Artrooms fair London 2019 成果報告
vol. 10 2019-01-20 0
Artrooms fair London 2019
イギリス、ロンドンで行われたアートフェアは、1/13日をもって無事に終了しました!
まず、今回のロンドン渡航で得た繋がりについて、最初に報告したいと思います。
実は、ロンドンで縁が繋がったギャラリーはフェアをみに来てくれたギャラリーではなく、フェアが始まる前にメールでコンタクトをとっていたギャラリーでした。都合がつかずフェアには来ていただけませんでしたが、Artrooms fair Londonが話のきっかけとなったこと、わたしがギャラリーに直接伺ったことが彼らの信頼を得ることに繋がったことを思うと、fair に作品を出品したこともわたしがロンドンへいったこともポジティブに働いたのだなと感じています。
縁ができたのは、
・Vessel gallery
・TOAD gallery
また、
・Fonderia Artistica Versiliese
というイタリアのブロンズ彫刻の財団とも縁ができました。
まず報告の初回は、Vessel gallery について
わたしが何十件とメールをしたなかで唯一、数時間から遅くともその日のうちに必ずお返事をくれていたギャラリーで、アポイントメントもとりやすく、とにかくいつでも好意的。アポイントは14日にとれたのでフェアのあとに伺いました。
ディレクターのAngel Monzon はもともとは家具のデザイナーをしていて、日本にも時々仕事でいくそうです。彼はWebsiteでわたしの作品をみてすぐにとても気に入ってくれていたのですが、仕事の都合がつかずにフェアに直接作品を見に来ることはできませんでした。
フェアがおわった翌日にギャラリーへいくと、彼はわたしを快く受け入れてくれて、彼のギャラリーがどんな作品を扱っていて、どんな作家と関わりがあるか、ギャラリーのこれまでの方針と、これからの展望について、ギャラリーの中を案内しながら話をしてくれました。
Vessel galleryは今年で20周年、ギャラリーをはじめた当初はガラスを専門としたギャラリーだったけれど、最近は陶芸や金工、木工の作品も扱い始めていて、取り扱い作家は50〜60歳の技術もスタイルも確立されたスペシャリストたちがほとんどなのだと。ただ、今ちょうど若い作り手をいれようとしていて、セラミックに力をいれようとしているところなのだということも教えてくれました。
わたしがもっていた自分の作品集や、今回のフェアに出品した作品の写真を彼にみせると、とても面白いと喜んでくれました。しかし一方で、わたしの作品の変化にはやはり驚いていて、「同じ人物がつくったとは思えない、君は変幻自在なひとなんだね」と笑っていました。
しばらくわたしの作品集を眺めてからAngelはわたしにこう話してくれました。
「(フェアにだしたa whaleを指差して)この作品がとてもすきだから、僕はこの展開で君のことを伝えていきたいとおもう。一人の作家のストーリーを人に語るためにはまず作品がないとならない。それも、ストーリーを語る材料にするためには同じテイストの作品が何点があることが大切なんだ。見る人にも伝わりやすい。何点もあれば、作品が協力しあってストーリーを伝えてくれるしね。」
stream / fluid 2018 h52 w11 d7 cm / Angelさんが気に入ってくれていたシリーズ。
sitta / a cradle ゆりかご w71 d58 h45 cm 2018 / このような大きな作品も好みだということでした。
stream / eternity w60 d34 h17 cm これもAngalさんは気に入ってくれましたが、「銀箔はいらないよ、真っ白のままで充分だ」と言われました。
そこで、Angelが気に入ってくれた作品がフェアでは売れなかったこと、売れなかったらイタリアのギャラリーへ送ることになっているけれど、本当はロンドンで預かってくれる場所があると嬉しいと考えていることを彼に素直に率直につたえました。
すると、
「是非そうしたい、やっぱり実物をみてからにしたいからいまから見に行ける?まだホテルにあるの?」と聞かれました
ただ実は、その段階では、作品はすでにしっかり梱包してあって、あとはFedExでイタリアのギャラリーへ送るばかりの状態になっていました。(フェアがはじまる直前にUFOFABRIKというところでの取り扱いがはじまり、売れなかったら送っていいよといわれていたので、その手配をしてしまったあとでした)
しかも、わたしはAngelに会いに行った翌日の朝ロンドンを出ることになっていました。
作品がもう梱包されていることやわたしはもうすぐ日本に帰ることを彼に伝えると、彼は今日の夕方いこうか、明日の朝いくか、諦めるかをしばらく悩んでいましたが
「じゃあ今いこう、梱包をあけよう、作品をみたいんだ、大丈夫、僕がホテルのひとにもフェアのひとにも話をするから!僕の車でホテルまでいくから先にいって待っていて!」
と、一時間後にホテルで待ち合わせることになったのです。
それでもわたしはホテルへいくまでの道中、もしAngelが作品をみて、やっぱり気に入らないとなったらどうしよう…という不安を抱えていました。その場合わたしはまた梱包を一から始めないといけなくて、しかも、梱包材料を滞在先までとりにいかなければなからなかったからです。
でも、作品をみにきたAngelは、
a whale - identity out of self-consciousness w78 d48 h46 cm
「写真でみるよりも実物ははるかにいいじゃないか!」
と、とても喜んでくれたのです。
作品に触れながら、作品がどんなプロセスで作られたのか、作品のタイトルや、作品の背景にあることをわたしに質問してくれました。ハンドビルドであることや、表面のテクスチャの作り方に強い興味を示してくれて、作品がemotionalな面をモチーフに成り立っていることにも共感をしめしてくれました。
そして、
「OK, じゃあこの作品のテイストであと大きなものいくつか作っておくってもらわなきゃね、2020年に個展も企画してみよう、作品の値段も相談しよう!(3600ポンドは低すぎるから、という理由で。)契約書もこれから準備しないとね、ゆっくり徐々に準備を進めよう!」
と、その場で作品の引き取りと、ギャラリーでのわたしの取り扱いを決めてくれたのです!
その場にいた全員が驚きに包まれて、そしてわたしと一緒に喜んでくれました。わたしはあまりにもひどく緊張していたので、一気に安堵して、思わず号泣してしまいました。
フェアのディレクター、クリスティーナもVessel galleryのことはよく知っていて、ロンドンの中でもとてもよいギャラリーだし、あなたにぴったりだと大喜び。
彼女はAngelに、わたしのローマでの展示についても話をしてくださって、今回は一つしか作品がなかったけれど、彼女のインスタレーションは本当にwonderfulでamazingたと、太鼓判をおしてくれました。
最後はわたしと、フェアとスタッフ、ホテルのスタッフみんなで協力をしてAngelの車に作品を積み込み、彼の車がみえなくなるまで見送りました。
日本では考えられない急展開、でもこれがロンドンの面白いところなのだと、ロンドンでアーティスト活動を続けている友人が教えてくれました。
素直さと粘り強さ(執念)、適度な鈍感さが大切なのだそうです。
わたしには、奇跡みたいに感じてたのですけれど、ロンドンではこれが【自然】なことなんですね。
だとしても、日本人のわたしには本当に有難いことでした。
Vessel galleryのAngelさんの温かい対応に、心から感謝します。
ところで、このやりとり、
通訳さんがいたからこそ成立したということもお伝えしなければいけません。
次回、TOAD galleryについての報告とあわせて、通訳さんの存在の有り難さについてもお話したいとおもいます。
今回はひとまずここまで。