ミニシアター・エイドと#SAVE THE CINEMAの成果進捗
vol. 9 2020-04-16 0
みなさま、こんばんは。
少しご無沙汰してしまいましたが、この数日も怒涛のように過ぎております。
4/13に行われた「#MiniTheaterAID」ミニシアター・エイド基金 × DOMMUNE キックオフイベント無観客記者会見は、全国の劇場支配人のひとりとして私も参加させていただきましたが、他の劇場のみなさんの切実な実情とそれを語る声を聴きながら、現在休館しているところもあれば、出町座のように営業を続けているところもあり、様々ではあるけれども気持ちは本当に同じだなと改めて感じた時間でした。賛同する映画人として出席された渡辺真起子さんは、最初に声をつまらせながら、ご自身の居場所だったのが小さな映画館であったことを話してくれ、同じく出席された斎藤工さんは、まだ声をあげられていない、この流れに乗り切れていない映画館のことを気にかけてくださったことが、私としてはとても印象的でした。私は営業中の出町座の受付の中から現状をお伝えさせていただきました(なので出席者で自分ひとりだけマスク付けていた)。近々配信のアーカイブも公開されるようなので、見逃した方はぜひその機会をお待ち下さい。
そのミニシアター・エイド基金、本日先ほど(4/15の22時)、わずか3日間にして9000名、1億円以上のご支援が集まっています。予想を大きく上回る皆さまのご賛同に、わたしたちもとても勇気づけられています。人と直接会えない、交われない状況は、心細さを生み出します。また、先の見えない状況は不安を増加させます。ウチはまだですが、ひとたび休館してしまうと、本当にその感覚が押し寄せてくるのだろうと思います。そうしたなかで、この驚くべき勢いは、再起する力を与えてくださいます。まだまだ先は長いですが、コロナ禍後にあらたな世界を迎え、わたしも各地の劇場を訪れたいと強く思っています。
明けて4/14は、#SaveTheCinemaの署名活動が9日間で一旦の区切りを迎え、本日4/15に、6万6828筆の署名と要望書を内閣府、経産省、厚労省、文化庁に提出、諏訪敦彦監督と有志の皆さんがインターネット記者会見を行いました。その様子が書かれた記事です。
ミニシアター救済署名6万6000筆を4省庁に提出(日刊スポーツ記事)
#SaveTheCinema 「ミニシアターを救えプロジェクト」の呼びかけ人らと、逢坂政調会長と打越参院議員らが支援を求め国に要望書を提出(立憲民主党公式サイト ニュース)
*井上淳一監督が『止められるか、俺たちを』Tシャツ着ている…!
「#SaveTheCinema」記者会見。6万超の署名提出を報告(CINRA.NET記事)
近年ものすごい勢いで自作を放ち続ける白石和彌監督から、ご自身の新作制作が止まっていることも話されました。これもめちゃくちゃ切実で、映画制作、映画配給、そして各国に映画の売買をする場である国際マーケット(主に国際映画祭に付随して開かれる)も大きなダメージを受けていて、感染症拡大状況が収束した後も、現状の余波は数年以上影響を被るし、一度止まった映画制作はおそらくすべてが再開はできません。いろいろな問題が継続して起こっていくことを示しています。そうしたことに向けても相対していかねばならないということです。ただ、この署名提出は大きな一歩です。実はこれまで、日本の映画業界(特にミニシアター等のより文化的機能を果たしている各所)は自主的に文化的意義のある施策を行ってきた背景があり、ある意味では自主独立し豊かな文化状況を維持・発展させてきたということはありますが、それゆえに国や自治体との結びつきや情報共有が薄く(他の多くの国と明らかに異なる映画文化の成り立ち)、今回のような状況(公的支援の得られにくさ、政府や各省庁からの見えにくさ)を生み出しているということはあると思います。その意味で、今回を基点にして、日本における映画文化を民官でどうやってイチから築いていけるかの議論、足場形成がなされていくことを願っています。様々な他国の例をみつつ、これからの日本で公的に映画文化を支える機能は何なのか、一般の国民・市民のみなさんも含め、考え、発展させていくチャンスだと思います。
そして4/14の夜はこちらにも出させていただきました。
日本仕事百科
しごとバー オンラインイベント
ミニシアターを守らナイト
*こちらはアーカイブが上記リンク先で見れますので、お時間あればぜひ。
昨年、恵文社さんでのイベント「3BOOKS」にお声がけ頂いたご縁で、日本仕事百科のナカムラケンタさんにまたまたお呼ばれして。「ミニシアター・エイド基金」を深田晃司監督、濱口竜介監督と共に発起人として立ち上げた大高健志さん(Motion Gallery代表)、そしてポレポレ東中野支配人の大槻さんとご一緒に。大高さんとは前夜のDOMMUNEでもご一緒でしたが、今回はそれぞれドリンク片手によりフランクに語り合うという感じ。大槻さんは現在休館中のポレポレ東中野場内客席から参加されてました。「これまでもずっと一緒にやってきた劇場スタッフとあらゆることを一緒に考えて一緒にやって、ということが、今こういう状況で、今まで以上に重要と感じてます(大意)」と言うお話が印象的でした。それは本当にそうだな、という実感がわたしにもあります。かだルーティンで働けばよいという状況ではなく(もともとそうじゃないですが)、出勤の行き来も大きなストレスがかかったり、この先の雇用がどうなるかもわからない状態で、それでも粘り強くその時にすべきことを考えながら、現場対応し続けている出町座のスタッフにも、本当に感謝していますし、何をやるにも、お互いに声掛けをしたり、今まで以上に間違いがないか、意識的にスタッフ間で考えることが多くなっている現状があります。多くの劇場スタッフさんが、辛抱強く現状を耐えているだろうことも想像します。ポレポレ東中野さんは特に長年ずっと一緒にやってきたスタッフさんたちのチームワークで様々な展開を打ち出す実行力が強い劇場ですし、大槻さんのこの発言はとても重みのあるものでした。また、「ポスト・コロナの展開について」という話題もありましたが、これは時間がもっとあったらいろいろ話せたかなと思います。今だから可能性の話はどんどんやるべきだと思いますし、別々に考えている人が意見を交わらせることで何か新しいことが生まれる可能性も出てくる。わたしもそういう人の話をどんどん聞きたいですし。
またもし、そういう機会があれば…。
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さて、そして出町座は明日も営業です。
カフェ「出町座のソコ」は不定休になって、今日(4/15)はおやすみでした。でもカウンターにテイクアウト商品(お菓子やドライフルーツティーバッグ等)が並んでいて、気軽にチョイスして買って帰られる方もいらっしゃいました。
書店「CAVABOOKS」はレジが映画と同じなので、出町座が開けば営業してます。わたしも今日、面陳棚を眺めていたら、本日発売のどえらい新刊本見つけました。吉田喜重監督の描き下ろし長編小説『贖罪』(文藝春秋社刊)。ナチス副総裁ルドルフ・ヘスを描くというから、驚いたなぁ。買って読みます。そういえば今晩、CAVABOOKSの宮迫が「アフター6ジャンクション」に出てたらしい。聴けなかったけど、本屋としてのお話をしたのかなと。
明日は高畑勲監督『ホーホケキョとなりの山田くん』最終上映です。
これはやっぱりすごい作品です。高畑監督作品の中でも技術的達成は圧倒的だと思います。でも、『おもひでぽろぽろ』にも言えることなのですが、正直、公開当時は観ているこちらが気恥ずかしくなるようなロマン主義的なテーマの前景化みたいなものに「うへぇっ」となることがあったんです。でも、今回もそれは感じつつも、びっくりしたことがありました。それは「結婚式の祝辞」です。映画の冒頭、ミヤコ蝶々はんの結婚式の祝辞がホントに長いんですよ。でもその長いミヤコ蝶々はんの祝辞(しかも相当に昭和のベタな価値観)に被せて、この映画最大のアクションシーンが超絶アニメーションで畳み掛ける。なんだこの全力で悪い冗談をフルアクションで観せ続ける悪夢展開は…!というヤバさ。でもね…これってラストへの壮大なフリなんでした。「壮大な」って書きましたが、実際は超地味です。ぜひ観てください。この地味なクライマックスはホントにすごい。そこで語られる「しゃーないなぁと呟いて、やり続けるしかない」といったセリフは、実は「出町座をなんでやろうと思ったんですか?」と聞かれるたびにワタシが答えて言ってきたことと同じ内容なんです。ということは、ワタシが過去に『ホーホケキョとなりの山田くん』を観て自分に刷り込ませていたのをすっかり忘れて、無意識に使わせて頂いていたんですね(というか無自覚にパクっていたという…すみません)。完全に人生に影響を与えられてました。自覚せずに…。
高畑監督は本作を「コタツのような映画にしたい」というイメージで作ったようです。はいはい、コタツで山田家が空を飛びますよね〜そこですよね。……でも今回ハタと気づきました。あれ?あの巨大カタツムリってコタツのファンタジー現象化じゃないかと。「え?それを言うなら、車じゃないの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、あのカタツムリは車じゃなくてコタツだと思います。巨大カタツムリが山田家と別れて孤独に海に帰っていくワンカットがあります。コタツが、家族の居場所から離れていくんです。あのワンカットのすごみ。そのことに思い至って、高畑勲というおそるべき演出家の魔術的な仕事におののいている次第です。でもこれ、ほんとにワタシの勝手な解釈ですので、皆さんもそれぞれ自由に解釈して、この傑作に触れてくださいね。
また今晩も長くなってしまいました。
すみません。
当方の【出町座未来券】CFも、ご支援が1000名さま、630万円を超えました。本当に予想外に多くの皆さまのご支援を、ありがとうございます。皆さまからの応援コメントもすべて拝見しています。未来券やお宅に届けるものを準備していきますね。
また明日からも、どうぞよろしくお願いいたします。
出町座 田中・拝