11/4「みんなで話そう! 二小の樹木とみらいの杜」のご報告(前編)
vol. 25 2023-11-12 0
11月4日、秋晴れが広がる中、連休中にもかかわらず50名を超える方々にご参加いただいて「みんなで話そう! 二小の樹木とみらいの杜~二小の仮移植樹木の説明会&これからを考える会」を開催しました。
工事ヤードで間近に観ていただくことができないため、最初に仮移植の様子から2回に及ぶ安全対策(7月に追加の支柱、8月にワイヤーを張る作業)と現在の仮移植樹木の状態を観ていただける映像を流しながら、現場監督を務めた押田大助さん(大地の再生関東甲信越支部/中央園芸)が説明をしました。
「樹高は3~5m、極限まで低くして狭いスペースに仮移植した。根杭と支柱を何本も打ち込み、根鉢が動かないよう固定。7月、南東側の道路側に傾いているのではないかとご指摘のあったところに追加で6本支柱を立てた。8月、さらに既存のヒマラヤスギにワイヤーで繋ぐ(張る)作業を。現状として何本か調子の悪い木もあるが、全体的には新芽が吹いて移植としては成功だと思う」
8/30、仮移植樹木と既存の高木をワイヤーでつなぐ作業
大きく幹を剪定したにもかかわらず新たな葉を伸ばしている桜(8/30)
10/27の様子
続いて教育委員会教育施設担当課長より、教育委員会としての安全対策と本移植への見通しが述べられました。
「土留擁壁への負荷が心配という声をいただいた。擁壁は昭和56年に造られたもので誘発目地が入っていないため乾燥でひびが入りやすい。10月には雨の差し込みを防ぐ応急措置を行なった。土留の傾きについて9月以降5回ほど確認を行い、直ちに崩れる危険性はないと考えているが、引き続き経過観察を行なっていく」
「本移植の見通しについては工事ヤード内に2箇所2本程度が妥当であると考えている。施工に関しては何らかの公的基準、根拠に沿って実施すべきと考えている」
説明の最後はプロジェクト共同代表の森田が、本移植への想いとスケジュールを述べました。
「伐採予定だった樹木が奇跡的にいのちを繋いで校庭に残っている、と聞いた時、本当に子どもたちは喜んでくれた。過酷な夏を超え、生き残った樹木たち、そこに息づくたくさんの生きものたちがこの先もいのちを繋いでいけるように知恵を絞り、手立てを考え続ける姿勢を見せていくことが本当の環境教育だと思う。子どもたちを真ん中に、すべての樹木の行く末について、より良い方向性と未来を皆さんと一緒に考え、すべての方にとって『よかった』と思えるゴールを目指したい」
「4月末を目途に二小含めすべての樹木の移植先を探して、決まったところから順次移植していく予定。本移植については広く意見を伺い、そのうえで教育委員会との協議を進めていきたい。これまで地域に開かれた情報でなかったことをお詫びし、開かれた会にするための今日は第一歩にしていきたい」
この後、体育館から外に出て、実際の仮移植樹木を遠目に観ながら、施工責任者の矢野智徳さんから説明を聞きました。
「奥のほうに帯状に36本移植されている。今9割くらいが芽を吹いて発根も良好な状態で生育してくれている。それぞれの植物が枝と根っこのようにしがらみ、その隙間に空気や水が通る『しがらみ構造』で今回の植栽は出来上がっている。60年近くここにいる既存の樹木が作っている『脈』=空気と水の通り道を中心に移植木が互いに支え合い、しがらみ合って呼吸ができているから、地下に細根が生み出され、地上に新しい枝葉が生み出されている」
「木が重心バランスを崩して不安定な状態でいると、大地の一番下、根の呼吸のポンプが作動せず、芽を吹くことはできない。先端で新芽を吹いているということは根が安定して立っているということ。空気と水が職人は五感で測定しながら木を植えていく。数値化はできない」
「いのちを守る作業は、不可能と思われることがあっても、大事にみんなでスクラムを組んで、繋いでいくことができる。生態系と同じ」
この後、東側フェンス上に見える木々を眺め、桜の葉が(落ちずに)紅葉しているのは木が呼吸している証拠で、良い状態を示す表情であるとの説明がありました。
体育館に戻って後半の意見交換・質疑応答は子どもたちの意見からスタート。三人の子どもたちがそれぞれ自分の意見を述べ、参加できなかった保護者からの手紙をプロジェクトから読み上げました。
二小4年生 私はかりいしょくした木を二小にのこしたいです。大人が子どもの気持ちをきいてくれたのにそのせいで大人が争う姿は見たくはないし、悲しいし、不安に思うし、その話し合い方が正解なのかな? と思うし、争わないで解決してほしいです。まず子どもの意見も聞いてほしいです。
あと、木があるとうれしいのは日陰ができるし、涼しくて学校の玄関まで行くときも教室の中も体育の時間も涼しくてサイコーだからです。私はまぶしいのが病気でにがてなので、木のしたはまぶしくなくて安心して外にいれます。あぶないからどかしてほしいというその声のことを聞いてせっかく救えた木の命を、また失いたくはないし、その木たちにも他にできること、そして役立つことがあるからこそ、最初の計画にしてほしくはないし、その木、その木に大切な命があるから、春にはきれいな桜が咲き、夏には涼しい日陰ができ、秋にはきれいな枯葉やモミジなどが見えて、冬には綺麗な雪の桜が咲いて、春夏秋冬いろんなきれいな木を見れるから木は残したいです。
もし全部植えられなくても、残りの木をチップにするのではなく、残りの木を国立のどこかに木の森を作ってほしいです。
三小3年生 地球があって、その地球の全部のいのちの中から、まずは樹の話から説明します。樹は人間にとって大事な植物。息もあげるし暑い時に陰も作ってくれます。樹を切ったら、最後に人間が死んでしまうから、樹を切るのは人間も切るみたい。
その人生がまだ終わってない時に切ったらダメ。樹はとても大切だし、いろんな意味もあって、その意味をわかってくれる人が東京の国立にきてくれて、二小の桜のプロジェクトをやってくれた。それがとても大事。それを忘れません。
二小4年生 なぜ木を戻したいかというと、思い出があるから。いつも見守ってくれていたから、だけではなく、イライラしている時でも木にちかよるとあんしんできて「もういちど」というきもちになれたのです。これはあたらしく入ってくる木にはできないと思います。なぜなら思い出がつまっていないからです。
あたらしく木をうえて思い出をつくるのもいいと思いますが、やっぱりみんなの思い出がある方が、わたしたちにとってはとてもうれしいです。またあたらしい二小にもどってきてほしいです。そして入学してきた子たちとも思い出をつくってほしいです。
二小保護者からの手紙 本日は家庭の都合でこの場に参加できず、文書にて失礼致します。水撒きやメンテナンスに度々ヤード内に入れていただき、樹木の様子を見てきました。仮移植の樹木の内部に入ることもありましたが、木々が倒れそうと思ったこともありませんし、危うさを感じることも一切ありませんでした。
少数の近隣住民・保護者から倒木の心配を受け、大日本土木さんにはヤード内が見えるように透明なフェンスに変えていただいたり、災害が起きた際に仮移植の樹木が歩道でなくヤード内に倒れるようワイヤーで内部に引っ張ったり、数々のご協力をいただいた様子を間近で見てまいりました。二小に関わる方からの、倒木を心配する気持ちも十分わかります。事故が起こってからでは遅いので。
ですが、多方面にわたり十二分に安全対策をとってくださっていることも感じております。今後の本移植への方向性は、子どもたちの意見を第一に考え、工事の工程と合わせて可能な限り子どもたちの意見も汲み取っていただいた形になることを望んでおります。現在、二小に通っている子どもたちの声を一番に聞いてもらいたいです。
仮移植されている樹木が、現実的に全て二小内に移植できなかったとしても、仮移植決定から本移植までの流れを記録することは、今後小学校の建て替え工事が控えている国立市では貴重な資料だと思います。今後、本移植が実現された際には「旧校舎のそばにあった樹木は、建て替え工事後の新しくなった二小でも、移植という技術でみんな(子どもたち)をずっと見守っていてくれる」ことを伝え続けたいです。二小の児童を一番に考えた移植になりますよう望んでおります。(後編につづく)