7/2トークショー。みなさんの言葉を、決して忘れません
vol. 12 2023-07-04 0
昨日に続いて、6/30〜7/3の旧国立駅舎での第2弾イベントのご報告。駆けつけてくださった造園家のみなさんの言葉を紹介します。
前橋から休日を返上してお昼前に駆けつけてくださった黒沢宏樹さん。なんと大地の再生は初参加。にもかかわらず、3日間、最前線で動いてくださいました。
「国立第二小学校を2003年に卒業しました。大学に入って地元を離れてしまった身として、何か地元に貢献したいと常々思っていました。そんな時、造園組合の押田さんからの呼びかけでこのプロジェクトを知りました。母校の木が伐られることも初めて知って。大地の再生のことも、矢野さんのことも知りませんでしたが、すぐに『行きます!』と伝えました。家族にはその後、謝って(笑)。
もらった案内には、何日で何本救出するとか、どういうことをするとか、何も書いてなくて。腰道具と地方足袋だけ持ってくればいいよ、と。2日目の5/4から参加したわけですが、現場を見てびっくりして。これだけの木を全部GW中に救出するなんて、できるのだろうか。それが正直な思いでした。
私たち造園業の常識で言うと、移植は、数ヶ月〜2年前くらいから太い根を切って準備するのが普通です。いわゆる「根回し」。でも、今回はさまざまなしがらみの中で、準備期間もない中での移植だった。「大地の再生」の手法だからこそできたのだと思います。
本当に朝から晩までの作業で、普通に仕事している時よりずっと疲れたと言うか、仕事してるなと感じました。それが2日目、3日目と作業が進むにつれて、掘り取り、仮植も進み、疲れも忘れていく感じでした。
世の中にはいろんな人がいるなかで、木を救いたい、という人もいれば、古くなった木、大きくなった木は危険だから伐ってしまおう、という考えの人もいます。でも、今回、二小にお子さんを通わせている保護者の方、近所の住民の方々が『木を守ろう』と動いた。それが本当に凄いと思っています。並大抵の力では、今回のことはできなかった。まして、決まったのが2週間前くらい? それが本当に僕は嬉しくて、その工事に携わらせていただいて本当に良かったと思っています。
まだ60本の木がこれから伐採予定で、それから他の学校の建て替えも決まっていくと聞いています。これから数年先、十数年先、またこうした問題が出てくると思うので、行政の方にも一緒に考えていただいて、今回のプロジェクトが『良かった』と思えるものになっていけばいいなと思っています」
プロジェクト・メンバーも話しました。今回流した映像の中でもコモを巻かれた木たちを見てボロボロと泣いていた緒方みつえ。
「樹木が伐られてしまう、と聞いた時、すごくショックで。子どもたちの生活の、本当に身近なところにあった木たちを校舎の建て替えで伐ってしまうなんて。木と人間。ずっと共存してきたはずなのに。本当に悲しかった。だから、助けてもらえると聞いた時は本当に嬉しくて。教育委員会が動いてくれたと聞いて、世の中、捨てたもんじゃないな、と思いました。コロナ禍でいろんな我慢を強いられてきた子どもたちのためにも、来年の春、また桜が花を咲かせてくれるように、水やりを頑張りながら、見守っていきたいと思います」
埼玉県本庄市で活動している濱田和之さんも現場の後に駆けつけてくださいました。
「今回、木にとっても大変な作業だったと思います。この時期に、こんなに枝を伐られて、引っ越しをするなんて。だから、そこに凄く気を遣いましたね。木にとっての負担をできるだけ少なくするように」
濱田さんは2014年夏、さくら通りの桜が全伐採される計画が浮上した時に、「親方」の押田大助さんと一緒に国立に来てくださった造園家さんでもあります。
押田さんもやはり現場の後に駆けつけてくださって、率直で、そして温かい言葉をくださいました。
「この時期にこういう移植は普通はやらないんです。この時期の桜の移植は論外。造園業界では、この木はこの時期、と移植の時期が決まっていて、通常はその中で時間をかけて行われる。だからこそ、これが成功したら画期的だな、楽しいな、とワクワクしながらやりました(笑)。いろんな時期に掘れるというのは造園の世界では革命。それもあって、職人さんにも加わってほしくて、造園組合に呼びかけたら、真っ先に応えてくれたのが黒沢さんでした。会ったこともなかったけれど(笑)」
そして、共同代表のひとり、中谷純江から。
「国連で、PKO活動というのをやって来て、いろいろな紛争地域を見て来ました。スーダン、南スーダンが担当だったんですが、本当に世界って、脆いんですよ。壊れるときはあっという間。今までだったら、国連でやれば、とか、政府でやれば(なんとかなる)、とか言ってきたけれど、もう、そういうレベルじゃない。世界は分岐点に来ていると、ありありと感じました。
これから先、この世界はどうなっていくんだろう。ずっと考えていました。その時、いま、自分がいるところで、地域の自然の中で、足元からやり直すしかないだろう、と。もう一度人と人、人と自然の関係を結び直すしかない、と思いました。
昨年、ご縁があって一橋大学で教えることになり、休職して日本に帰ってきました。2週間前まで、まあ一本でも残せればって言っていた木々が、わずか4日間で、あの校庭に新しい森に生まれ変わった。ああ、こうやって世界って変わっていくんだ。世界が変わる瞬間を見た、と思いました。この新しい森がこの先100年先も続く森でありますように。皆様、お力添えをお願いいたします」
最後に、押田さんが仰ってくださった言葉を忘れません。
「普通、保護者の方がお金を持つとか、考えられないんですよ。我々もできない。そういう熱意が伝わったんです。だから、来たんですよ、新しい人も。さくら通りの時もそうでしたが、国立って、そういう、女性たちの力があるんだと。さらにそれを痛感しました。
このエネルギーを無駄にしたくない。クラウドファンディングはとりあえずの中間地点かもしれないですけど、どうしても達成しなくちゃいけない。
我々は普段やっていることをやっているだけ。黒沢くんも来てくれて、こういう場に立たせてもらうということが本当にありがたいこと。こういう機会を与えてくださった保護者の方に御礼を言いたいです」
全く「労に報いる」ことができていない私たちを前に、そんな言葉をかけてくださるなんて。
申し訳なさと勿体なさを力に変えて、あと9日間、ゴールを目指して走り抜きたいと思います。