「踊りを撮影する」 vol.1 ー 池内カメラマン
vol. 14 2021-12-24 0
制作ノート(3)
「名付けようのない踊り」は2年以上にわたる撮影を行っており、多くのカメラマンの方に参加いただきました。
今回から4回にわたり「踊りを撮影する」と題し、中でも多くの撮影をして下さった4人のカメラマン(池内・清久・池田・星山)の方からの寄稿文を掲載します。
「踊りを撮影する 」vol.1 は、池内義浩カメラマンです。
泯さんの踊りを撮影するーーどんな想いで撮影されていたのでしょうか。
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名付けようのない踊り
撮影 池内義浩
2017年8月下旬、ポルトガルのSanta Cruz(サンタ・クルス)で撮影は始まりました。初めて撮影したのは大西洋を望む崖の上でした。ロングから望遠レンズで撮っていたのですが、突然地面をゴロゴロと転がり始める泯さんに慌ててカメラを三脚から外して手持ちにかえ、わーっと駆け寄っていって近くでハーハー息を荒げて撮っていました。
踊りが終わった時に泯さんから、ハーハーうるさいねぇ…と言われてしまい、ぎゃふん!。これが私の場踊り初体験と相成りました。とほほ。。
泯さんが招待されたフェスティバルは、Trres Vedras(トレシュ・ヴェドラシュ)というSanta Cruz(サンタ・クルス)から車で30分位内陸に入った古い城下町で開催されることになっていて、私たちは毎日この二つの街を行ったり来たりしながら、フェスの踊りが始まるまでの間、海岸や教会、石畳の小路などいろいろな場所で場踊りを撮影していました。
毎回場所が変わると状況が変わります。その場所毎に泯さんがどう居て、それに対してカメラがどう居るのか?その間合いの変化がとても面白かったし毎回新鮮でした。慣れることは無いけど、回数を重ねるたびに撮影するのが唯の(ドキドキ)から(ドキドキ+わくわく)に変化していったのでした。
最後の頃には気分だけはセッションするミュージシャンみたいなつもりになって撮ってたかもしれません。コルトレーンについていくM・タイナーみたいな??いやいやそんなにカッコよくないですね。
それからもう一つ印象に残っている撮影は、泯さんのお宅の裏山にある薪割り場で35mmのフィルムで撮影したシーンなんですが、映画の中では後から山村浩二さんのアニメーションが追加されていて、実写とアニメが融合された不思議なシーンになっています。
実はこれはCGではないんです。プリントしたポジフィルムに山村さんがひと駒ひと駒、傷を付けていってアニメーションを完成させているんです。とても手間と時間がかかる作業ですが、完成した映像を観た時は息をのみました。短いシーンですが、これから観る方には是非注目して頂きたいです。
薪割り場で35mmフィルムで撮影している様子:レンズを覗いている池内カメラマン
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プロフィール[撮影:池内義浩]
明治大学卒業後、横浜放送映画専門学院(現・日本映画大学)に入学、同校卒業後にフリーとして主に映画撮影の現場においてキャリアを積む。近年参加作品として、「嘘を愛する女」(2018)「スタート・アップ・ガールズ」(2019)「まともじゃないのは君も一緒」(2021)「生きるとか、死ぬとか、父親とか」(2021/TV)等がある。
犬童監督とは、WOWOW「連続ドラマW」『グーグーだって猫である』(2014)『グーグーだって猫である2』(2016) 。