カロタセグのイーラーショシュとは(1)
vol. 6 2026-03-02 0
赤や青、黒、白の単色からなる太いコードのようなステッチでで紡ぎ出されるおおらかな植物模様。
カロタセグのイーラーショシュは、トランシルヴァニアを代表する刺繍となりました。
ヨーロッパではほかに例がないステッチともいわれています。
しかし、このステッチを使えばイーラーショシュになるというわけではありません。
イーラーショシュには、その土地で生まれ、育った女性たちが、生み出した図案というものがあってはじめて、
カロタセグのイーラーショシュとなりえます。
シンコー・カタリンさんは、1960年代からイーラーショシュの図案を描きはじめ、
次第にその図案に興味を持ちはじめ、村の図案職人から図案を集めるようになりました。
やがて、他の村へも足を運び、特に隣のバルコー村に住んでいたヴィンツェ・カタさんからは
膨大な量の図案を集めることができました。
カロタセグの大きいイーラーショシュと題したのは、カロタセグには小さいイーラーショシュもあったからです。
小さいイーラーショシュは、19世紀末ごろには廃れ、今の太いステッチのみが残りました。
それは、チェーンステッチで、細い線で描き、結婚式のロングクロスなど別の用途に使われていたそうです。
ともあれ19世紀末の文化的成熟期においては、より華やかにより手の込んだ図案や刺繍が好まれましたから、
自然と廃れてしまったのかもしれません。
ハンガリーの首都ブダペストでターンツハーズ運動がはじまったのは、1972年。
踊りの本場であるトランシルヴァニアでは少し遅れて、1977年にクルージ・ナポカで起こったとされています。
ちょうど若者たちがフォークロア・ファッションをジーンズ姿に取り入れ、
村の音楽や踊りを愛する層が爆発的に増えていったとき。
そのフォークロアブームが開花した時期に、カロタセグのクリテリオン出版社から
トランシルヴァニアの伝統刺繍の図案集が次々と発行されます。
やがて1980年にシンコー・カタリンさんの「カロタセグの大きいイーラーショシュ」が生まれました。
はじめてこの分厚いアルバムを手にした時の感動といったら・・・。
手描きで活版印刷された味のある一枚一枚を広げていくと、
カロタセグの女性たちの創造性がいかにたくましかったかを知ることができます。
カタリンさんはいくつかのパターンに分けて、分析をされていますが、
中央から四方へ広がっていくもの、横流れのもの、独立したモチーフから発生していくもの、
枝分かれしたもの、袖に使われる図案。バラやチューリップ、ハート、ケシの花、リーフや鳥・・。
モチーフはそれほど多くないのに、図案がダイナミックに展開していくパターンが数知れず、
カロタセグ独特の持ち味である装飾性(華美な味付けともいえます)によって、
過剰なまでの飾りが加えられ、モチーフが複雑に密集していきます。
それは衣装においても、また音楽や舞踊においても同様です。
つまり村の伝統文化はすべてが連動しているから、総合的な文化ということができます。
一つだけ切り離すことなどできません。
住空間の美は、刺繍や織などの手仕事の美につながり、それは衣装の美にも、
やがて舞踊や音楽へも、さまざまな習慣にも、果ては民間信仰の世界にも・・。
カタリンさんはその後も、村で人生を過ごし、村の教会のタペストリーをデザインしたり、
村に小さな展示室を作ったりしましたが、やがて50年を過ぎた昨年に再び、
絶版となったカロタセグの図案集を復刻させて本にしました。
さらに長い時を経て再びイーラーショシュと向き合い、新しい論文を加えました。
現地におけるイーラーショシュの第一人者である、シンコー・カタリンさんから
イーラーショシュの基礎を教えていただける貴重な機会です。
今回は、イーラーショシュの見本帳を作ります。簡単なものからだんだんと難易度をあげていき、
その上達の跡もしっかりと刻まれることでしょう。
これからイーラーショシュをはじめる人にとってはステッチを思い出すための資料ともなりますし、
額装して、タペストリーにしても、バッグに仕上げても素敵です。
特に花びらの部分は、下地方のやり方とは違い、こちらも目から鱗が落ちました。
しっかりと基礎から、イーラーショシュを習いましょう。
そしてカタリンさんが半世紀にわたって携わったイーラーショシュの魅力を教えていただけると思いますので、
どうぞたくさん質問をしてくださいね。
第7回「トランシルヴァニアから伝統刺繍を広めたい!」
〇4/25(土)新講座 カロタセグ、ナーダシュ地方のビーズ細工のボクレータ(お申込者数25名さま)
〇4/26(日) カロタセグ上地方のイーラーショシュ(お申込者数34名さま)
〇5/9(土)新講座 カロタセグ下地方のスモッキングスカート(お申込者数21名さま)
〇5/10(日) 新講座 ジュルジ村のクロスステッチ刺繍(お申込者数17名さま)
お申し込みはこちらから。
https://motion-gallery.net/projects/transylvania-project7
このプロジェクトは集まった資金が目標金額に満たなかった場合、オンラインワークショップの開催は行われず、
リターンの履行も行われない「All or Nothing方式」を採用しています。
どうかワークショップの実現まで、皆さまのご協力をどうぞよろしくお願い致します。
