【応援メッセージ】作家・吉田邦吉さん
vol. 18 2019-02-04 0
発信し続けること
福島県双葉郡大熊町。
農家の納屋のひさしの下にはうず高く積み上げられたおびただしい数の書物。哲学、法学、郷土の本、、、知の結晶が風雨にさらされしばらくすると黒い土嚢袋行きとなる運命らしい。
「この本たちも廃棄物というらしい。失礼な話じゃないか!」
ここで農業を営みながら学習塾を経営され、震災後は会津若松に避難。福島発の総合雑誌「WELTGEIST FUKUSHIMA」を立ち上げた吉田邦吉さんとの出会いは、震災後のインターネット上。彼の書く文に惹かれて交流が始まった。
「僕らにとっての一時帰宅とは、避難先への再避難を意味するんですよ」
編集に携わった雑誌「ダークツーリズムジャパン」創刊号で吉田さんに同行ロケを依頼した。ジャングルのように茂った父親が丹精込めた梨畑を背に、吐き出される重い一言一言は、東京からの取材者という周辺性をまざまざと浮き彫りにする。
それ以来私はフレコンバッグを指す便宜的に使われる「廃棄物」という言葉を使うのをためらうようになった。フレコンバッグの漆黒の世界が透けて見えるようになった。その中はこの土地の歴史や記憶そのものが入っている、、。言葉というものをもう一度考えるきっかけとなった。
時には罵詈雑言の応酬ともなる原発事故後に湧き上がった様々な議論。双方の意見を熟考しながら当事者ならではの視座で言葉を発し、web、紙媒体で意見を発信し福島がたどった「震災後」を「文字」で残し続けている吉田さんにはいつもインスパイアされています。
2018年5月。
久しぶりに同行させてもらった一時帰宅。母屋の南面に広がっていた梨畑は除染のため全て伐採され広い空が見える。
父と息子の梨畑は、記憶の中の梨畑になってしまった。
この度は応援メッセージ、どうもありがとう!
(中筋)
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ともにすること
吉田邦吉
ひとは、一人で生きていない。
考えてみれば、必ず親が居る。さかのぼっていくと巨大な系統図の一隅に誰もが居る。縄文時代もそうだっただろう。熊や野犬から身を守るに一人より集団が良く、家を一人で建てることも至難だ。昔の暮らしは何一つとっても手間がかかるものだから、各自が互いの仕事に顔が見えて尊重もしやすかったに違いない。
もやいとは、ともに仕事をしたり、協力することで、より大きなことを成し遂げられることを言う。
人が生きるところもやいあり。
ともにする体験あり、食事あり、遊びあり、苦労あり、心が通じ合うようになって、接しやすくなり、互いが互いの人生の一部になる。これを友達という。
すなわちこの「もやい展」は、福島の心を道行きのともにしている表現者たちが広く人々に提供する、さらなる共通体験なのである。
有難し。
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「もやい」それは、荒縄の強固な結び。3.11から8年、福島原発事故と向き合ってきたアーチスト達の個々の表現が金沢21世紀美術館で結ばれます。絵画、彫刻、写真、生花、造形、詩歌……福島の現実と命の輝きがあなたを包みます。
一人でも多くの方にこのプロジェクトを知っていただくために、引き続きのご支援・そして周りの方への拡散を、何卒よろしくお願いいたします。
https://motion-gallery.net/projects/2019moyai_kanazawa
★もやい展スケジュール★
場所:金沢21世紀美術館 ギャラリーA(石川県金沢市広坂)https://www.kanazawa21.jp/
日時:2019年3月5日(火)〜10日(日)
5−7日/10時~18時 8−9日/10時〜20時 10日/10時〜17時
入場料:100円(各種免除規定あり)