者である伊藤亜紗さんに、「なぞる」と「ずれる」の真髄を、身体論の視点から探っていただきます。

話し手:伊藤亜紗(東京工業大学准教授)
聞き手:松本篤(本トーク・シリーズ企画者)
日 程:2019年9月28日(土)
時 間:19:00 - 21:00(18:30開場)
会 場:本屋B&B(東京都世田谷区北沢2-5-2 BIG BEN B1F)
定 員:40名程度
参加費:前売1,500円(+ワンドリンク500円)、当日2,000(+ワンドリンク500円) 申込先: http://bookandbeer.com/event/20190928_traceandslip03/

伊藤亜紗(いとうあさ)
1979年生まれ。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。専門は美学、現代アート。主な著作に『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社新書、2015)、『どもる体』(医学書院、2018)など。最新刊は『記憶する体』(春秋社、2019)。

vol.04 『読書実録』を読む 10月26日(土)
話し手:保坂和志(小説家)

vol.05 アーキビストなしのアーカイブ 11月22日(金)
話し手:松本篤(本トーク・シリーズ企画者)

トークシリーズの詳細はこちらの ウェブサイトをご覧ください。

https://nazoru-to-zureru.tumblr.com/

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連続トークイベントの内容は、書き起こしされ、クラウドファンディングのリターンのひとつである季刊『なぞりがき』の中に収録されます。

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サポート・メンバーを募集しています

イベントやワークショップの企画や運営、現地でのインタビュー取材のテープ起こし、文献資料の書き起こしなど、本作りにかかわるさまざまな作業をお手伝いいただきます。取材、編集、出版、流通など、本というメディアを作り、届けるまでのプロセスに興味のある方は、下記にお問い合わせください。

aha.archive.2005[at]gmail.com

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