子どもを真ん中に、対立を超えて〜陳情の委員会審査を経て〜
vol. 23 2023-09-10 0
台風13号に伴う線状降水帯の影響で水害に遭われた千葉、茨城の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。紅葉のシーズンに向けて予約がたくさん入っていた養老渓谷の旅館の方が「お断りを入れなければならない。PCは泥水で故障、綺麗にしたばかりの大広間も全部泥に浸かってしまった……」と仰っているのを聞いて、胸が詰まりました。一日も早い復旧とともに、心と自然の再生を祈ります。
さて、ご心配をいただいた「二小樹木の無責任な移植プロジェクトの中止と危険な仮置き樹木の撤去を求める陳情」ですが、9月6日、総務文教委員会での審査が終わりました。
審査は2時間以上に及び、陳情者への質疑はなく、全委員から市当局への質疑がありました。主な質疑は以下の通りです。
・陳情にあるように、市民協働のルールを逸脱しているか?→逸脱していない。
・安全性について事前の協議では?→計画書を提出してもらい、技術者のこれまでの実績も確認した。
・今後も安全対策についての説明会は行っていくか?→プロジェクトと連携して行っていく。
・水やりは学校の負担になっているか?→プロジェクトのほうでしているので、なっていない。
・陳情にあるように、8月17日の説明会でプロジェクトへの不安、疑義が多くの方からあがったのか?→多くはなかったと認識。その後、13件、肯定、賛成の意見が届いている。
・説明会に子どもは出席していたか?→数名出席していた。
・子どもの声を聞いたらどうか。このプロジェクトについて、どう思っているかを。SDGsの観点で。→このプロジェクトは教育活動の一環。学校長と相談し、子どもの声をどう生かすか、協議していきたい。
・改築マスタープランの時から、木を残したいという声はずっとあった。ギリギリの段階で最大限できることをやったのがこの市民活動。子どもたちにどのような影響があると思うか? 市長に聞く。→教育的プロセスの中で行われている。SDGsの視点、緑の視点、環境教育の一助として、保護者、市民の不安を可能な限り払拭しながら、この目的に沿った教育効果を上げていくことが大事。
・教育長は?→安全は最大限配慮していかなければいけない。ただ、ゼロリスクは難しい。可能な限り減らしていくことが我々の役目であり、プロジェクトの役目。今回の取り組みは児童に与える教育的効果は大きいだろうと考えている。SDGsにも市内各校で取り組んでいる。これをさらに発展させて、自分の頭で考え、自分の考えを表し、これからの日本を、世界を担っていく子どもたちが主体的に考える素養を育てていく一環に、学校とも話して発展させていきたい。
・議会にひと言、事前に相談があってもよかったのでは?→協定を結んだのが5月1日。5月2日に書面で報告をさせていただいた。
・今後、安全面でのチェックや広報はしていくのか?→していく。
・あの仮置きは前例のないことを先駆的にやっているのか?→過去にも事例がある。
・伐採樹木をウッドチップにする予定だったが、その費用はどうするのか?→元々二小の木だけで賄えるのかどうかという話だった。軽微な変更。工事に支障のない範囲で調整していく。
・新校舎建設までの仮移植中万一のことがあったら、市も責任を持つのか?→管理者としての責任がある。倒木の場合、請求される可能性もあるが、協定に基づいてプロジェクトに求償は可能。
・市内造園業者に安全性を確認してもらったとのことだが、謝礼は?→1時間9,000円で2時間18,000円。
・それは市が負担するのか?→安全確認のために市が依頼した。予算を流用する。
・過去に事例があるとのことだが、これだけの本数を1年半も仮移植したケースはあるのか?→いま手元に資料がないが、1年くらいで、30本に届くかどうかの数だったと思う。
・安全に関して不安だという声と大丈夫だという声の両方があがっている。両者に向き合って今後も安全対策をしていくのか?→100%の安全はないが、今後もプロジェクトと協議しながら確認、対応していく。
・本移植のスケジュールは?→今後、プロジェクトと速やかに協議を進める。
・仮移植の木々が置いてある地盤の強度は?→圧がかかっていることは間違いない。今後、確認しながら、できるだけ早く移動してほしい。
・少数派であっても不安がある。安全性の担保は最も大切。市長の見解は?→天変地異含め100%の安全はない。100%に近い形で安全の担保ができている状態に持っていく必要がある。可能な限り市民の不安を払拭するよう安全対策をとりながら、教育という目的に向かってやっていく。
そして、全委員が意見を述べました。
・今、あちらこちらで天災が起きているが、私たちは先人の知恵に学ばなければならない。それは数値ではなく、感覚、知恵の結集。それこそが安全の確保。仮移植した木々は置いてあるわけではなく、植えてある。その結果として、芽を吹き、根を伸ばし、地面を包み込み始めている。崩壊の危険はほぼない。なぜなら、木は生きているから。
この陳情に子どもたちからたくさんの意見書が出た。木について、木陰について、生きものについて、子どもたちは学んでいる。これこそがSDGs。二小の学びはいま始まったわけではなく、これまでにあった。他に卒業生有志から、保護者から、大阪の認定こども園の園長先生からも意見書が出された。子どもを真ん中に、対立ではなく対話を、大人は見せていかなければならない。そして、一緒に考えていく。どうか、二小の子どもたちに、この保存樹木をどうしたらいいか聞いてください。不採択。
・特段の危険性があるとは捉えていない。科学や数値だけでは判断できない世界。ただ、プロジェクトにも事前の甘さがあるのではないか。専門家含めた説明会を行い、本移植を早急に進めてほしい。不採択。
・普通に植樹されている木で100%倒れない木はない。カナダに10年いたが、原生林のマツも強い風が吹いたら倒れる。倒れる可能性があることを覚悟しておいたほうがいい。都や国は管理しやすい木を植える方向にあるが、国立市には桜や彩りのある木を植える気概がある。が、行政も植栽ばかりをやってはいられない。プロジェクトの皆さんにも考えていただきたい。子どもは身近な大人の影響を一番受ける。他の子にも聞いたほうがいい。水道代はどうなのかと思う。移植する場所をプロジェクトの方々に探していただいて早急に進めてほしい。不採択。
・安全性を危惧するのもわかる。プロジェクトの樹木を守る意思にも賛同する。今後も情報提供を続けながら、本移植に向けて安全性の確保をしながらやってほしい。不採択。
・現地を視察したが、木杭が何本も打ち込まれ、太い幹も置いてあった。太い幹が伐られた木は痛々しく見えた。幾重にも安全対策が取られても、素人には判断しにくい。安全性は通常は数値化されている。経験と勘は理解されにくい。協定に基づいて安全性を高め、いくつかの課題を乗り越えて進めてほしい。子どもたちからのたくさんの手紙には心が震える。大人が争っていることを悲しむ声。実施設計を変更することなく、費用はプロジェクトが負担することを改めて確認して、着実に進めてほしい。不採択。(青木純子委員)
・大人は対立の構図をつくるべきではない。子どもは意見を自由に発することができる。大人はそれを守らなければならない。2000年に起こったことを繰り返さないように。教育委員会からの報告が5月に入ってからだったのには疑問が残る。対立せず、話し合いをして、いいところに持っていってほしい。本移植について、プロジェクトと協議していっていただきたい。たくさんの意見書を頂いた。お子さんからも。市長がしっかり答弁したので、不採択。
続いて、採決。
全委員不採択で決しました。でも、安全性についてをはじめ、厳しい意見がたくさん出されました。子どもを真ん中に、安全性のチェックとできる限りの対策を行いながら、市教委と本移植への協議を進めていきます。
みなさまから、さまざまなご意見、応援をいただいたこともご報告させていただきます。本当にありがとうございます!
なお、本会議は9月15日(金)。そこで最終的な審議が行われることもお伝えしておきます。
9月9日には台風が過ぎた後の仮移植した木々の状態を確認しました。木々はびくともしていませんでした。木々に倣って、これからも頑張ります!
2023.9.10 事務局長 前田せつ子