レオナルド・ダ・ヴィンチについて Part.3
vol. 12 2019-01-19 0
レオナルド・ダ・ヴィンチについて
Part.3 彼が愛した楽器リラ・ダ・ブラッチョ
リラというと古代ギリシャの竪琴(弦楽器)をまず思い浮かべると思いますが、中世~ルネサンス時代には弓で弾く弦楽器もリラと呼ばれていました。
リラ・ダ・ブラッチョは「腕のリラ」という意味で、形はヴィオラに似ていますが、弦が7本、うち2本が棹から外れた解放弦で出来ています。
写真はヴィオラ・ダ・ガンバ奏者のなかやまはるみさん所有の楽器。弓は本来はもっと長いそうです。
調弦がとてもユニークです。
解放弦がオクターブで同じレの音、そしてまたオクターブでソとソ、あとはレ、ラ、レ
手前から順番に弾くと…
ここからは対談形式で。
(スタッフ) 音列がイメージしにくいですね。下から音階を弾いていっても、次の弦でまた音が下がってしまう…
(なかやま) そうなんです。だから旋律より和音が弾きやすいね。逆に歌いながら弾くのには適してると思います。
(ス) ピアノやギターの弾き語りみたいな感じでしょうか。形がヴァイオリンのようなので、つい旋律を期待してしまいます(笑)
(な) ルネサンス時代は古代ギリシャ文化の復興なので、ギリシャ時代の吟遊詩人風が流行ったんだと思います。今では廃れてしまったこの楽器も、この時代には一家に一台的な楽器だった様です。
(ス) ロレンツォ・デ・メディチも上手だったとか。
(な) 特に知識階級で人気がありました。教養のひとつだったんでしょうね。ただ、あくまで即興で詩を吟じながら弾くものだったので、楽譜が残っていません。一冊だけ「ペーザロの写本」と呼ばれる楽譜に、指使いの表と断片含めた数曲があるだけです。
(完全な形で残っているのはこの曲だけ。数字の記譜は編集者のオリジナルです。)
(ス) ところでこの楽器、16世紀で廃れてしまったようですね。何故でしょうか?
(な) やはり即興詩吟の伴奏以上には楽器の能力が追いつかなかったところでしょうか。もっと小回りの利くヴァイオリンが出来ると、そちらの方に人気が移ったのでしょう。音程が取り難いので合奏に向いてないし。
(ス) なるほど。そんなリラ・ダ・ブラッチョが「オルフェオ物語」では2台もオーケストラに乗るという事で、公演の目玉のひとつとなっていますね。とても楽しみにしています!
それではなかやまはるみさんの即興演奏をお聴き下さい。
さて、ギリシャ神話によるとリラは、ヘルメスが亀の甲羅に弦を張って作ったが始まりです。その弦というのが、兄のアポロンが飼っていた牛を盗みその内臓を使って作ったものだったので、ヘルメスは罪を問われるのを恐れて、作ったリラをアポロンに贈りました。そしてそのリラがアポロンの息子、オルフェオに授けられたのです。
オルフェオのリラは神様の楽器なんですね!
最後に、もしかしたらダ・ヴィンチがリラ・ダ・ブラッチョを弾いている姿かも、という絵をご紹介します。