9月7日 『Play by the Rules? (ルールに従って遊ぶ?)』WSレポート!
vol. 10 2014-09-20 0
こんにちは。ディスロケイト、ボランティアメンバーのさいとうです。
本日は遅ればせながら、9月7日に開催された、『Play by the Rules? (ルールに従って遊ぶ?)』ワークショップについて、レポートさせて頂きます!
まず最初に、この『Play by the Rules? (ルールに従って遊ぶ?)』ワークショップとはどんなものなのか?と、 今回のディスロケイト開催のメインテーマである『コンカレンシーズ- あなたの“通貨”やルールは何ですか?』について、少しご説明させてください。
コンカレンシーズ(Concurrencies)とは日本語で『同時並行性』と表すものですが、これは実際にどのようなことを意味するものなのでしょうか?
並行性を表す例として、『食事する哲学者の問題』というものがあります。
まず、5人の哲学者がテーブルの真ん中にある食事を分け合って食べようとしていて、テーブルに5枚の皿と5本のフォークが用意されている。
真ん中の食事は各自で取り分けるが、取り分ける時には自分の左側にあるフォークを使わなくてはならず、食事を口に運ぶ時には右側のフォークを使わなくてはいけない。
左右のフォークを同時に使用することはできず、いずれかのフォークが使われていた場合には、待たなくてはいけない。
これには、5人がいっせいに、左のフォークを手にとって右のフォークが食卓に置かれるのを待つという、危険なデッドロック状態が発生する可能性があり、問題はどのように行動の規律を設定すれば、それぞれの哲学者が円滑に食事を続けられるか、にあります。
さて、このことを私たちの日常生活に当てはめてみましょう。
私たちは普段、商品をお金と交換する、経済活動の中で生活しています。
『食事する哲学者の問題』でいうところの、食事は流通する商品、食事を取り分けるためのフォークは通貨に置き換えられます。
そして、哲学者の食事が、等価交換と一定の規則の下に行われているように、私たちの経済活動にも社会的なルールが存在します。でなければ哲学者は飢え、私たちの経済ひいては社会の流れも、淀みなく循環することはできません。
そして、この社会における等価交換とは、通貨においてのみ行われるものではありません。
私たちは情報や、個人の価値観など様々なものを、他者とのコミュニケーションを通じ交換しています。いわば、この個人の所有する価値そのものが、コミュニティにおける『社会的通貨』である、と言えます。
このワークショップでは、この『社会的通貨』の流通における規則に焦点を置き、日常生活でみられる決まり事を探り、私たち独自の視点を経た『新たなコミュニティ・ルール』の構築がゴールとなっています。
さて、前置きが大変長くなりましたが、初回の第一回は、まずディスロケイトの本拠地である西荻窪において、どのような社会的ルールが存在しているか、に迫ります。
皆さんも普段の生活で、このような看板を目にしたことはないでしょうか?
私たちのコミュニティには、『安心・安全なまちづくり』を目指して、多くの規制がなされています。
これは、社会的な『循環』が円滑に行われるためとされていますが、果たしてこのような規制は、私たちにどのような影響を与え、またどのような制限をもたらしているのか?
今回のゲストアーティストであるJay Kohさんは、このような政府等により定められている公共の規制をパブリック・トランスクリプトと呼び、その対極である、個人によってもたらされたルールをプライベート・トランスクリプトであるとし、このプライベート・トランスクリプト(個人ルール)こそが、今回私たちの目指す『新たなコミュニティ・ルール』の基盤となるものです。
Jay kohさんは、パブリック・トランスクリプトは、私たちの意識や行動に多かれ少なかれ影響を及ぼしている、と言います。このような『命令』は私たちがその存在を認識している、いないに関わらず潜在意識に働きかけるのだそうです。
たとえば、幼少期に「○○をするな」と書いた看板を見たとして、後年それにより、私たちの行動が無意識に制限される、というようなことです。いわばそれは、好むと好まざるとに関わらず、何者かにより支配され、私たち個人の自由を制限され脅かされる、ということに他なりません。
この他、『安全・安心な街づくり』の一環として、西荻窪に限らず住宅地の多くに防犯カメラや交番が設置されている、と本プロジェクトのキュレーターである、エマさんは言います。
一見、これらは私たちの行動を見守っているように見える一方で、私たちの行動を『見張って』もいるのではないだろうか?そのような監視下にあることで、私たちにある種の緊張感をもたらしているのではないか?と、疑問を投げかけます。
また、近隣の小学校や幼稚園では『危険マップ』と呼ばれる、西荻窪周辺の立入り禁止区域を示した地図を配布しているそうです。しかし、これには立入りを制限する理由は書かれておらず、配布時に説明されることもほとんどない為、多くは「なんだかよくわからないけど、行ってはいけない場所」と認識されているそうです。
ここで私たちは20分ほど西荻窪を歩き、それぞれ、どのような看板が街に設置してあるかを写真に収めることにしました。普段何気なく通り過ぎている場所に、いかに多くの看板が設置してあるか、驚かされます。
また、それらの多くは私たちに行動の制限や禁止を促すものであり、そこにある種の緊張感を感じることは否定できません。そこで、今回はこのワークショップの場を通じて、よりポジティブな働きかけのできる看板を作成することになりました。
Jay Kohさんはコミュニティ全体を覆う、この緊迫感をほぐす必要があると言います。
そこで、大きな穴の開いた箱のようなものを作り、その中に顔を入れて皆が好きに叫んだりして、フラストレーションからの解放ができるようにしたい!とのこと。(王様の耳はロバの耳!みたいですね。)このようなストレス・マネジメントの例としてフィンランドのとある会社では、サンドバックを導入して従業員が好きにこれを叩くなど、ストレス解消を行うことを積極的に推奨している、ともおっしゃっていました。
この他、行動の制限を求める看板(『No看板』)の対抗策として、たくさんの『してもいいこと』を書いた看板(『Yes看板』)の案など。
No Smoking, No Pets, No Garbage(『たばこ禁止!ペット禁止!ポイ捨て禁止!』)の後で
But Yes Dancing, Yes Chatting, Yes Eating, Yes Laughing (『でも、ダンスしてもいいよ、お話ししてもいいよ、食べてもいいよ、笑ってもいいよ』)と続きます。
エマさんからは「これで街中を覆ったら楽しいね!」とコメント。確かにこれが街中に張り巡らされていたら、それだけでポジティブなフィーリングを感じてしまいそうです。
ちなみに私のは…いろんな笑顔の看板を作り、道行く人はこれを見たら同じ表情をしなくてはいけない、というものです。笑顔は5分間することで、心理的にも大きな働きかけをするそうなのですが、これによってポジティブなエナジーを創造できたら!Jay Kohさんからは「この看板にそういった心理学的な働きがあるっていう説明文とか、そういうことを教えてくれる連絡先とか、書いてあるとより効果的かも!」というコメント。なるほど!
この他、地域コミュニケーションを促すため、公園に『座ったら隣の人と話さなくてはいけないベンチ』を設置したり、先に出ていた『危険マップ』で危険とされている場所が本当に危険なのか、検証し新たに独自のマップを作る、地域のWifiマップを作るなど、様々な案が飛び出しました。
そして、次回のワークショップでは、それぞれこの看板を作成して西荻窪の街に実際に設置しにいきます!
さいとう