コロナ禍の中の妖怪美術館
vol. 6 2020-12-26 0
こんにちは。著者の佐藤秀司です。
コロナ禍において、妖怪美術館は現在、オンラインやSNSなどを活用して様々な取り組みをしています。
館長の柳生忠平が妖怪「アマビエ」を描いて祀ったり、「チョーケシ!チョーケシ!」と言いながらコロナの“帳消し”を願ったり、歌を作って配信してみたり、SNSでは色々なところに妖怪をネタに絡んでみたり、、一見ふざけているようですが、本人たちは物凄く真剣にやっています。
その成果もあってか、なかばノリで作った「チョーケシのうた」がRNB南海放送ラジオの番組「宮崎ユウのラジオに帰ろう!」のエンディングテーマに採用されるなど、思いがけない面白いことが発生しています。
実は、この本を出版しようと考えたのも、コロナによる状況の変化が大きなきっかけでもありました。
では、なぜこれらの取り組みが行われ、そしてどのようにつながっているのでしょうか?
noteの記事にも書かせていただいたように、妖怪美術館の持っている「強み」は、世界でどこにもない“現代の妖怪”をテーマとした828体の作品群です。これらは、「現在進行形の歴史遺産」といえるものであり、私たちは、そのようにしていかなければならないという使命感を持って日々活動しています。
一人でも多くの人にこの作品群を観てもらえれば、古来日本人の持つ平和な精神性を拡げることができる。妖怪美術館をオープンしてから約2年間は毎日のようにスタッフにも伝えてきました。その成果は、2019年に大勢のお客様がいらっしゃることで私たちも実感することができました。外国のお客様も沢山来られました。しかしそんな矢先の2020年、新型コロナウイルスの感染が拡大しました。美術館も断続的に休館・休業を余儀なくされ、もちろん現在も海外からのお客様は全くいない状況です。
そこで「人を集める」ことができなくなった今、私たちの世界観をどのように伝えていけばよいのか悩みました。
私たちはこれについて考え、方向性を確かめ合うことができたからこそ、冒頭のアマビエやチョーケシの歌などの企画が生まれていったのです。
私が考えたコロナ禍におけるプロジェクトの方向性はこのようなものです。
これはコロナの拡大を鑑み、2020年2月頃に戦略の方向性を見直したときに作ったものです。物理的に入館せずとも、世界観に触れることができ、私たちが発展していく道筋と、目指すべき着地点をスタッフと共有しました。そこからオンラインの施策など「今できること」を企画立案していきました。
この頃から、私たちは真剣に妖怪の作品群に関わったり、心を寄せて下さる人たちとの接点を増やすことで、みんなで文化を創ることができるのではないか。と考えはじめました。逆にこれまでの「文化を消費」していた私たちのスタンスを改める機会にもなったのです。
歌や、SNSでのつながり、そしてそれによって起きる様々な出来事、これらは全て、後に振り返ったときに「文化」と呼べるものになっているのではないか、そのように思ったのです。
これはもしかしたら、コロナ禍の今だからこそできること(ある意味チャンス)なのかもしれない。そう考えました。
これらがうまくいけば、作者自身がコンテストに出品した作品や想いだけでなく、同じように出品した他の作者や作品についても想いを馳せ、愛着や愛情をもってつながれる関係性ができる。
また、作者だけでなく、それらに興味関心を持ち、クリエイティビティを愛する人たちとの関係も拡大することができる。
そしてこれを基に、能動的に新しい取り組みやアイデアを考えだしていくことができる場が醸成できるのではないか。
そこには上下関係はなく、その中では自由に発言でき、様々な活動が許される場でもあります。特徴的な得意分野を持つ人々がいて、各々のスキルを出し合って、新しい取り組みができる可能性がそこには秘められています。
このような、妖怪作品群を中心としたお互いにリスペクトしあいながらフラットにかかわりあえる共同体、すなわち「相互評価コミュニティ」こそが、私たちの目指すべき方向である、と考えています。
そしてすべての活動は、ここから脱線することのないようにだけ心がければ、あとは全て自由な発想で楽しむことを主眼としています。
今年は静かな年末になりそうですが。一日も早いコロナの終息と、皆さまがよいお年を迎えられますようご祈念申し上げます。
チョーケシ!チョーケシ!