【応援メッセージ】劇作家&演出家・佐藤茂紀さん
vol. 38 2019-02-20 0
「言葉を紡ぐ人」
福島原発事故から2年近く私はほとんど現地へ取材に赴かなかった。
「美しい言葉」だと信じていた日本語。境が明白でない季節の移ろいが独特のその曖昧さを育み、頻発する天災で一瞬にして全てを失うことが誰にでも起こりうる国土が、その独特の無常観の背骨になった。
福島で起こったことは「人災」だ。そしてその責任は関係企業や、バックにいる国家だけではない。気づかず声もあげなかった私たちにも責任の一端は間違いなくある。
そして人災の後には「美しい言葉」の調律がぐずれ始めた。「曖昧さ」は嘘を塗り重ねるのに悪用され(そもそも原発絡みの言葉は嘘ばかりだったのだが)地に堕ちた。
原発事故は大地を奪い、人の生業を奪い、そして人のもやいを奪い、そして美しい言葉までをも奪った、、。
私は2年間ひたすら「表現」を漁った。福島からの表現を言葉を!
そこで出会ったのが「もやい展」にも出展される漫画家の大塚久さん。漫画家を志しつつもその筆を封印し郡山市の小学校の先生をされていたが、震災でその封印は解かれる。作品中の混乱するクラスの子供達のあどけない気持ちのやり取りは、大人の責任というものを却ってあぶり出す。
その大塚先生の筆の封印を解く原動力になったのが、郡山市で劇団ユニット・ラビッツを主催する劇作家&演出家、そして同級生でもある佐藤茂紀さんだった。
放射能とともに避難の選択という新たなテーゼが舞い降りてきた、震災直後の高校演劇部を舞台に繰り広げられる青春群像戯曲「この空はほんとの空ってことでいいですか?」は、佐藤さんの脚本・演出の下、あさか開成高校演劇部が演じあげ、東京公演までおこなった。
ほんとの空のもとに湧き上がった、若者たちの本当の言葉のエチュード
それを五感で感じた大塚先生は旧友佐藤さんに筆の封印を解くこと告げ同タイトルの漫画小冊子が出来上がったという経緯がある。
大塚先生はそれ以降、「奥羽行進曲」「イエローケーキにキャンドルはいかが?」で佐藤さんとタッグを組み、漫画を世に送り出している。また年に1冊ペースの漫画冊子出版も今尚継続中だ。
そしてようやく昨夏に佐藤さん本人と会う機会に恵まれた。一目でわかる無骨なバイク乗りの風態とは裏腹な柔和な瞳。だがその奥には演劇人として言葉を紡ぐものとして、あのことはなかったことにはできないという熱い決意の炎がくすぶることなく燃え続けているようだった。
言葉を紡ぐ人がここにもいた。
佐藤茂紀さん、応援メッセージありがとうございます!
(中筋純)
佐藤さん率いる演劇部が東京公演に至るまでを密着ルポした映像です。
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あれから8年目の春がやってきます。
すっかり震災やフクシマを語る人も少なくなり、表現活動の風化も進みつつあると感じます。 頼みの語り部として「当事者」もいつしか先細り、摩滅していくことは火を見るより明らかです。
そこで思うのです、より多くの表現者に描き続けて欲しいと。
そんなことを思っていた矢先に出会った「もやい展」。
どうか表現者たちの思いが多くの方の心に届きますように。そしてその思いがしっかりともやい結びでつながっていきますように。 それから、私が戯曲として書いた「この空はほんとの空ってことでいいですか?」を我が友、大塚久が漫画とした作品も取り上げていただき心から感謝いたします。
劇団ユニット・ラビッツ主宰 佐藤茂紀
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「もやい」それは、荒縄の強固な結び。3.11から8年、福島原発事故と向き合ってきたアーチスト達の個々の表現が金沢21世紀美術館で結ばれます。絵画、彫刻、写真、生花、造形、詩歌……福島の現実と命の輝きがあなたを包みます。
一人でも多くの方にこのプロジェクトを知っていただくために、引き続きのご支援・そして周りの方への拡散を、何卒よろしくお願いいたします。
https://motion-gallery.net/projects/2019moyai_kanazawa
★もやい展スケジュール★
場所:金沢21世紀美術館 ギャラリーA(石川県金沢市広坂)https://www.kanazawa21.jp/
日時:2019年3月5日(火)〜10日(日)
5−7日/10時~18時 8−9日/10時〜20時 10日/10時〜17時
入場料:100円(各種免除規定あり)