津川エリコ新作詩「本当は」
vol. 19 2024-02-24 0
津川さんが本プロジェクトのアップデート用に書きおろした新作詩を、ご紹介します。
本当は 津川エリコ
スーパーマーケットの前に繋がれている犬の頭をなでる
犬が好きだからだと思うが本当は
犬に愛されたいのだ
犬は無条件でしっぽを振る
私は犬の耳の後ろを掻いてやっているだけだが
彼は頭を小突くように私の手に押しつけてくる
もっと掻いて、と言っているのだ
大きい犬はそれだけで愛も大きいように私は錯覚する
さあ、匂いを嗅いで私がどんな人間だかあててごらん
小さい犬は愛の方が大きくてはみ出している
私はほしいのだよ
その全部を
スーパーマーケットの前に繋がれている犬の頭をなでる
犬が好きだからだと思うが本当は
犬に愛されたいのだ
彼らは飼い主が戻って来るのを全身全霊で待っているが
期待で震えて
誰でも愛する用意が出来ている