ブロークンの景色《連続する細胞の風景》
vol. 3 2016-11-04 0
私は写真を左右対称にするのが非常に好きです。
世界の閉塞感が取り払われ、広がりの想像しやすい景色に見えるから。
この写真を撮ったのは、
今回の個展「ブロークン・トーキョー」の作品制作に向けて、
集合住宅の写真を撮りに行った時のこと。
今回のメインビジュアルにも使った、
中銀カプセルタワービルを含んだ作品にも、多くの集合住宅の画像をコラージュとして使用しています。
こんな感じで、
撮影した集合住宅の写真をパーツごとに分解して、コラージュにしています。
この5倍の量の素材を使用しているのですが、一部だけ公開。
図鑑みたいで、
ちょっと楽しくないですか?
並ぶ塔。
そういえば私の知人にも団地マニアがいますが、
個展にいらしたお客様の知人には「給水塔マニア」がいるそうで、
世の中には多様な好みがあるのだなあと感心します。
私はそういう何かしらのマニアの方とお話しするのが大好きです。
こちらは
中銀カプセルタワーの素材。
奇妙奇天烈さがありながら、
やはり秩序的で美しいです。
さて。
都内の集合住宅の撮影に向かったのは2016年7月1日。
暑さが本格的になる前の夏の日でした。
江東区、豊洲方面へ向かいます。
工事中の集合住宅が大変多く見受けられました。
私が一部参考にした写真集、大山 顕 著作「団地の見究」(2008年) に載っている写真とは異なる色に塗り替えられているものが多かった。
細胞のように連続する部屋が美しいです。
河川を挟んで手前側は古い団地が広がり、
向こう側には新しい様相の集合住宅。
奥にはタワーマンションも見えます。
異なる生活水準の集合住宅が同じ区域に密集している景観は、妙なアンバランスさがあって少し非現実的。
こちらも一部工事中。
こういうひび割れた看板が堪らないですね。
年季を感じます。
張り出したエレベーター塔が美しい。
さて、
集合住宅の写真の一部をご紹介しましたが、
この秩序的なキューブが経年変化してゆくような良さをわかっていただけましたでしょうか?
これらは、
私が作品とは関係なく制作してみた中銀カプセルタワーのコラージュですが、
こうして見ていると、
中銀カプセルタワーが現在めずらしいものであるからこそ個性的で奇妙な感じがするのであって、
もしメタボリズム建築がメジャーな集合住宅になっていたとしたら、この形状から個性的な印象はあまり受けないのではないか...と思います。
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さて、
個展は会期終了いたしましたが、
ひきつづき会場で展示した作品のデジタルリトグラフをクラウドファンディングにてお求めいただけます。
こちらの2作品です。
作品名: Ideal world [Massive bird] |
石井七歩 / 2016年 / 紙にインクペン / 297×420mm |
《コンセプト》 建築と有機的構造物のシリーズは、2011年から制作しつづけています。 四角い箱にアーチ状の穴が空いたこの形は、人類が生き、住処をつくる際の最もプリミティブな形状です。 幾重にも走る有機的な線の構造は、仏教概念の「縁」のような関係性を想起させます。 世界の全体観を表現した、曼荼羅のような作品です。 |
作品名: The 922th Avenue [ Nakagin capsule tower edition ] |
石井七歩 / 2016年 / インクジェットプリント、インクペン / 297×420mm |
《コンセプト》 中銀カプセルタワーの特徴的な外観がいくつも聳え、海に浮く孤島のような様相を呈しています。 この巨大な島は、新陳代謝しながら生命活動を行う「建築生物」です。 人類が創る都市全体が、もはや生物のように意思を持ちはじめているように思える。今日私たちが暮らす大都市のダイナミックな呼吸が表現された作品です。 |
もしお気に召したものがございましたら、
ぜひお手にとっていただけますと嬉しいです。
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私は今、
次にどんな作品を制作するか?ということを考えています。
やはり東京の街並みを引用し、コラージュ的なドローイングを制作する予定です。
また皆様に見ていただけたら嬉しいです!
2016年11月4日 石井七歩より。