「踊りを撮影する」 vol.4 ー 星山カメラマン
vol. 19 2022-01-07 0
制作ノート(6)
「名付けようのない踊り」は2年以上にわたる撮影を行っており、多くのカメラマンの方に参加いただきました。
4回にわたり「踊りを撮影する」と題し、中でも多くの撮影をして下さった4人のカメラマン(池内・清久・池田・星山)の方からの寄稿文を掲載してきました。
「踊りを撮影する」vol.4 は、星山裕紀カメラマンです。
泯さんの踊りを撮影するーーどんな想いで撮影されていたのでしょうか。
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撮影 星山裕紀
田中泯さんの”場踊り”を初めて見たのがポルトガルの小さな町トレシュ・べドラシュとサンタクルスでの撮影。
その後、いろんな場所やシチュエーションで撮影を通して見させていただきました。
なかでも、サンタクルスの海岸での場踊りは圧巻。
岸壁の巨石や、陽が沈んでいく最果ての海
その前に立つ泯さんの体がしばらくすると、すうっとその一部になっていくかのような感覚に陥りました。
撮影しながらそんな風に感じたのは初めての経験でした。
あの場所での泯さんの場踊りに立ち会えたのは私を含めて7人だけ。
なんとも贅沢な時間を共有させていただきました。
あの場に居れたのは、私の人生の財産だと思っています。
あと、泯さんが自ら
「自分の踊りは撮った後に、どう切り取ってもどう繋ぎ変えても構いません」
と仰っていたのが印象的でした。
特に場踊りの場合などは、その踊りがいつ始まっていつ終わるのか分からないまま撮影をするなんていう場合が多く、
「様々な機材的な制約の中で、果たして田中泯の踊りを全て捉えられるのだろうか。」
と、事前に色々考えを巡らせ、泯さんの踊りを予測し作戦を立てたりして、毎回万全のつもりでその場に臨みます。
そして、踊りが始まる。
全てとは言わないが、予め立てた作戦はほとんど役に立たない。
動き出した田中泯という大きなうねりとの対峙。
動物というより自然に対峙するのに近い感覚であったように思います。
そこに生まれるダンスをあるときは熱狂的に、あるときは冷静に撮っていけばよいのだと。
あと、これは泯さんには大変失礼かもしれないが、
撮影中にファインダーを覗きながら、泯さんの呼吸に合わせていくうちに
自分も踊りの中に入っているような感覚になってきます。
こう手を伸ばしたいとか、こっちに歩いていきたいとか。
そういう時は、その感覚を信じてアングルを構えて待ってみたりしていました。
劇中でも語られていた、
「私とあなたの間に生まれるダンス」
撮影を通してもまさに体感させていただいていたのだなと思っています。
犬童組での撮影:中央・笑顔の星山カメラマン(右端が犬童監督、左端が清久カメラマン)
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プロフィール[撮影:星山裕紀]
1976年大阪府出身 日活芸術学院卒業
鈴木清順監督作『ピストルオペラ』で撮影助手としてキャリアをスタート
犬童監督作には「グーグーだって猫である2」『猫は抱くもの』『最高の人生の見つけ方』などに参加