8月17日説明会を開催しました。そして、プロジェクトの中止を求める陳情が……
vol. 22 2023-08-27 0
意見の違う相手を排除するのではなく、違いを理解することで合意できるゴールがあると信じたい
8月17日に説明会を開催しました。地域の方、保護者の方、市議会議員の方をはじめ、40名近い方に足を運んでいただきました。
説明会の開催が遅れてしまったこと、このプロジェクトが教育委員会と協定を結んだのがゴールデンウィークが始まる直前で保護者や地域の方に移植の周知ができなかったことをお詫びしたうえで、プロジェクトから、そして施工してくださった矢野智徳さんから、二小の既存樹木の仮移植の現状と安全性に関する説明を行いました。
伐採されるはずが突然移植になったことに驚き、戸惑い、疑問に思い続けていた方。見えないヤード内に移植されていることで安全性に強く不安を抱く方。移植されたことを喜び、説明を聞きたくて来た方など多様な方が集まってくださいました。
質疑応答では、不安を抱く方々からの声が多くあがりました。「台風や地震が来ても倒木しない安全性を数値で示せ」という質問には「木は人工構造物ではないため、安全に関する数値はない」とお答えしても、「それでは安全とは言えない。安全とは言えないものを通学路傍に置いてほしくない」と水掛け論に。 「安全」というものは、それぞれ不安に感じる閾値がみなさん違うもので、一体どこにゴールがあるのか、安全とはなんだろうと考えさせられる時間となりました。
終了後には「意見を言えなくてごめんなさい」とおっしゃる方もいらっしゃり、多様な意見を交換出来る場でもあったのに、それぞれの「心理安全性」が担保できず、意見交換、そして合意を目指す話し合いができなかったこと、結果全ての皆さんの気持ちの消化ができずに時間切れとなってしまったことは、足を運んでくださった方々に申し訳ない気持ちになりました。そして残念なことに、その説明会後すぐに、一人の市民の方から「二小樹木の無責任な移植プロジェクトの中止と危険な仮置き樹木の撤去を求める陳情」が市議会に提出されました。
本当に残念な気持ちです。ですが、私たちがやるべきことは決まっていて、今回説明会でいただいた厳しいご意見を「みんなが合意できる最善の安全策」へと繋げていくことが樹木には素人の私たちプロジェクト保護者ができることなのだと思い、すぐに次に動きだしました。
教育委員会、改築工事請負会社のご担当者さん、移植時に現場監督を務められた押田大助さん(大地の再生関東甲信越支部/(株)中央園芸)とプロジェクト・メンバーで、出されたご意見を共有し、安全対策を協議しました。それぞれの現場のプロが意見を出し合い、対応策が練られました。プロジェクト保護者の意見も取り入れてもらえ、立場の違うもの同士が最大目標である「今考えうる最悪な自然災害が起きた場合でも、道を歩く子どもたちや地域の方の方に移植された樹木の危害が及ばない対応策」を話し合う良い時間となりました(請負会社さんのご協力、ご厚意なしに実現できない対応策になり、本当に感謝しかないです)。日程を調整し、8月末にも安全対策の工事が行われる予定です。
説明会を含め、お互いの違いを理解し、切磋琢磨する関係性を、公共哲学では「ライバリー・デモクラシー」と言うそうです。それは人と人との関係、社会のありかたを当事者として学んでいくことだそうです。これは国立市が目指すインクルーシブ教育の実現のために協定を結んだ東大の勝野先生がおっしゃったインクルーシブ知性=【全ての人間の尊厳と尊重され幸福に生きること、人が人を支配することが許されないように人間が他の生き物や自然を地球環境を支配するのではなく共生の道を歩むこと】に通じるものと思いました。
厳しいご意見の地域の方、保護者の方も、プロジェクトの理念や木や自然環境を大事に思う気持ちだけはご理解いただけていると思いました。ただ、それ以上に心配な気持ちがあること、そして何より知らされてなかったことが、不安をより大きなものにしてしまったこと。そこは私たちが大いに反省をしなくてはいけないことだと思います。そして、今回の「陳情」の結果次第では、樹木が撤去されてしまうかもしれない窮地でもあります。
そんなこんなで、日々仕事とプロジェクトと家事と子どもたちの夏休みの付き合いにクッタクタな母の様子を見て、小学4年生の娘が「お母さん疲れているね」と心配してくれました。我が家は何でも話す方なので「うん。いろいろなことがてんこ盛りで疲れている……」と伝えると、娘が自分の思いをワーッと伝えてきました。「なんで子どもの思いを聞いてくれたのに、大人は喧嘩になるの?」「みんな木が残ったことを知ってるし二小に戻ると思っているよ」と直球な質問と意見。
「子どもの気持ちや子どもが生きる未来が心配で、少しでも木を守りたい、自然環境を守らないと未来が危ないと心配する気持ちの人もいれば、決まっていたことが変更になり、いま自分の目の前で起きていることが受け入れられない方、子どもの安全が確かなのか確信が持てず心配で、元の状態に戻してほしいと思う方、いろいろな思いがあるからじゃないかな。
みんな違うから、それは仕方ないのよ。100人いれば100通りの思いがある。多様性は大変なのよ。でもお互いの思いを理解ができなくても意見の違う相手を排除するのではなく違いを理解することで合意できるゴールがあると母は信じたいのよ。それがインクルーシブ教育でもあり、国立市が目指すソーシャル・インクルージョン、地域で共に違う人同士生きるなんだと思うのね。
母はインクルーシブも木も大好きなので、みんながオッケーと思える合意を目指したい!そうゆう思い行動ができる子に育ってほしいかな~」と伝えると、「なら私も意見が言いたい」と娘。私以上にいつも多種多様な仲間といろいろ体験し、過ごしているので、ものおじせず……。
自ら市役所に電話し、学校と名を名乗り、どうすれば子どもの意見を聞いてくれるか、何をすればよいか、各部署の担当者から説明を聞いていました(横で一応聞いていました)。各々の部署の職員が丁寧に対応してくださり「書き方はなんでも大丈夫ですよ、もしこの電話が切れてしまったら、またかけ直すことができますか? 提出するときは暑いから気をつけてきてね」と、子ども相手でも丁寧な対応と心配もしてくれていたことが印象的でした。子どもをいろいろ巻き込んで、大人の争いを見せてごめんねと思いつつ、たくましく育ってくれて……とウルウルがしばらくがとまらない母でした。
木たちの行方は、一番は未来を担う小さい人、二小の子どもたち、地域の子どもたち、若者に考えてほしいです。そして、子どもの声に耳をかたむけ、叶えてあげようと行動を起こせるのは大人たち。木を思う全ての人が「当事者」で、この木々が二小の大地に戻れるのか、また違う場所へ行くのか。または振り出しに戻り、私たち大人がいのちの火を消し、チップとなるのか。
残念ながら運命がまたわからない状況になってきてしまいました。子どもの声、樹木のいのちをどうしたら守れるのか。みなさんからの沢山の応援を無駄にせず生かせるのか。お知恵をお貸しください。
2023年8月27日
~つづく つながる~くにたちみらいの杜プロジェクト 共同代表 小岩瑠理子
いま、思うこと
8月17日、仮移植樹木の現状と安全性についての説明会が開かれました。プロジェクト・メンバーと教育委員会との共同開催。説明員として、矢野智徳さん、押田大助さんも参加されました。集まったのは説明員を入れて50名以上。3時間の長丁場となりました。
仮移植した状態の樹木の安全性についてが焦点となり、「台風や、地震の際に倒木したらどうするのか」「どうして、子どもたちのいる学校でこんな事をしたのですか。やりたいなら他でやってください。すぐさま撤去してください」という厳しい意見も。
そして、説明会の終了後、「二小樹木の無責任な移植プロジェクトの中止と危険な仮置き樹木の撤去を求める陳情」が国立市議会に出されました。
GWの移植作業の初日、職人さんたちへの気合わせの際に矢野さんがおっしゃっていた「学校という教育現場だからこそ、リスクを負いながらもいのちをつなぐ。公益活動として取り組める場が開かれた」という言葉と、双方の言葉が頭をぐるぐる回っています。
保護者としてみれば、子どもたちは3年間、コロナという社会情勢の中でリスクを排除しようとする大人の姿ばかりを見てきました。制限をされ、リスクを排除し続ける社会に子どもは何を学ぶのか。
1本でも木が救えるかもしれない、と事態が動いたとき、私は、こどもたちへのみらいの希望だと感じました。
子どもたちに、どんなみらいを残していきたいのか。豊かな緑の自然環境ももちろんですが、私は「希望」を残していきたいです。社会システムにより、現代は忙しく、心を欠く時代です。私たちは立ち止まり、自然回帰、自然への畏敬の念を子どもたちと呼び起こせたらと願っています。心豊かな時代へと歩んでいきたいです。
樹木のいのちをテーマに大人が言い合い(意見交換)をしていた現状を、子どもたちはどう見たのか。娘は、「どうしてせっかく助かったのに、どかしてほしいなんていうの?」「大人がどうして決めちゃうの?」と言います。子どもだって意見があるのです。
立ち止まっている時間はありません。樹木たちは息をしており、私たちを信じて待っています。
ただ、二項対立は私たちの求めている形ではありません。お互いのゴールを見つけ、再び二小に樹木が戻れるように働きかけることが私たちの最大目標であり、前に進んでいきたいです。
今後どう進めていけばも含め、みなさまからご意見など頂けたら嬉しいです。
~つづく つながる~くにたちみらいの杜プロジェクト 共同代表 森田真里恵