とてもていねいにことばを組み立てている—栩木伸明さんのコメント
vol. 9 2024-01-30 0
栩木伸明さん(アイルランド文学者・早稲田大学文学学術院教授・翻訳家)による『雨の合間 Lull In The Rain』の短評をご紹介します。
アイルランドのダブリンでずっと書いてきた人の日英対訳詩集。失われたものがたくさん出てくる。どの記憶も雪のようにはかなく消えた中身と、お椀のように消えない輪郭でできている。詩人はその輪郭をなぞるように、でもほんとうになぞるとお椀まで消えてしまいそうだから、輪郭を痛めないように、とてもていねいにことばを組み立てている——「良く晴れた翌日/ナメクジはコンクリートの上で//黒いダリアの押し花みたいだった/微かなスジの細部をあらわして」(「雨の合間」)
(『現代詩年鑑2023』現代詩手帖、2023.12)
お椀の比喩がありますが、『雨の合間』には「お椀の雪 A bowl of snow」という詩が収載されています。これも、失われたものに関する一篇です。
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