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をクラウドファンディングで実現!

「であいと表現の場」 ココルーム、釜ヶ崎芸術大学の、ピンチはチャンス!
日常から編みだす生きのびる知恵と技を釜ヶ崎から。

直接出会うことを避けなければならない世の中で、ココルーム・釜ヶ崎芸術大学は今日と未来のために新しいであい方をさがします。また仕事や住まいを失うなど、困った方と力をあわせたい。生きのびる知恵と技をこの街から発信したい。

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このプロジェクトは、目標金額3,000,000円を達成し、2020年8月12日23:59に終了しました。

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PRESENTER
Ueda Kanayo

1969年生まれ。3歳より詩作、17歳から朗読を始める。92年ゆるやかに活動を始め、01年「詩業家宣言」を行い、さまざまなワークショップメソッドを開発する。03年新世界フェスティバルゲートでココルームをたちあげ「表現と自律と仕事と社会」をテーマに幅広く活動。08年に移転し、西成区釜ヶ崎で喫茶店のふりをしながら、「釜ヶ崎芸術大学」、「ゲストハウスとカフェと庭 ココルーム」を運営する。NPO法人こえとことばとこころの部屋(ココルーム)代表。大阪市立大学研究員。著書「釜ヶ崎で表現の場をつくる喫茶店ココルーム」(フィルムアート社)。2014年度 文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞

食べるは生きる。働きと関わりあいの連なりのなかで

vol. 47 2020-07-18 0

新型コロナウイルス感染症のひろがるなか、

テーブルを囲んで、大皿料理をとりわけて食べるココルームのスタイルを

つづけるのか、どうか、をスタッフたちと話し合いました。

あらためて、2003年からつづけてきた「みんなでまかないご飯」の多層的な意味合いを

スタッフに話したところ、ことばにして、

そのうえで納得してくださった方々とテーブルを囲もう、ということになりました。

そこで、文章にまとめました。

長いので、見出しだけ、前に記します。

●お金があんまりなくても、なんとか生き延びるために

●いっしょに食べると元気になることもある

●ほぐれて語られる話は社会のニーズ

●だいたいの時間を決めているから整う日常

●食べ残しを捨てることのない仕組み

●同じテーブルで、関係はフラット

●食べた人たち、みんなで片付ける

●生存をささえ表す、そして文化として


●お金があんまりなくても、なんとか生き延びるために

ココルームはアートNPOで、補助金や委託業務、制度活用などには無縁で、運営基盤は脆弱です。そのため事業を自分たちで生み出し、運営していくのですが、商売が下手で儲かりません。そのため、給料が安いのです。都市で生きていくためには食費がかかるわけですが、飲食店を運営するなら食材をうまく使ってみんなで食べることで、食費に多くかけなくても生活できるようにしようと考えました。仕事や作業が忙しくなると食事など二の次になるのは目に見えています。健康第一として、ともかくつくってみんなで食べることにしました。となると、お客さんたちもこの時間にいっしょに食べてもらうことにしよう、と考えました。アートNPOとして場を運営していて、飲食店として繁盛店になりたいと思っていないことから、お客さんとスタッフがいっしょにご飯を食べるというスタイル「みんなでまかないご飯を食べる店」にしました。外食の味ではなく、おうちごはんの味なのは、スタッフたちが毎日食べるからです。料理をしたことのないスタッフも料理を覚えていきます。いつも同じ味にできない。こんな店も世の中にあってもいいでしょう、という考えです。家族的と言われますが、別に家族を意識しているわけではありません。どちらかというと法事的です。いろんな親戚、会ったこともないような親戚もまじっているような感じです。もちろん、おいしく食べたいので楽しくすごしたいと思っていますが、いろんな事情があって時には、味がしなくなるくらい雰囲気の厳しい状態になることも何年かに一度くらいあります。

●いっしょに食べると元気になることもある

ココルームは2003年4月の設立のその前から、その場にいる人たちといっしょにご飯を食べてきました。準備期間中から炊飯器とカセットコンロを持ち込み、作業に参加してくれた人たちとご飯をつくって食べました。それは、わたしの個人的な経験—1980年代後半から京大西部講堂の裏で出演者も技術者もお手伝いの人たちもみんなで、まかないご飯を食べた体験が下敷きとなっています。ご飯を食べ終えた本番直前、全員を前にして主催者が「ええ塩梅でやろうな」と話してくれたことが忘れられません。ココルーム準備期間中、当時ひきこもりがちだった若者が手伝いにきてくれ、数週間すごしました。その若者がすこしづつ元気になっていくことに気づきました。体を動かしたり、役割があったりすることも元気になっていく要素だったかももしれません。みんなでご飯を食べる時、彼は一人のメンバーとして認められた感覚を感じとったのではないでしょうか。働きあい、関わりあってのご飯はひときわ美味しく、人を成長させてくれます。

●だいたいの時間を決めているから整う日常

これまでココルームの業務形態によって、ご飯の時間は変わってきましたが、しょっちゅう変わるわけではありません。いまは、12:00昼ごはん、18:00夕ご飯です。いつも即興的にいろんなことが起こるココルームではご飯の時間が決まっていることで日常が整っていると思うのです。それに、お客さんにも、時間を決めているから来てもらいやすいでしょう。取り置きや団体にも対応しますが、基本はこの時間。忙しくても、ご飯をぬいたりしないようにしています。

●ほぐれて語られる話は社会のニーズ

このご飯の時間に、お客さんを放っていくわけにはいきません。最近どうですか、と話を聞きます。聞いたことが頭にひっかかっていて、企画をつくることもあります。そして、釜ヶ崎に拠点を移してからのご飯には、さらにさまざまな境遇の方とご飯をともにすることになります。不安定な暮らしを余儀なくされた人、派遣切りやリストラで仕事を失った人、家庭崩壊した人。ご飯を食べながら、みんなでご飯を食べていることに泣き出した人も何人もいます。気持ちがほぐれるのか、いろんな話を聞きました。語られるのは、まだ社会のなかではことばとして現れていないことが多いのです。それは事業を考える上でとても大事な視点となり、このご飯の時間は社会のニーズを知る機会でもあったのです。本人にとっては、その人の悩みかもしれませんが、何人からも似たような話を聞くこともあります。話を聞いてしまったから、ココルームとして何かできることはあるか、を考えます。専門家を招いてお話し会を開いたり、悩みを持つ者同士が語らいあう場をつくることもあります。そして、学んでいくと、また壁にあたり、気づくことがあります。食卓は、あたらしい視点や視座を得る機会でもあります。

●食べ残しを捨てることのない仕組み

ココルームのご飯は取り箸をつけた大皿料理がほとんどです。その人の体調やお腹の具合、宗教、アレルギーなどいろいろあるなかで、それぞれが自分の食べる量を調節して食べます。ご飯の量なども、事前に「少なめに」と伝えてもらえば少なめに盛ります。そうして一人ひとりの食べ残しを捨てることのないようにしています。大皿に残したものは次の食卓にあがります。無理して食べる必要もなく、大食い大会でもなく、バイキングでもなく、ある分をその場のみんなで、ええ塩梅にわけあって食べます。ゴミ箱に食べ残しを捨てることに抵抗のあった飲食店勤務の経験から、この仕組みをつづけています。

●同じテーブルで、関係はフラット

みんなで囲む食卓では、あまり自己紹介などしません。聞かれれば、それぞれに自己紹介をしますが、毎日のことなので、やっぱりいちいちしないことのほうが多いです。そして、関係はとてもフラットです。お客さんとスタッフ、支援者と被支援者というような関係もぼやけて、「大根の炊いたん、とってください」、「ありがとうございます」となります。

●食べた人たち、みんなで片付ける

ココルームの食卓はわりと時間的にはあっけなく終わります。もっとゆっくりお話ししたい、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ゆっくり食べたい方を残して、みんなが片付けはじめ、だいたい片付いたらコーヒーをいれます。運がよければ果物や甘いものがあり、そこでくつろいでお話が再開することもあります。

お客さんに片付けを手伝ってもらうスタイルはココルーム初期からです。ニートの若者もよく来てくれていて、いろんな人から「ありがとう」を伝える機会があるほうがいいなあと思ったことからキッチンに入ってもらうようになりました。手伝ってくれたら、こちらもこころから「ありがとう」を言えます。時には、ココルームのスタッフの人数が少なすぎて手伝ってもらわないと、ココルームがまわらないような時期もありました。そんな時は「参加型カフェです。手伝ってください」と大きく貼り紙をしました。そしたらそれを見たお客さんが率先して皿洗いをしてくれます。本当に助かります。ありがとうございます、とこころから伝えます。プロ意識に欠けると言われればそうなんですが、こちらが無理して、やらなくちゃと抱え込んでしんどくなるより、その気持ちから降りて、できることをしてもらって感謝の気持ちを伝える、というのもいいでしょう。でも、あまりに不器用なお客さんが手伝いたい、と申し出てくれても、スタッフが断っている場合もあり、万事が絵に描いたようにすすむわけでもありません。

●恩送りチケットのありがたさと難しさ

ココルームには困窮された人がいらっしゃることが多くあります。支援団体から紹介されてくる方も。お金はなくても、お腹は空くので、誰かが先払いしてくださった恩送りチケットでコーヒーや紅茶、ご飯を食べていただけます。世の中の親切な方の気持ちに感謝しています。最近の話です。シェルター暮らし(地域内にある無料で泊まれる「あいりん臨時夜間緊急避難所」)が数年に及び、仕事に就く気持ちもなく、炊き出しに並ぶのが嫌になり、カンパンなどでしのいで生きている30歳代の若者が歯の検診のさい歯科衛生士にココルームを紹介され、気乗りしなかったけど、誘われつづけて根負けしてやってきて、ときどき恩送りチケットでご飯を食べるようになりました。仕事しなさいよ、というような就労指導など全くしません。世間話やこれまでのことを語りだしたら質問をはさみ聞いている程度です。でも1ヶ月で、彼の気持ちが変わりはじめ、2ヶ月目には何年間も放置していた身分証を作り直そうと動きだし、就職のための面接を受けることになりました。その人自身のなかに変わりたい気持ちがあったのだと思いますが、みんなで同じテーブルでご飯を食べて、いろんな人と話し合っていくことで、その変化はもたらされたようです。

一方、恩送りチケットはその運用に難しさも感じています。たとえば、お金の使い方が荒っぽくて生活保護の支給されたお金がなくなると、恩送りチケットをあてにいらっしゃる場合などです。支給された時に、まかないご飯の回数券チケットを本人が買ってくれれば、お金がなくなっても食べてもらえます。数ヶ月同じことを繰り返された方にはこのようにお伝えすることになります。

●生存をささえ表す、そして文化として

この街には炊き出しやフードバンクなど、お金がなくてもなんとか生きていける仕組みがたくさんあります。そのなかで、手作りのご飯をテーブルを囲んでいろんな人たちといっしょに食べる、というのは、ずいぶん変わったかたちかもしれません。特権的とみえるかもしれませんが、誰であろうと食べずには生きていけません。ココルームのみんなで食べるご飯の考え方は「表現」なのではないかと思うのです。同時に、ココルームにとって食べることは「生存」でもあります。「生存と表現」を同時に、毎日の生活のなかで実践していたら、いつかそれは「文化」になるのではないか。ココルームのみんなで食べるまかないご飯のスタイルはその道のりの途中にあると考えます。

新型コロナウイルス感染症により、大皿料理を取り箸でわけあうのはよくないことも充分承知しています。この間、スタッフたちと「みんなでまなかないご飯」を貫くかどうか、話し合いました。あらためて上記のようなことを話すと、このスタイルをつづけてみようよ、となりました。

これからは、テーブルに対し椅子の席数をすこし減らし、ゆとりを持つようにしました。でも、食品ロスを避けるため食べ残しをしないためには、一人盛りでは成立しなさそうです。このようにココルームのまかないご飯について、ことばにして、賛同いただいた方にいっしょに食べていただくことにしましょう

基礎疾患や持病のある方、あるいは同居の方にそうした方がいらっしゃる方はご心配でしょう。それでも、ココルームで食べようということで、一人盛りをご要望であれば、できる範囲になりますが、その用意もいたしますので、事前にお伝えください。用意の前に食べられないものをお伝えください。食べる前にお膳を見て、食べられないものがあればさきに取り出してください。

ささやかな実践はあまりにささやかすぎて、お伝えできていなかったのですが、この機会に書き出してみました。

2020年7月17日 上田假奈代

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