「ふとんP」で取り組んでいること【3】 ~2015年の活動報告より~
vol. 3 2016-12-26 0
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●【2】はこちら→ https://motion-gallery.net/projects/futon-toshikoshi2016/updates/14076
■3年間、プロジェクトを継続してきて
大西連:「路上の今のニーズ」に応える形で、ふとんで年越しプロジェクトを作ってきました。2013年の発足当時から意識してきたのは、既存の支援と「逆のこと」、今「できていないこと」をしよう、ということです。
「住まいがない」と言っても事情はさまざまで、医療者が大嫌いな人もいるし、野宿でも良い生活を送れている人もいます。その中で、「支援が必要だけれど、何らかの理由で相談できていない人・支援が途切れてしまった人」がふとんPにつながっている印象です。
既存の支援では合わなかった訳なので、それとは違うこと、「できていないこと」を常に模索しています。
三度の冬、プロジェクトを続けておこなったことで、相談する側の方達からも「ふとんP」が認知されてきた側面があります。
2015年の活動報告書でインタビューが紹介されている相談者Aさんは、最初はふとんPの事を「怪しいな」と思っていたけれど、次の年も相談できたことで、「ここは信頼できる」と思ったそうです。
路上で生活している方には、特にホームレス状態が長いほど、公的機関や「支援」というものに不信感を持っている方が少なくありません。
その中で、「知り合いからふとんPを教えてもらった」など、口コミも広がっているようです。
他方で、資金的・人的資源の限界から、ふとんPのような活動を通年でおこなうことは難しいです。
また、ふとんPの個室シェルターと、年明けの生活環境(施設での集団生活など)との落差は厳しくもあり、もっと多くのことができたら・・・と思うことは多々あります。
西岡誠:医療相談に応じる中で、「外で寝ること」、それ自体がいかに体を蝕むのかを実感しています。
傍目には健康に問題がなさそうな方も、循環器などに重い症状を抱えていたり。風邪などは症状がわかりやすいですが、高血圧などは後回しにされがちです。
ふとんPで出会った方には、重症の心臓疾患のある方もいました。歩くと息切れしていたのですが、ちゃんと相談したり診てもらう機会がなく、病状が放置されていたようです。
調査研究を見ても、世界中で、福祉制度が整っているといわれるスウェーデンでも、野宿生活者の寿命は短いという報告が出ています。多くの方が50~60代で亡くなっています。
このように、路上における医療ニーズは高いのですが、「じゃあ医者や看護師を増やせばいい、ではないんだな」ということが、ふとんPを3年間おこなってみてわかりました。
そうではなく、「その人のニーズや苦手なところをサポートしてくれる人」がいることで、病状は良くなるのだな、と。
路上の相談を受ける過程で開院した「ゆうりんクリニック」では、医療からソーシャルワークにつながれる、孤独にならないための支援をおこなっています。オープン・ダイアローグやSMARPPなど、新しい支援や治療を取り組んでいます。
ふとんPから引き続き関わっている方もいて、今も元気にしています。よかったなと思っています。
大西:路上生活は過酷なので、健康面が二の次・三の次になってしまうというのは、本当にそうです。
体の具合がとても悪いのに、過去の経験から行政に対する不信感が強く、ふとんPで色々と説得したが、継続的な支援につながらなかった方もいます。
でも裏を返せば、その人は以前、公的な支援制度につながっていたんです。その時に丁寧な支援ができていれば、もっと違う人生になっていたかもしれません。
同じような嫌な思いをする事がなくなるよう、引き続き提言もしていかなければと思っています。
■2016年の冬に向けて
大西:2016年の今年、路上を取りまく環境は、政策的にも厳しい状況にあります。
2017年に「ホームレス自立支援法」は期限を迎え、生活困窮者自立支援法に統合されます。これによって、ホームレス状態の実態調査、計画策定、予算措置を義務付けている法的根拠が失われるため、影響は大きいです。
そして現実には、「ホームレス状態」は多様化しています。公園や路上で暮らす人だけでなく、ネットカフェやファーストフード店で過ごしている人、知人宅や会社の寮などを転々としている人、施設などに留まっている人など、状況はさまざまです。
そのような中、先月11月、東京都の明治公園で生活していた方達が追い出されようとしていたところ、別の都立公園に移って住み続けられるよう、都が措置をおこなった、という事がありました。報道もされたので、目にした方もいらっしゃるかもしれません。
こういった時、都庁の人は、路上で寝ている人それぞれの健康状態や事情を知りませんが、支援団体や地域の人々は知っています。一人ひとりの暮らしが守られるよう、可能なところで協力できたらとも思っています。