僕もこの仕事がしたい
vol. 13 2016-01-10 0
シェムリアップ市内から車で40分ほど走った場所にあるチャースモウ小学校。
とてもパワフルで素敵な方たちが運営している
NPO法人HEROさんが建設した学校です。
2015年9月にここを訪れたとき、僕たちは最悪の状態でした。
メンバーは疲れており、車に30分ほど乗った後にスクリーンを忘れていたことに気付き、
現地に着いたら子どもたちがいない……。
校庭で遊んでいる男の子に「今日映画が来るって先生から聞いてる?」と聞くと、
「聞いてる。10時にくるって言ってたから、
みんな11時まで待ってたけど、帰っちゃったよ」
と恨めし気に言われてしまいました。
僕たちが着いたのは14時。学校にも14時と伝えていたはずだけど…
どこかで間違って10時として伝わっていたんだ…。
メンバーがスクリーンを取りに戻っている間、
残ったメンバーが村に子どもたちを呼びにいき、
30人ほどが集まってくれました。
上映開始。子どもたちは熱心に、時に笑いながら観てくれていました。
ところが発電機の故障で上映がストップしてしまいました。
復旧を試みましたが無理……。
団体始まって以来、初めての上映失敗。せっかく子どもたちが来てくれたのに……。
代表は泣き出すし、最悪の状況でした。
カンボジア人メンバーが機転を利かせて、
子どもたちを校庭に遊びに連れ出してくれました。
サッカーをしたり、空手を教えたり。
日本人メンバーは暗い気持ちで後片付けをしていました。
と、自分たちが片付けをする姿を、じーっと見つめる少年が一人。
そういえば、この子は映画上映の準備からずっと僕らのことを見ていた。
なんで遊びに行かないんだろう。
カンボジア人メンバーに通訳になってもらって彼と話をすることに。
するとその少年は言いました。
「僕もこの仕事をしてみたい」
彼は後片付けを一緒に手伝ってくれました。
映画が楽しかったと言ってくれる子どもたちは多いです。
でも、僕らの活動を一緒にやりたいと言ってくれたのは、彼が初めてでした。
初めて見るであろう、スクリーンやプロジェクター。
そこから映る大きな映像。
そして、クメール語のアニメ。何が彼の心に響いたのかはわかりません。
もしかしたら、僕らと一緒に上映準備をしている、
カンボジア人の学生たちの姿に憧れたのかもしれません。
ただわかることは、彼は新しいことを一つ知ったのだということ。
僕らが真剣に、映画上映に対して真摯に取り組む姿勢も、子どもたちには新しいものとして映るのです。
彼とは将来やろうと約束しました。
その時はアルバイトという形だろうけれど。
CATiCも彼と一緒に映画配達をするために、これからも頑張っていこう。
そして2015年12月。
リベンジ上映で訪れたチャースモウ小学校。
「また時間が間違って伝わってるかも…」
「子どもたちは30人くらいだろうな……」
という心配をよそに、230人の子どもたちが観に来てくれました。
恨めし気に「みんな帰っちゃったよ」と言っていたあの子も、
真剣に映画を観ていたあの子も、みんな来てくれました。
そして上映は大成功の大盛況!
そして、子どもたちの中に、彼がいました。
弟と楽しそうに映画を観ていました。
そして最後にやはり、この仕事をしたいと言ってくれました。
将来のメンバー記念に写真を撮らせてもらいました。
新プロジェクト名「World Theater Project」の紙を渡すと、
恥ずかしそうに微笑んでくれました。
前回は僕たちが暗い気持だったので、彼の笑顔も見れなかったのですが、
今回は笑顔がたくさん見れました。
新しい作品ができたらまた来るけれど、
もしも会えなかった時のために、メールアドレスを渡しました。
「将来メールアドレスを手に入れて、もしも気持ちが変わっていなければ、
ここに連絡してほしい」
10年後、彼はどうなっているだろう。
覚えているだろか。
彼から連絡が来るかはわからないけれど、
もしもきたら僕たちは、必ず約束を果たそう。
小さな子どもたちとの小さな約束を守っていくことが、
時に大きなことにつながるのかもしれません。
そんなことを思いました。
(また新たに片づけを手伝ってくれる子が…)