【応援メッセージ】元京都大学原子炉実験所助教・小出裕章さん
vol. 15 2019-01-28 0
もやい出展作家の矢成から元京都大学原子炉実験所助教・小出裕章さんをご紹介させていただきます。
小出裕章さんは、18歳の頃より原子力の平和利用を志し、原子力工学を学ばれていましたが、21歳のときにその危険性に気づかれてからは一貫して、原子力の廃絶を唱えられてきました。
2011年3月に福島で起きた原発事故は未だ収束せず、今後、100年以上「原子力緊急事態宣言下」にあり続ける現状について原子力の専門家として心を痛めておられます。常に放射線被害者の側に立ち、執筆、講演、メディア等で活動されて来られました。
2015年3月に京都大学をご退職されてからも活動を継続されてきましたが、現在は一線から退かれています。
http://healing-goods.info/koide/
私の作品の黄色は、洛中洛外図の金雲のようにみられることが多くありますが、汚染プルームを可視化したものです。震災後に、原子力エネルギーの呪縛から脱却できないこの現状を絵にしたくて、小出さんのご著書で勉強させていただきました。後に、展覧会のご案内をさせていただくようになり昨年、第21回岡本太郎現代芸術賞展にお越しくださいました。
ご自身は絵を描くことが苦手だそうですが、パウル・クレーが好きな小出さんです。
応援メッセージありがとうございました。
************************************
放射能は五感に感じない
小出 裕章(元 京都大学原子炉実験所助教)
私たちはいろいろな単位を使って生活しています。長さは何㎝、何m、何kmというように測ります。重さなら何g、何kg、何トンというように量ります。放射能は「ベクレル」という単位で測ります。
ウランが核分裂すると核分裂生成物と呼ばれる放射性物質がたくさん生成されます。セシウム137はその放射性物質の一つです。
原子力を推進してきた国も電力会社も決して起きないと言っていた事故が2011年3月11日に、福島第一原子力発電所で起こりました。
国によると、その事故で大気中に放出されたセシウム137の量は1.5×10の16乗ベクレルだそうです。
大気中に放出された放射性物質はただ風に乗ってあちこちに運ばれます。北半球温帯に属する日本では、上空高い所では偏西風と呼ばれる強い西風が吹いており、フクシマ事故で大気中に放出された放射性物質の大半はその偏西風に乗って太平洋に向かって流れました。
でも、地上では北風、南風、西風の日もあり、東北地方、関東地方の広大な地域が、日本の法令を守るなら「放射線管理区域」に指定しなければいけないほど汚染されました。日本の国土に降ったセシウム137の量は大気中に放出された量の約16%、2.4×10の15乗ベクレルです。
でも、放射能などほとんど馴染みのない普通の方々にとっては、こんな単位であらわされる放射能を実感することはできないでしょう。私はずっと放射能を取り扱う仕事に従事してきましたが、その私でも「1.5×10の16乗ベクレル」「2.4×10の15乗ベクレル」という量はピンときません。
そこで、ごく普通の人でも馴染みのある重さの単位に直してみると、フクシマ事故で大気中に放出されたセシウム137の量は4.7kg、日本の国土の広大な地域を汚染したセシウム137の量はわずか750gにしかなりません。
「放射能は五感に感じられない」とよく言われます。何故そう言われるかと言えば、五感に感じられるほど放射能が身の周りにあれば、それを感じる前に人間は死んでしまうからです。
フクシマ事故で、たくさんの「もやい」が傷つけられ、失われて行きました。
「もやい」もまた目で見ることができません。五感で感じられない、目で見ることができないものに、私たちはどのように向き合うことができるのでしょう?
私自身は、ほぼ一生を原子力の場で生きてきて、芸術に関しては全くの素人です。でも、こんな時こそ、芸術の真価が問われるのだと私は思います。
「もやい展」楽しみにします。
**************************************************************************************************************
「もやい」それは、荒縄の強固な結び。3.11から8年、福島原発事故と向き合ってきたアーチスト達の個々の表現が金沢21世紀美術館で結ばれます。絵画、彫刻、写真、生花、造形、詩歌……福島の現実と命の輝きがあなたを包みます。
引き続き、シェア・ご支援のほどよろしくお願い致します!
https://motion-gallery.net/projects/2019moyai_kanazawa
★もやい展スケジュール★
場所:金沢21世紀美術館 ギャラリーA(石川県金沢市広坂)https://www.kanazawa21.jp/
日時:2019年3月5日(火)〜10日(日)
5−7日/10時~18時 8−9日/10時〜20時 10日/10時〜17時
入場料:100円(各種免除規定あり)