秋の午後、賢治の物語とともに、樹を想う
vol. 37 2024-09-15 0
なんと、3ヵ月ぶりのアップデートになってしまいました。今年の夏は昨年を上回る猛暑で、今なお熱中症予防が呼びかけられるほどですが、みなさま、それぞれに大変だったことと思います。
異常な高温に加え、降れば土砂降りという天候は、里親さんに引き取られた桜たちにとっても受難の日々でした。伊豆、日光、桜川……。体調を崩し、弱った桜の養生に矢野さんも里親さんも忙しい日々でした。
日光・幾何楽堂さんの急斜面に植え付けたソメイヨシノは7月に入って急に枝枯れを起こし、7月19日、矢野さんら杜の学校スタッフが救急治療に駆けつけました。
急に枝葉を落としてしまった日光・幾何楽堂さんの桜
検知棒を挿してみるとドブ臭い匂い。急斜面で泥水が流れ込みやすく、度重なるゲリラ豪雨で水脈が詰まってきている、と矢野さん。エアースコップで空気の通り道をつくったり、遅い時間まで治療は続けられました。
検知棒の上にトンボが。空気と水の通りが良くなると必ずトンボや蝶が集まってくる
まるでカフェのような幾何楽堂さんのギャラリー。なんと9月15日に「インド食堂 ハルマツ」をオープン!
「ターリー」、美味しくいただきました!
一方で、健やかに育っている桜も。長野県南佐久郡佐久穂町大日向小学校に行った桜は、暑さにも負けず元気に枝葉を伸ばしていました。それ以上に元気になったのがお隣の銀杏(イチョウ)。弱って伐採されてしまったけれど、残っていた根株からヒョロヒョロと出ていた新しい枝(ひこばえ)が、桜がやってきた日からぐんぐん伸びはじめ、なんと桜の背丈を越えそうな高さにまで成長したのです。
右が一気に伸びた銀杏。いのちの凄さを実感します
大日向小学校理事のおひとり、塚原諒さん(写真左)と大日向小桜の里親プロジェクトの発起人、山下洋子さん(写真右)、プロジェクトを応援する会の押田さんご夫婦(写真中央)
老木や弱って危険な樹木を伐ることにはなんの躊躇もなく補助金が出る時代、樹木のいのちをつなぐにはどれほど労力も気力も時間もお金もかかることか。それでも、樹木のいのちを最期まであきらめないために、このプロジェクトはあります。そして、樹木は何があっても静かに私たちを励まし、癒し、救ってくれる存在であることを確信するこの頃です。
さて、国立二小校庭に残せる樹木は教育委員会と20回を超える協議を続けてきましたが、結局2箇所2本という最初に示された見解が変わることはなく、「せめて3本残したい」という子どもたちの必死の願いを叶えることはできませんでした。本当に悔しく残念です。
ただ、最後まで校庭に残したいと願った「普賢象」(八重桜)は、幸いなことに初めて国立市内に移植されることになりました。
行き先は「やぼろじ」。古民家を再生した地域の居場所に植え付けられた普賢象は、蔵の白い壁と馴染んで、ひとりになって淋しそうでもあり、大事にしてもらって嬉しそうにも見えました。
甲州街道から少し路地を入る「やぼろじ」には大きな木も植物もたくさん
あたりの風景にしっくりと馴染む普賢象。この場所で、どうか元気に育ってね
さて、残るは新校舎が完成間近の二小校庭への本移植。日程が決まったらまたお知らせしたいと思います。
その前に、大事なお知らせを。皆さまに応援・ご支援いただいた「樹木の緊急避難(仮移植)プロジェクト」から、このプロジェクトは「樹木のいのちをつなぐ(本移植)プロジェクト」へと移り、さらに「樹木のいのちを子どもたちと共に育む(養生・育成)プロジェクト」へと移っていきます。
市費は一切出ないため、まだまだお金がかかっていきます。そこで、国立二小樹木保存プロジェクトを応援する会主催のチャリティーイベント「この奇蹟(いのち)を根づかせたい~語りと音楽のつどい」が開催されることになりました。本当にありがたいことです。コンサート、映画上映会につづく第3弾。宮沢賢治の「虔十公園林」の語りと音楽、そしてプロジェクトのダイジェスト映像最新版を皆で観て聴いて味わい、“樹を想う”秋の午後になります。
樹を愛しく想う子どもたちと大人の願いから始まったこのプロジェクトが「虔十公園林」のように20年後、30年後につづいていく物語になりますように。どうぞ、お誘い合わせのうえ、くにたち市民芸術小ホール地下スタジオにお越しください(定員70名。事前予約をおすすめします)。
貴重な時間を共に過ごせますよう、お待ちしております。
2024.9.15 プロジェクト・メンバー一同