【街の先輩たち #01】元・甲州屋|梶原延郎さん
vol. 1 2023-04-25 0
製麺機を譲り受けた背景。偶然の出逢いから渡された未来へのバトン
「この製麺機、もっていかない?」
1000renをはじめるきっかけをくださったのは、そんな声をかけてくれた梶原さんでした。梶原さん一家が京島で営んできたお蕎麦屋さん「甲州屋」は、閉業後しばらくして取り壊しが決まり、かつて活躍した食器類や調理器具は次々と引き取られていきました。
しかし、製麺機だけはなかなか難しく、建物の解体時に処分するしかないと思っていたそう。
そんな時に出逢った我々に、どうして声をかけてくれたのか、どんな想いを持ってくださっているのかを伺ってきました。
製麺機を譲ってくれた方:元・甲州屋 梶原延郎さん
梶原さんと福ちゃん
ー 製麺機を譲ろうと思ってくださったきっかけを教えてください。
知り合ったのは2021年だったね。それより前から製麺機は売りに出しててさ。3年前に蕎麦屋をたたんで、道路拡張のために家を壊すことになっていたから。
で、その製麺機にも実は3万円の売値がついたの。でも運搬費が7万円もかかって、これは売主側が払わなくちゃいけない。だったらタダで持って行ってくれる人がいたら頼んだ方がいいよって言われてたの。
だからそういう人がいないか一生懸命探しててさ。そしたらね、偶然だったよ。あそこ(空き地)*でお店やってたじゃない? そこを僕が女房と散歩して通りかかったんだよね。で、「何やってんだろうな」ってのぞいてみたら福ちゃん(飲食部マネージャー)がいたの。
*2021年に京島で開催された「すみだ向島EXPO」に出展した「不死鳥喫茶」のこと。地域から出た廃材などを利活用した空間で、リニューおでんやドリンク、グッズの販売、ワークショップを行いました。
解体現場から救ってきたネクタイと空き地で行った不死鳥喫茶
そのときはネクタイがぶら下がって売られてて、聞いたら「民家を解体するときに出てきたものだ」って。「こういうのを再利用したい」っていうから、「じゃあウチも近々解体するからいらないもんいっぱい出るよ」って。
それで女房の留袖から僕のアンサンブルの着物から、蕎麦屋のときに使ってたせいろまで「なんでも持って行ってくれ」って。だってどうせ廃棄しちゃうからさ。
その前にも店先にいっぱい積んでたの。毎日のようにグラスとかどんぶりとか、漆塗りの出前用のお盆とかね。出しておくと誰かが貰っていってくれるからさ。
そうやってほとんどなくなったんだけど、それでもまだ残ってるものがあったから、大きい台車引いて、来てもらったんだよね。蕎麦屋のときに使ってた大きい寸胴とかも持って行ってくれてさ。
それで、帰り際に「製麺機はいらないよね?」って聞いたんだよ。
本当はいらないかなぁと思ってたの。結局は解体のときにお金払って鉄屑として処分するんだろうなって。でもあの製麺機で子供2人を育てたしさ、僕らも生活してきたし、生活の糧になってくれたものだからね、それを使ってもらえるなんてこれほど嬉しいことないよ。活用してもらえるんならお金払ってでも持って行ってもらいたいくらいだったの。
それにあの製麺機は一回も壊れてないからね。蕎麦屋を辞めて、店の電気も止めるからもう使わなくなるってとき、夜中の2時ごろに最後にもう一回蕎麦を打ってみたの。そしたら涙が出てきちゃってさ。「長いこと世話んなったなぁ」って。
譲り受けた製麺機
ー 甲州屋さんはどんなお蕎麦屋さんだったんですか?
普通の「まちのお蕎麦屋さん」だよ。僕の実家は日本橋の蛎殻町で、蕎麦屋の倅だったの。そこの次男坊に生まれて、学校出てすぐに出前持ちをやらされて、そのまま手伝って、30歳の時に独立しようと思って京島で場所を見つけて蕎麦屋を始めたんだよ。今から50年くらい前だね。当時はもう暖簾を出せばお客はいくらでも入ってくるくらい賑わって、職人のお客さんも多かったね。出前もたくさん来たし、すごく忙しかった。
(左)甲州屋さんの営業時代の内観 (右)看板の解体時
ー 印象深かったエピソードがあって、もらいに行ったときに梶原さんが製麺機に話しかけてたんです。「よかったなぁ」って。
覚えてないなぁ。無意識だったね。心底思ったんだろうね。本当に使ってもらえることになって嬉しかったんだよ。だってあの製麺機のおかげで僕らは生きてきたんだもん。
ー これから僕らがはじめようとしているうどん屋さんについて何かコメントをもらえたら嬉しいです!
いいと思う。これからのうどん屋さんだと思うよ。ヒットするといいね。でも、飲食関係はすごく難しいよ。コロナも完全には収束してないし、お客が来てくれるかどうかが一番大事だね。応援するし、知ってることは全て教えるからさ。やっぱりちゃんと使ってくれるっていうのはね、すっごく嬉しいよ。
梶原さんよりアドバイスと応援をいただく
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梶原さん、ありがとうございました!現在、製麺機は最終調整を終えるところで間も無く梶原さんによる製麺レクチャーをスタートの予定です。
ちょっと短いですが稼働の様子がわかる動画を貼り付けておきます!バブル期に活躍した製麺機の動く様子はなかなかにみれないと思いますので良ければご覧ください。
稼働実験前の製麺機
稼働実験の様子
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