ゴリス・プアンの話
vol. 14 2019-06-18 0
ひとつの村と30年かかわると、村の変遷を見守るだけではなく、多くの生き死にも目にすることになる。
そんななか、ゴリスプアンが寝たきりになった。ゴリスと僕は大の仲良しで、村でも有名だった。
2018年、僕がラマレラを訪れたことを聞いたみんなは、「ボンが見舞いに行けば、起き上がって歩き出すんじゃないか」と冗談を飛ばしていたほどだ。
僕はゴリスの家を訪れ、25年前に撮影したゴリスのテレビ番組を見せてあげた。なんとゴリスが主人公だ。それを見て奥さんは涙を流し、ゴリスは一瞬嗚咽しそうに見えたが、こらえ、凝視するように見ていた。そして僕の手を固く握りしめた。
彼の胸中に何が去来したのだろうか。ただ、いえることは、あの頃のラマファ、ゴリスは精悍で、ユーモアに溢れ、ラマレラでも最も魅力的なくじらびとだった。
弱みを見せない気概はそのときも変わらなかった。
ゴリスはその数日後に亡くなった。
映画取材を始めたことで、思いがけなく死に目に会うことができた。これも運命だろうか。
一本のドキュメンタリーに過ぎないが、映画「くじらびと」にはさまざまな思いも詰まっている。